苦
二話目です
初日から飛ばしていきますよ〜
次の朝。
俺は猛烈な自責の念にかられていた。
「やっべえ……」
わかってはいた。
しかし後の祭り、幾ら悔やんだところで時間が戻る訳は無いのである。
「予習に提出物、いろいろ終わってねぇ…」
もはや絶望しか感じない。
「なんとかすっきゃねぇな……」
諦めを感じながらも学校へ出発した。
今日は自分が指される日であることも、
俺はわかってる。
ったく災難続きだよなー。参ってしまう。
俺の通う高校は県内でも屈指の進学校。そのため進学校に通いつつ空手を続ける俺は異色の存在だ。
「よおっ、泰彦。ノート見してくれよ」
悪びれるでもなく両手をこちらに出して満面の笑みで話しかけてくる奴が一人。
吉野翔。同じクラスの友人だ。
「るせぇ、俺が見せて欲しい位だっての」
「えーそりゃ珍しい」
「だいたいノートくらい自力でなんとかしろって」
「今日に関してはお前も人の事言えねぇよ」
ごもっともである。
「朝から賑やかだねー二人とも」
稲本純一だ。俺達はジュンと読んでいる。
「おージュンじゃん。いやーなんかさ、珍しく泰彦がノート見せてくんなくてよ」
翔は気楽なもんである。
「へーそれは珍しいね。それなら僕のノート見せようか?」
「お願い致しますジュン様!!!」
二人の声が見事にハモる。
周りの視線が痛い。まあ背に腹は変えられないというし仕方ないな……と自分を納得させることとした。
まあどちらにせよ授業が悲惨であったことは変わりなかったのだが。
何しろ集中できやしない。
指される日なのに、頭がそっちにいかない。
昨日の試合が何度も何度も脳内再生されて
止めることができない。
なんであんなに早く先制されてしまったんだ
なんでペースを取り戻せなかったんだ
なんで攻めきれなかったんだ
なんで最後仕留めきれなかったんだ
なんで、が続いて止まらない。英語も数学も古典も何一つ頭に入っていかない。辛い。
まあいい、と結局俺は諦めた。
諦めざるを得なかった。終わったものは仕方ない。だったらさっさと切り替えて次いかにして勝つかを考えよう、とした。
いや、なんどもしようとはしているのだ。
それが簡単にできるなら、苦労しないのだが。翔なら、「次は120%勝つ!」と豪語するだろう。その辺りは、唯一羨ましいところだなと思うことはある。
学校が終われば、家に帰る。待っていたのは、厳しい言葉だった。
「いつまでやるの?」若干、いやかなりの
棘を含んだ声が投げかけられる。その言葉を投げかけてきた主は………
母だ。
「いや、いつまでって言われても……」
「いつまでなのよ」容赦ない。
「だいたい10年以上やってんのにさっぱり
芽が出ないしやっと大会出たとおもったら初戦敗退?大林君は……」
「いや幸太を引き合いに出すなよ…」
「話を遮らないで。とにかくこのままダラダラやってても意味はないわよ。腹括りなさいって言ってるの」
予想のはるか上を行く厳しさだ。ねぎらいの感情が一切感じられない。
その後は適当に受け答えして部屋に戻った。
どうしたいんだろう。どこを目指しているんだろう。
今まで全く考えたこともなかった。
自分のこれからの人生?
幸太はどうするんだろう。翔は?純一は?
自分だけ置いていかれてる気がする。
「とりあえず、先生んとこ行くか……」
もちろん、空手の道場の、だ。
「母さん、ちょっと行ってくる」
部屋で考えていても多分答えは出ないだろう。ならば、少し出歩いてみるのもまた一つのやり方かな、と思いながら、外へ松永は駆け出した。
風が吹き付けてくる。
木の葉が風に揺れてざわざわと音を立てる。
昔から変わらない、この風景。
いつか、いやそう遠くない将来にこの風景にも別れを告げるのだ。
柄にもなく寂寥の念を感じつつ、泰彦は涼しげな風の中を駆け抜けた。
コメントバシバシお願いします




