1話その6
その後は僕が木々の調整作業、ようは間伐だとか病気の木を調べたりという作業をして、カスミの方はおしゃべりな御婦人達と一緒に畑仕事に励んだ。
この日は普通であれば深夜だということもあり、時差ボケな僕らは
区切りの良いところで作業を終えてセイブのところへと戻ると、苦手
だとう言っていたのに彼は待ってくれていた。
その様子からは僕らが戸を開けた音でさっきまで閉じていた瞼を開
けたようだったが、気にすることではないだろう。
僕がまず村の運営状況や、畑の内容、村人の性格など観察してきた
情報を簡潔に伝えたが、眠気に敵わず途中から説明が支離滅裂になっ
てしまっていたので、とりあえず今日はこれで終わりということにな
った。
「それでこの村の男の人はみんな静かな人が多くて…」
眠たさが全開な僕をよそにカスミは村の生活が刺激的だったら
しく、セイブ相手に口が開きっぱなしだ。
――おばちゃんたちの口がうつったか…?
普段なら力ずくで押しとめていたところだったが、とにかく寝む
たかったのと、父親にその日のことを報告する子供のように出来事
を話していたので、テンポを崩さないよう適当なところで相槌を打
って話を聞いていた。
――こんな話をわざわざ聞いてくれるなんてセイブさんはホントに
いい人だ…。
そして、僕はそんな楽しげな彼女と、それを微笑みながらゆっくりと聞くセイブの顔を見ながら眠りについた……。
こんな感じで僕はこの少し変わった村で、手伝いの名のもとにた
くさんの人たちとふれあっていった。
調査の方も生活に慣れてきたおかげで、時間を調整して色々なこ
とを見たり聞いたりしていた。
――そう順調な生活が続いたある日のことだった。
その日は数日ぶりに最初の夫婦のもとで食事を取ることになった。
ここのご婦人が一番感じが良かったので、キッチンで一緒に手伝い
をしているカスミも心なしか普段以上に楽しそうだった。
「今日はあんた達がうちに来る日だってことでね。
とっておきだからお腹の方覚悟しておいてよ?」
言葉の調子だけでキッチンの向こうで相当ニヤニヤしてることは
簡単に想像がつく、そして相変わらず旦那さんの方は新聞を広げて
静かに食事が並ぶのを待っていた。
出来上がったらしい。香辛料の香りがこちらの方になだれ込んで
きている。
「貴重なんだから、あんまりがっつかないでよ?だって」
カスミが大げさに奥さんのマネをしながら大皿をテーブルに乗せる。前には小刻みに刻んであった肉のステーキのようだ。きっとこ
こでは最大級のもてなしなのだろう。
「なんだか、こんないいものを頂いてしまって申し訳ないです」
「いいのいいの、実際2人にはすごく助かってるってのは、こんな
いいのを買ってこれた主人をみれば分かるんだから」
そういいながらいたずらな顔を旦那さんに向ける。当の方人は余
計なことを言うなと言うように黙々と食事を続けていた。
「それにこの村に来客なんて滅多に来ないからねぇ」
ここまで変わった生活をしているのを見ればそれは納得の事実であった。外部との連絡は基本その係の人間が行っているそうだし、
偶然ここを通りかかっても普通はゴーストタウンだと思って通り過
ぎてしまうのは容易に想像できた。
「じゃあ私達の前はどんな人が来たの?」
「うん?ああそれは多分…寸年前に移り住んできた丘の家の主だろ
うねぇ」
奥さんは少し面倒くさそうに答えた。
――丘の…ってセイブさんのことか?なんでわざわざ変な言い方し
たんだ?
「それってセイブさんのこと?」
「あんたらあの人会ったんかい!?よくしゃべれたねぇ…」
「え、それってどういうことですか?」
そういえば、この村でのあの人の立場が少し気になった。奥さん
はどうしようかと迷っている様子だったが、話すことにしたようだ。
「いやー、だってあの人こっちに来てからまともに喋ってないか
らねぇ…。普段は家に篭りっぱなしだし、こっちが出向いても
最低限の会話しかしてくれないしねぇ…」
――どういうことだろう?いくら夜が苦手だといっても、この村を
調査しているなら、わざわざこの村の人間を拒絶する必要はないは
ずだ…。
「え、でもセイブさんはこの村の研究をしてるって言ってたよ?」
「研究?あの人がかい?」
「う、うん」
「そりゃおかしいねぇ。だってあの人は"元軍人"だよ?」
前回公開をすっぽかしてしまって反省している次第ですorz
今後もスロー更新ですが気長にお願いいたします。