ファーストコンタクト、そして初戦闘
「グギャッ!?」
あんな生物は地球にはいない。つまり、俺は今異世界にいるという証拠だ。やったな先生。だが俺は喜んではいられない。異世界の生物とのファーストコンタクトなのだ。まず友好関係を結べるか確認しないといけない。
どう話しかけようか考えている俺の前でゴブリンーーー今は仮にそう呼んでおくーーーたちもひそひそと何か相談していたようだ。するとすぐにその中のうちの1人が前に出てきた。どうやらこいつがリーダーのようだーーー他のゴブリンより装飾が多いからーーー。こいつに話しかけてみようか。
「えっと、はじめま「ギッ、ソノセナカニアルクイモノヲオイテイケ!」……。」
……話は出来るようだ。しかも日本語だったぞ。かなり聞こえにくい声だが。しかしさっきの発言からすると会話は成立しないだろうな。
「ソノセナカノ イイニオイノ スルモノヲ オイテイケバ イノチダケハ タスケテヤル。」
そんなこと了承できるわけない。ゴブリンはみんなこうなのか、こいつらだけなのかは分からないが、ここは断らせてもらおう。
「断る!」
「ギギッ!ジャアシネ!」
とリーダーゴブリンがいうと同時に、リーダーゴブリンとはちがうやつが、棍棒を振りかぶってきた。
「っと!?」
それを後ろに下がってよける。前に出てきたやつは2体か。どうやらしゃべっていたリーダー格のゴブリンを含めた3体は下がって様子を見るらしい。
そこで俺はリーダー以外の下がっているゴブリンがけがをしていることに気づいた。どうやら俺と出会う前にこいつらは、どこかで戦闘をしたらしい。戦えるのはリーダーを入れた3体か。普通なら慣れない体になって1対3の今の状況はまずいだろう。しかし俺には頼もしい武器がある。
俺は腰のベルトーーー体が小さくなったから締め直したーーーについているサバイバルナイフーーーいろいろ使えるから持ってきたーーーではなく、
ーーーーーーーーーグロック26を掴んだ。
つまり、拳銃、ハンドガンだ。これさえあればゴブリンぐらい、この身体でもなんとかなるだろう。
どうして拳銃なんか持っているかって?大丈夫、ちゃんと合法だ。とてつもなくグレーだけどな。先生と俺はアメリカで免許もちゃんと取ってる。問題は日本だな。日本では、先生のスポンサーのとある会社が軍事関係にも手を出していてな。書類上は先生の研究所も火器類の保管施設のひとつということになっている。
そしてここは異世界だ。日本の法律なんて関係ない。これを話しているときの先生、悪い笑顔だったな。
つまりノープログレム!そこのゴブリン!死にさらせーー!
と調子にのっていたのが悪かった。前に出ていた2体のゴブリンのうち、剣を持っていた方に向けた銃口は身体が小さいのもあって反動を抑えきれず、明後日の方向に銃弾を飛ばした。落とすことはなかったが大きな隙がうまれてしまった。
『ダン!』
最初は大きな銃声に驚いたゴブリンたちだったが、すぐに棍棒持ちが距離を詰めてくる。慌てた俺は、すぐ目の前で棍棒を振りかぶっているゴブリンのお腹に銃口を向けて引き金を引いた。
『ダン!』 「ガッ!?」
近かったこともあって、ゴブリンは棍棒を落として1メートルは吹っ飛んだ。もう立ち上がれないだろう。すぐには死なないだろうが、赤い血だまりがうまれているーーゴブリンの血って赤いんだなーーそのうち出血多量で死ぬだろう。
血のことを考えないようにしながら、仲間が倒れて戸惑っている剣持ちゴブリンに狙いを定める、相手がこちらに気づく前に、撃った。
『ダン』 「ーーー!?」
見事ヘッドショットを決めた。剣持ちゴブリンは悲鳴もあげられずに即死した。3メートルの距離で反動の少ないグロック26で撃ったからな。練習したら、出来ないこともない。
「ギギッ!?ニゲルゾ‼︎」
あっという間に味方が2人やられたことに不利を悟ったのだろう。リーダーゴブリンが残りの2体を連れて、俺からみて右手に向かって逃げて行った。おれも深追いするつもりもないし、そのまま見逃してやる。
こうして、俺の異世界でのファーストコンタクトは、初戦闘・初勝利という結果で幕を閉じた。