動き出す影。
さて、そろそろいろいろと動き出します。
私もやります。やってみせます。
そんな感じの6話目です。
俺は生徒会長に言われたとおり、7時に生徒会室にきていた。
正確にはつれてこられた、だが。
「失礼しまーす」
ノックもせずに入る俺にシャルは何か言いたげだったが、諦めたようにため息をついた。
「失礼します」
俺に続いてシャルも生徒会室に入った。もちろんノックをしていた。俺が入った後なのだから必要もないと思うのだが。
「おはよう。ちゃんと来たわね」
「ええ、バッチリ起こしましたよ」
「やっぱり、シャルルちゃんを入れたのは正解だったわ」
しみじみとこぼす生徒会長。
「ちゃっちゃと用件をいってくれよ。こっちは寝みーんだ」
正直やってられない。この時間は寝てるからな、いつもは。
「はぁ、まぁいいわ。
貴方達の事だけれども、実際には生徒会に所属はしないことになるわ。エイジトール君という強力な戦力が入ったけれど、できるだけ隠しておきたいのよ。エイジトール君は先のダリウス家との一戦で、一応実力は知れているけど、それでも急に生徒会に入るというのは不自然。こっちの思惑を悟られてしまう可能性が高いわ。だから、私がシャルルちゃんに私的で協力を頼んで、それにエイジトール君がついてきた、ということになったわ。シャルルさんは学年主席だから、そんなに不自然ではないしね。と、いうことになったのだけれども、いいかしら?」
「私はいいと思います」
「ありがと。エイジトール君は?」
「俺は、知らん」
「・・・は?」
「俺はバカだからな。シャルがいいと言ったんならいいだろう」
「それでいいの?」
「ああ、俺はただ、シャルを守るために力を振るう。シャルはその矛先を導く。これで十分だ」
「ヴァン君・・・」
「シャル・・・」
うっとりと、その碧い瞳をうるませてこちらを見つめてくるシャル。
俺とシャルは生徒会長に見せつけるかのように、甘い雰囲気をかもし出す。
まぁ、シャルは完全に生徒会長のことは忘れて2人だけの世界に入っているから、見せつけているのは俺だ。
「何よ、その空気は!?話は終わったから、ちゃっちゃと出て行きなさい!」
顔を真っ赤にして怒鳴ってくる生徒会長。
いい気味だ、と笑いながら急いで生徒会室を出た。
―――――――――――――――――――――――
「・・・・・・」
彼らが出て行った後、入れ違いになるように役員の子達が来た。
その子達は、自分の顔を見て驚いていた。
それもそうだろう、今の私は、それこそ普段ほとんど見せない『思考』している姿をしているのだから。
私は、自分で言うのもなんだが天才だ。
力に関しては、先代が『世界最強の五人』だった事により上には上がいる、ということを思い知らされたけれど、頭脳、知力や、頭の回転ということは、少なくとも同世代の中では一番だと自負している。
だからこそ、自分はほとんど『思考』というもの、今回は『長考』とでも言ったほうがいいかもしれないが、それをほとんどしない。
だから考え込む私、というものを見て驚いていたのだろう。
―――いや、まて。
(先代が『世界最強の五人』だった?)
彼が、もしエイジトール君が『世界最強の五人』だったら?
「・・・まさか」
そう思うが、ドンドン思考は進んでいく。
シャルルちゃんが詮索を禁止したこと。
彼が自分のことを道具のように扱っていること。
そしてなにより、彼の圧倒的なまでの力。
死を、殺しということに何の躊躇いもない、あの表情。
「・・・もし、本当にそうだったとしたら―――」
まずいことになる。
彼の、シャルルちゃんへの依存。
エイジトール君が、シャルルちゃんを失ったら―――
そう考えて、ぞっとした。
彼は間違いなく暴走するだろう。
彼という武器は、無差別に力を振るい、全てを破壊するだろう。
シャルルちゃんは、彼を導くだけではなく、鞘の役割もかねているのだ。
そんな彼女がいなくなってしまえば―――
「・・・会長?」
「・・・っ!」
かけられた声で我に返る。
「どうしました・・・?顔色が悪いですよ?」
「なんでもないわ・・・あるはずがない」
そうだ、あるはずがない。
彼が『世界最強の五人』など、自分の作り出した、ただの幻想。
だが、手は打っておかないといけないかもしれない。
彼らのために。
なにより、自分自身のために。
―――――――――――――――――――――――
暗闇にはあどけのない声が響いていた。
「ねぇねぇ、カーヴァー」
「どうした?ラーヴァー」
声は二つ。
「そろそろ、だよ。カーヴァー」
「ああ、そろそろ、だな。ラーヴァー」
一つは少年のようで。
「馬鹿な奴等に思い知らせよう」
「「本物はどっちかをな」」
一つは暗く重い青年の声だった。
感想、叱咤激励、待ってます。