舞台
格闘大会、開幕です。
もちろん架空のものです。
いつも通りの一日。
学校が終わった後に三人でトレーニングしてジムに行って、終わった後に取り止めもなく話す。
そんな中、純一が波紋を投げかけた。
「そういえば、二人は出場するの?」
え、何のことだ?さっぱりわからない。
翔も同じことを考えていたらしい。
「え?何のこと?」
「いや……だから校内格闘大会のこと」
え?なんだそれ?聞いたことないぞ。
「そんなもん去年あったっけ………?」
あったら自分が出ていない筈がないのだけれど……。
「よくわからないけど、今年から開催されるらしいよ。出場資格は校内生であること、
これだけ。
ルールはボクシングみたいな感じに捉えておけばいいと思う。
勿論蹴り技もありみたいだよ。
ただ、時間が二分×三ラウンドだからかなり長い」
「うーんあんまし俺はスタミナがないからなぁー厳しいなぁー」
翔がぼやく。
「まあ、さっさと倒して決着つけちまえばいいし。そんなに気にしなくていんじゃねーのか?」
翔の表情が余りに悲壮感漂うものだったのでつい助け舟をだしてしまった。
「対戦するのは同学年だけ、らしいよ」
なるほど。じゃあ一年や三年と対戦することはない、と。
「えーそれ準決勝以上は俺ら三人の潰し合いになるんじゃねーの?」
と翔が言い放つ。強気な発言だが、まあ結構的を射た言葉だと思う。
「まあ…客観的にみればそうだよね」
純一も同意する。
「っていうか何人位エントリーすんだ?」
俺が気になるのはそこだ。
「制限はなかったと思う」
純一が答えてくれた。
「ん………ってぇと読めないなぁ」
困ったように翔が言う。
「ま、そんときになりゃわかるだろ!
んじゃあな!また明日!」
と言って俺は駆け出す。
「おう」
「また明日」
と二人が言うのが背後から聞こえた。
一週間後。朝のホームルーム。
「えーと。じゃ最後の連絡だな。校内格闘大会のエントリー締め切りが一昨日までだったな。トーナメント表が出たから確認しておくように。以上。」
担任の言葉にいちはやく反応したのは翔だった。
ホームルームが終わるや否や三人でトーナメント表を確認する。
「え……」
「まじかよ」
「多くね………?」
三人は言葉を失った。
出場者はなんと80人。運動部の奴らやケンカ自慢が軒並み出てきた計算だ。
「こら予想外の多さだな……」
「ええと。僕がシードで始まりで、翔と泰彦はぶら下がりの試合からスタートか。
そんでもって俺たちは準決勝まで顔を合わせることがない、と。あー僕たちが勝ち進むと準決勝で泰彦対翔か。決勝でしか僕は対戦できないんだね」
純一が確認する。
「こりゃこないだ俺が言ったことがホントになっちったなぁーはっはっは」
翔が笑い飛ばす。
「んじゃ、準決勝と決勝で会おう!」
「おう!」
「決勝で待ってるからね」
俺の声に二人が呼応した。
そして、校内格闘大会が開幕した。
俺と翔は七回、純一は六回勝てば優勝。
まずはトーナメントのぶら下がりの試合だ。
大会の最初を飾る試合が俺の試合だ。
「始め!」
俺はいつものように重心を落とし左のガードを高くして動き出す。
最初が肝心だ。なにしろ相手は未知数。
それに格闘技はうまい方が勝つとは限らない。パンチさえまともに打てない奴が上級者に勝つことだって十分にあり得るのだから。
こちらからは手を出さずに様子をみる。
相手はジャブ無しでいきなり右ストレートを振るってきた。
とはいえ所詮は初心者。
右ストレートのつもりだったかもしれないが
パンチにキレがなくしかも遅い。
おまけに予備動作がデカイから隙だらけと
きたもんだ。
余裕だな。
バックステップで相手のパンチを外す。
相手は空振りして苛立ったか、今度はいきなりの右フックを振り回してきた。
もらったな。
まるで野球の投手のように腕をバックスイングしてガラ空きになった相手のレバーに左ジャブを突き刺し、懐に飛び込み、右ストレートを放とうとする。
その時だった。
右ストレートを突き刺そうとする前に相手が倒れた。
え………。
試合はストップ。
大会の開幕戦、泰彦の一試合目は
左ジャブによるまさかのワンパンチ決着。
会場にどよめきが起こる。
まずは、一回戦突破だ。
っておいおい、少し打たれ弱すぎないか…?
会場の興奮が冷めやらぬうちに次の試合、その次の試合……と進み翔の試合になった。
ここまでの試合は泰彦の試合を除いて全て判定までもつれ込む接戦。
接戦といえば聞こえはいいがその実レベルが低すぎて決定打がなかっただけの話だ。
その証拠に判定のスコアもお互いに低い点数で争っている。
ついに翔の試合が始まった。
翔の相手はまるで走るかのような高速ステップワークを使って翔の周りをサークリングする。
試合が長引けば翔にとって不利になるな……
泰彦がそう思った刹那。
どごぉぉん
鈍い音が会場に響いた。
翔が僅か数秒で高速フットワークを捕まえて
泰彦と同様ワンパン決着。
しかしこちらのパンチは完全に倒すことを
狙って打ったであろうパンチだ。
またも会場にどよめきが起こる。
翔の相手は完全にノックアウトされた。
あんなレベル高い奴がいるなんて聞いてないでェ
そんな声が会場のどこからか聞こえた。
まずいな。翔の奴、元々のパワーに加えて
ここんところのトレーニングにより大幅に
力が増している。純一の急成長に気を取られつつもわかっていたつもりだったが、俺は
改めて翔の危険さを確かめた。
というか今のパンチからは手加減ないしその類のものが一切感じられなかった。
こいつと準決勝で対決するのか。
恐怖心とそれを上回る興奮で泰彦は無意識の内に微笑みを浮かべていた。
ぶら下がりの試合が終わり、選手が80人から
64人に絞られた。
戦いは始まったばかりだった。
戦慄的なパンチで相手を沈めてしまった翔。
いやー作者もビックリな強さ。
次回、純一の登場です。
さあ彼はどんな戦いを見せるのか……?




