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コープの町到着と冒険者ギルド

「ここがコープの町だ。」


昼ごろになって、一行はコープの町に着いた。俺の世界の町と比べるとかなり小さいが、こっちの世界ではこれでも大きい方らしい。


コープの町は周りを山に囲まれた平野部に位置している。よって山の交易の要所となっているが、よく山の魔物による被害が発生する。だからこの町には冒険者も多く、冒険者ギルドも他より大きいようだ。


「俺たちはこれから冒険者ギルドに報告に行くが、嬢ちゃんはどうする?」


商人と分かれてからガイさんーー何度言っても名前で呼んでくれないーーが聞いてくる。


「私も用事があるので行きます。」


「おっ、依頼か?それならいい奴を紹介しようか?」


そう言うガイさん。だがちがう。


「いいえ。私も冒険者になろうと思います。登録は誰でもできるのでしょう?」


なにせ俺は身分を証明できるものがない。旅をするにはギルドの一員の方が都合がいいだろう。俺がそう言うと前を歩いていたガイさんが驚いた顔で振り返ってくる。


「嬢ちゃんが?無茶だ。危険な仕事が多いんだ。銃なんか全然役にたたないぞ。昨日のようなことも起きないわけじゃない。」


「心配いりません。自分の身ぐらいは守れます。それにそろそろお金がなくなってきましたし。」


ガイさんに聞いた話だが、この世界のお金の単位は、銅貨が100枚で銀貨1枚、銀貨100枚で金貨1枚という計算らしい。とても分かりやすいな。肝心の物価は大人1人宿に泊まるのに銅貨20枚ぐらい必要らしい。定食を食べようとすれば銅貨5枚ぐらいは要るそうだ。まだ食糧は持ってるし、夜は野宿すればーー出来れば避けたいーーいいからまだ大丈夫そうだが、一週間もすればお金がなくなってしまうだろう。


「だが「大丈夫です。いいから早く案内してください。」……これはあいつに任せるか…。」


なんとかガイさんを説き伏せて冒険者ギルドに着く。建物は他とはあまり違いはないが、武器をもった人たちが出入りしている。3階だてのようだ。その建物に俺を先頭に3人ーー俺、ガイさん、新人さんーーが入る。中は右に掲示板が置いてあって、数人の冒険者が依頼をみているようだ。左には2階に上がるための階段、奥には受付が2つあるようだ。俺はそのうちの片方に近づく。


「あのー、いいですか?」


書類に目を通していた受付の女性は俺に気づくとーー普通に立ったら頭しか机の上に出ないーー、声をかけてくる。


「こんにちは、こっちは冒険者のための受付よ。依頼するならあっちのお姉さんに言ってね。」


ともう片方の受付を指差す。受付を分けているのか。だが俺はこっちだからな。


「いえ、私は冒険者になりに来たんです。どうしたら登録できますか?」


それを聞いて目を丸くする受付の女性。そこにガイさんが彼女に声をかける。


「悪いな、ゴードン呼んでくれるか。俺の話を聞かなくてな。」


「ガイさんじゃないですか。久しぶりですね。…そうですか、分かりました。」


と受付さんは後ろの同僚に支持をする。同僚は奥に入っていった。受付さんは振り返って俺に言う。


「ごめんなさい。冒険者は基本だれでもなれるけど、あなたみたいな女の子はまだ早いわ。もっと大きくなってからにしなさい。」


むむっ!この人も反対か。別に進んで危険なことをしようという訳でもないのに。…それに俺は男だ。


「危険なことをするつもりはありませんよ。ただ簡単な依頼で資金を稼ぎたいだけです。無茶をするつもりはありません。」


「だがな嬢ちゃん、冒険者はいつ死ぬかわからないんだ。最近は魔国も何か動きがあるみたいだし、そのせいか魔物も活発化している。危険な場所も増えているんだ。」


そう言われても、後から先生たちが来ることを考えると、できるだけ情報を集めておきたい。ただでさえこんな体になってしまったのだ。ギルドの後ろ盾がないと、子供だと舐められてしまう。


ってか魔国ってなんだ?それは今は保留だ。このままでは許可してもらえそうにない。俺は焦り始める。


「ですが『ゴン』ふぎゃ!」


いきなり頭に硬いものが落ちてきた。頭をおさえて蹲ってしまう。涙目で見上げると俺の後ろに、右手に握りこぶしをつくったガイさんと同年代の頭に髪のない男性が仁王立ちしていた。


抗議しようと口を開く前に怒鳴りつけられた。


「お前か!ガキのくせに冒険者になろうとするお調子者は!冒険者は命張ってんだ!ガキが遊び半分にやるもんじゃねえ‼︎お前みたいなガキがやるにゃあ10年早ぇ!」


そしてあまりの大声にフリーズしている俺の首根っこを掴んで玄関から「出直してきやがれ‼︎」の言葉と共に放り出された。


後ろでドアが乱暴に閉じられる。フリーズしたままの俺の隣にいた苦笑顔のガイさんーーこうなることを知っていたのだろう、俺が怒鳴られている間に外に出ていたーーが、教えてくれる。


「あいつはこのコープ支部長でな。ゴードンていうんだが、あいつの仕事のうちにな、嬢ちゃんみたいな子供をギルドから追い出すのがあるんだよ。別にただつまみ出せばいいんだが、あいつが“厳しく叱っとかなきゃ諦めよらん!”とか言うんでこうやってんだ。ゴードンはいいやつだから、嫌いにならないでやってくれ。」


俺はほとんど聞いていなかった。あんなに怒鳴られたられたことは生まれて初めてだ。いろんな怒られかたをしたが、これは精神的というよりショックがひどい。あ、やば、涙が……。


「ひぐっ!うぐっ!う、ううう…‼︎」


ちょ!なんか涙が止まんない!これじゃあ外見そのままの行動じゃないか!でも、でも……!


「ゔぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん‼︎ごわがっっだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」


結局、俺はその場で泣きに泣き、最後には泣き疲れて寝てしまった。しかしながらその出来事は、思い出すのも恥ずかしくて死にそうになる、黒歴史になってしまった。




ちなみに、こうやってつまみ出された子供が泣き疲れて寝てしまうのも毎度のことらしいので、俺はギルドの3階の小部屋のベッドに寝かされていた。そして翌朝、改めてつまみ出された。

あまり重要ではありませんが、一応冒険者ギルドコープ支部の内装を説明すると、1階が掲示板や受付、その他のギルドスタッフの仕事場があって、2階が冒険者たちの集会所、少ないが食べ物をたのめる。最後の3階は冒険者(冒険者以外も可)たちに格安で寝床を提供する階である。本当に寝床しかないので、よほど金に困っていなければ宿をつかう。

冒険者ギルドは冒険者以外でも自由に出入りできる。

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