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私と彼の恋物語  作者: byとろ
一章:ヴァン・エイジトール
8/19

狂獣

どうも。


いや~、この作品はどこに向かおうとしているんでしょうか?


そんな感じの7話目です。

「うがあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


一匹の獣が吼える。


憤怒と憎悪、そして悲しみに縁取られた、悲劇の咆哮。


どうして・・・


「がああああああああぁぁぁぁぁ!!!」


獣がまた吼え、その腕を振るう。


ただそれだけで、地形が変わる。


2時間前までは、切り立った山だったはずのそこは、もはや原形をとどめていなかった。


どうして・・・


「うあああああああああああぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!!!」


荒れ狂う獣が、吼えるたび、その腕を振るうたびに、周りは地獄と化していく。


私は、ただ呆然とそれを見ているだけ。


どうして・・・こんなことになった・・・?


「シャルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッッッ!!!」


何も無くなったそこには、悲痛な叫びだけがこだまする。


ただ、一匹の獣が―――


ただ、憐れな狂戦士が―――


泣き叫んでいた。



―――――――――――――――――――――――



「『ブローカー』の居場所が分かったわ」


そう、生徒会長に言われ、連れられてきた俺たち(もちろん俺とシャルだ)の前にはこの学園の周囲が記されている地図が広げられていた。


「奴等の隠れ家は・・・ここよ」


会長が指差したそこは、危険区域に指定されている山だった。


「ここは確か・・・5年前に特殊な毒性を持つガスが出てきた鉱山ですね」


「そう。少し荒れているだろうけど、隠れ家としては最適の場所よ」


「んで?どうすんだ?」


「2日後、ここを叩くわ」


「な!?正気ですか会長?」


「ええ。・・・大丈夫かしら?」


俺に確認を求めてきたってことは・・・


「俺が全部やんのか?」


「流石にそんな事はしないけれど、あなたが主軸になるのは間違いないわ」


「ちっ、めんどくせーな」


「で、どうなの?いけそう?」


「ああ、かまわねぇ」


「そう、ありがと」


「ハッ・・・いい迷惑だ」


「ヴァン君!」


う・・・しまった。シャルはこういうのに敏感だからな。


「いいのよ、シャルルちゃん。事実だもの」


「・・・作戦内容は?」


あわてて、会話をずらす。


「ええ、作戦内容は―――」






ボーンボーン


生徒会室に備えられてある古時計が6時を知らせていた。


「あら?もうこんな時間ね。今日はこれまでにしましょう」


その言葉で解散となる。


「ああ・・・エイジトール君?」


「んあ?なんだ?」


「少し話があるわ」


「ん・・・分かった」


「シャルルちゃんは悪いけど外で待っててくれる?」


「え・・・?はい・・・」


「悪いわね」


「いえ・・・」


そういい、シャルは出て行った。


「なんだ?」


「あなたたちのことよ」


「おれたちの・・・?」


「ええ。端的にいえば、今のあなたたちの状態は、はっきり言って危険よ」


「なに・・・?」


「あなたシャルルちゃんがいなくなったらどうする?」


「なにいってやがる・・・!」


「あつくならないで。大事なことよ」


「・・・くっ」


「いなくなるなんて事考えたことも無いんじゃない?」


「あたりめーだ」


「それが悪いとはいわないわ。むしろ信頼していていいと思うわ」


「なんなんだよ・・・」 


「だけど、問題はそこなのよ」


「いいといったり、だめといったり、なんなんだてめぇ?」


「そうね。矛盾しているわね。でも、危険かもしれない」


「・・・・・・」


「無いとは思うわ。でも、一応忠告しておくわ」


―――依存するのは止めなさい。


「・・・っ!!」


「私の言いたいことはそれだけよ。もういいわ」







生徒会室からの帰り道。


頭を埋め尽くしているのは、会長のあの言葉。


『―――依存するのは止めなさい』


「・・・んだよ」


「?なにかいいった、ヴァン君?」


「いや・・・なんでもねぇ」


そうだ、なんでもない。


「・・・?」


「大丈夫だ。すこしつかれただけ」


「でも、会議中寝てたよね?」


「うぐ・・・っ」


「まったく、もう」


「ははは・・・」


いいじゃないか。


こんな平和をずっと望んでたんだ。


それに依存するなってのは無理だ。


それに、シャルは守ってみせる。


そのために力を付けたんだ。


守りたいものを守るために、俺は力を付けたんだ。


絶対に守ってみせる。


絶対に―――



―――――――――――――――――――――――



「うああああああああああああああぁぁぁぁぁぁ・・・・・・」


間違っていたのはここからだったのだろうか?


いや、もっとずっと前から―――


おれは、弱かったんだ。


大切な物なんて守れない。


憐れな狂った戦士。


俺はただ、叫んでいた。

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