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前世について


 異能に悩む者にしか気付くことができない。

 そんな、異能専門の相談所があるという――。





                    *


 さて。

 前世というものを、信じているだろうか。

 自分という存在に生まれる前の僕。僕に生まれ変わる前の自分。


 そんなものがあるとして、占い師にあなたの前世は落ち武者ですと言われても、落ち武者の記憶が蘇るわけでもないし、本当にそうだったのか確認のしようもない。

 それでも前世というものにはロマンがあるのだろう。

 ユンスランタという名前に心当たりのある方は連絡をください、なんて投稿が今でもあるとかないとか。それを見て連絡する人は、本当に心当たりがあるんだろうか? 登校した人も本当に自分の前世の名前がわかっているんだろうか? こういう妄想を思いついたので乗っかってくれる人はいませんか? というのが本当の意図で、反応があったらあったで、うわぁどうしよう返事が来ちゃったもう後には引けない――なんてことになっているんじゃないだろうか。もちろん、中には本物もいるのかもしれないけれど。

 ちなみにさっきのユンスランタというのは、僕の前世の名前だ。


 それから、前世の力が現世の自分に備わる、なんてことを妄想している人もいるが、では前世が落ち武者の人は槍やら刀を振るう筋力が急に付いたり、追っ手から逃げたり隠れたりするスキルや、髪が禿げ上がってぼさぼさになる特性が身につくというのだろうか。そんなはずはないし、禿げたくないし髪がぼさぼさにはなりたくない。

 誤解の無いように言っておくが、僕の前世は落ち武者ではない。

 ついでに、さっき言ったユンスランタは、前世ではない。

 前々々々々々々々々……々々世の名前だ。

 何代前かわからない、気が遠くなるような昔、紀元前、現代では把握できてない文明人。


 あんまり引っ張ってもしょうがないから、そろそろはっきり言ってしまおう。

 そう、僕は前々々々々々々々々……々々世のことを知っている。

 長いし、自分でも何回『前』と言っているかわからないから前世としてしまうが、前世であるユンスランタのことを知っている。

 だけど知っているというだけで、前世の記憶が蘇ったわけでも、前世が身につけた特異な力に振り回されているわけでも、僕が考えたミステリアスでカッコイイ設定というわけでもない。


 じゃあなんでわかるのかというと、そいつ……ユンスランタに声をかけられたからだ。


 スマートフォンに入れられたアプリ、ビフォーライフトーク。BLT。

 僕専用のアプリで、数ある(と思われる)前世の中でユンスランタとだけチャットができる。


 なんでそんな限定的なんだって?

 それは、彼、ユンスランタ自身が僕のスマートフォンに過去から干渉し、特殊能力でそんなアプリを生み出したからだ。


 なんだそりゃ。と、思うかもしれない。僕は思った。

 でもどうやら本当で、彼はいわゆる人智を越えた特殊能力を持っていて、なんでもできる超能力者、異能者、いや――万能能力者。それが僕の前世、ユンスランタだった。


 お前が神か。と、その説明をされた時は思ったものだ。

 しかしそんな神様みたいな力は、僕には一切引き継がれなかった。

 そりゃそうだ、前世と言ってもご先祖様ではない。血も繋がっていないらしいし。


 じゃあなんの問題もないじゃないか、と思うかもしれない。その考えは甘い。

 万能能力者ユンスランタと会話が可能となった僕は、もう普通の生活を送ることはできなかった。

 何故なら、特殊能力、異能者は本当にいるのだと、知ってしまったから。


 そしてなんの因果か……。

 僕、白鷹(しろたか)夢路(ゆめじ)は、若い身空で冬木(ふゆき)異能相談所の二代目所長に就任することが決まった。

 しばらくの間は、所長代理ということになるけれど。

 ……まだ一四歳なんだけどなぁ。

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