鐘(ゴング)
一筋縄ではいかない深いストーリーを
練れるよう日々勉強ですっ
それでは参りますよ〜
「やあ、きたか。随分時間がかかったじゃないか。まあまあそう怖い顔をしないで。
少し平和的に話でもしようじゃないか」
あのイラつくバス。
泰彦の読みは的中し、なんとかジュンの居場所らしいところに辿り着けた。
本当の勝負はここからだ。
まだあちらに敵対心のようなものは見られない。もっともそのうちそういうことにはなるんだろうが。
どちらにせよ今はまだ様子見といったところだろうか。
不自然に寒い。
真っ黒いカーテンが引かれた部屋の中。
いるのはイラつくバス野郎と泰彦と翔だけ。
まあ他の連中がどこに潜んでいるかなどは
わかったもんじゃない。油断はできない。
太陽の光さえも届かない部屋の中。
まるで冥界にでも迷い込んでしまったかのような心持ちだった。
いや、違うか。
迷い込んだんじゃない。ジュンを助けるために自ら飛び込んできたんだ。後悔は何一つない。
お茶を出された。飲むとでも思ったか。
さすがに何が入っているかもわからない飲み物に手を付けるほど愚かであるつもりは無い。飲むふりをして、しかし一滴も口には入れずにまた置く。儀礼的にはこんなものでいいか。
はやくしろ。はやくジュンを出せ。
「さてさてさて……本題に入ろうじゃないか。お待ちかねのようだしね」
「はい」
表情には極力出さないようにする。
ポーカーフェイスを心がける。
「お察しの通り稲本純一君はこちらが身柄を預かっている。返して欲しいのだろうね。
そうでもなければこんな陰気臭いところになんて誰が好んでくるだろうか?」
面白がるような口調。
向こうに今はリードさせてやる。
ここで焦って水の泡になったら目も当てられない。
一本の細い糸。それをたぐってなんとかここまで来た。あと少しだけなんだ。あと少しでその細い糸はジュンのところに繋がっているに違いないんだ。
「わかっているだろうがタダで返すつもりは毛頭ないんだよ、こちらとしては、ね」
まあそうだろうよ。わかっとるわそりゃ。
「はい」
とだけ答える。
「何を要求されると思う?」
「わかりません」
こんな享楽的な性格な相手だ。
金で無いことくらいは察しがつくが、それ以上は推測できない。
厄介な相手だな。
いつトリッキーな攻撃をしかけてくるか全く読めない。
「私はね……退屈しているのだよ」
知るかそんなもん。暇潰しくらいてめぇでなんとかしてろ。
「ここで一つ、ゲームをしないかい?」
「どんなゲームか、によります」
「なんだい、私が不正をするとでも?」
「いえ、ゲームの内容によっては運が大きく作用するものがあるので。正直、運否天賦の勝負ならしたくないです」
「あーっはっはっはっ!クハハハハ!なんて愉快なんだ!実に面白い。実に面白い。こちらが思っていたより賢いようだね」
「お褒めに預かりどうも」
儀礼的に返事をする。
「何、難しいことなんか何もないんだ」
ならば腕っぷし勝負ということか。
「さあ出でよ、控えし我のナイト達よ!!」
ナイト?騎士団とはこらまたご大層な。
出てきたのはいかつい若い男数名。
「さあ我を守りしこの騎士達を破り、そして
我自身も打ち倒すことができるかな……?」
「もうちょいマシなゲームはないのか」
つい言葉になってしまう。どうせやるのは決まっているのだが。
「退屈だと言ったろう」
そーいやそんなことも行っていたな。
「退屈しのぎには身体を動かすのが一番。
簡単な話だろう?シンプルかつ美しいルール。どちらかがどちらかを打ち倒すことよってのみ決着はつく。投了は認めないよ」
なるほど……と思う。多分、いけるだろう。
「それで……?やるのかい……………?」
「その勝負、慎んで受けて立つ」
「喜ばしい限りだ」
「んじゃ、いくぞ、翔」
「まかしとけって、泰彦」
カーン。どこから持ってきたのかゴングの音が嫌に寒いこの部屋に響き渡った。
翔は指の関節を鳴らして己を鼓舞する。
泰彦は腰を落として右手の拳で顎、肘で脇腹をガードし、左手は高く上げて隙を無くす。
いつものファイティングポーズだ。
対するナイト達も素手。武器を隠し持っているふうもない。それは最後方で待ち受ける
バス野郎にも同じことが言えた。
本当にゲームがしたいらしい。
こんな高校生二人、鉄パイプでさっさと殴り倒してしまえばいいものを。
本当によくわからない人だ。
まあ、いいか。勝ち目をわざわざくれたのだ。ありがたく頂戴するとしよう。
ゆっくりと互いに動き出した。
さあ危険な展開に入ってきましたよ〜
泰彦と翔はジュンを救い出すことができるのか?相手は何がしたいのか?
お楽しみ頂けたら嬉しいです。




