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ひと時の宿

俺の目の前は、真っ赤だった。


炎が燃えているわけではない。生き物の血だとわかるのにどれだけかかっただろうか。夥しい量の血がそこにはあった。


「っっ⁉︎」


動悸が激しくなる。息が苦しい。突然の出来事だったので、心の準備が出来ていなかった。昼のゴブリンの血は大丈夫だったのに。あのときのことが俺の脳裏に甦る。視界が赤く、紅くなって……。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



俺は目を覚ました。どうやら、もどすことはなかったようだが気を失なってしまったらしい。すでに夜の帳が下りていた。


俺はあらためて周りを見回した。今度は大丈夫だ。状況を確認できる。


暗くて分かりづらいーー幸か不幸かーーが、たくさんの死体が地面を転がっているようだ。山道の脇に馬車が止まっていて、その近くに人間の死体が4、ゴブリンの死体が20を下らない数が散乱している。


人間の死体は2人が商人、残りの2人がその護衛のようだ。2人とも手に武器を持っている。生き残りはいないようだった。ゴブリン側も生者はいない。まさか相討ちというわけでもないだろう。


ここで俺は昼間のゴブリンたちを思い出した。あいつらはこのゴブリンたちの残党

だろう。もしかしたら俺がこのゴブリンたちと戦っていたのではないかと思うとぞっとする。


しかし昼間のゴブリンたちはそれほど荷物が多いというわけではなかった。普通は戦利品でいっぱいのはずだろう。


馬車を確認ーー暗かったので馬車にあった蝋燭にライターで火を灯したーーしてみる。……なるほど、馬車には多くの日用品はあったが食べ物は無かった。馬車の持ち主の食べ物すらないところをみるに、ゴブリンたちは食べ物の匂いのする馬車を襲ったはいいが味方は壊滅、戦いには勝ったが食べ物は思ったより少なかった、というところだろう。…ゴブリンって人間に似てたしそれほど鼻はよくないのかもしれないな。鼻が良ければ匂いで食べ物の量も分かっただろうし。


とにかく、この馬車なら夜を過ごすには申し分ない。中はかなり荒らされているが、それだけだ。元の持ち主には悪いが、ここで次にこの道を人が通るまで休ませてもらおう。死体は気になるが我慢するしかない。…今は夏だが大丈夫だろうか。


こうして、俺は見つけた馬車を仮の宿とすることにした。




さらに馬車を調べてみると、いくつか興味深いものを見つけた。


「これは、水?説明書は……、あったあった。…げ、読めないぞ、これ…。」


臭いからして薬品だろうか。試しに飲んでみるわけにはいかないしな。それと大事なのはこの世界の文字を読めないということだ。言葉は通じるからーーゴブリンだけが日本語を使っているわけではないだろうーー文字も覚えられないわけではないだろうが、面倒臭そうだなぁ。まあ今は文字のことはいいだろう。


最後は石だ。表面になにかの紋様らしきものがある。実は馬車の護衛もこれと同じものを持っていた。いったい何に使うのだろうか。でも紋様とかって魔法っぽくない?もしかしたらこの世界には魔法があるのかもしれないな。


もう夜もおそいので寝ることとしよう。疑問は今はどうすることもできない。馬車に置いてあった毛布を使わせてもらうことにしてくるまる。


俺が次にこの道を通る人間に会ったのは、その次の日の昼下がりだった。

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