狂剣の片鱗
戦闘描写難しい・・・。
まぁ、戦闘って言うほど戦闘ではないんですけどね。
序盤、主人公は敵を瞬殺が基本なのでサックサク進みます。
そんな感じの4話目です。
俺が生徒会室から帰るとシャルが待っていてくれた。
「・・・大丈夫?ヴァン君・・・?」
心配そうに俺の顔を覗き込んでくるシャル。
シャル・・・。
すまない。これだけはおまえには言えないんだ。
心配にさせたくない。
ただでさえ、ストーカーに遭っていたという のに。
これ以上おまえが心配することなんて無い。だから―――
「ああ・・・大丈夫だよ、シャル」
嘘をつく俺を許してくれ。シャル・・ ・。
―――――――――――――――――――――――
生徒会室から戻ってきたヴァン君は静かに、けれどこれ異常ないくらいに怒っていました。
心配になった私は思わず訊いてしまいました。
大丈夫?、と―――
彼は辛そうな顔で、大丈夫だ、と答えてくれました。
しかし、私の不安はぬぐえません。
答えた時の彼の顔が、憤怒に、苦しみに、悔いに、そしてほんの少しの悲しみに歪んでいたから。
私の不安は、ドンドン膨らんでいきました。
嫌な予感がする―――
その予感は、きっと正しかった。
それなのに私は、彼を止めてあげられなかった。
―――――――――――――――――――――――
一週間後
俺は生徒会長の指定した第一野戦場に来ていた。
「・・・来たわね」
フィールドに出ると生徒会長と戦闘相手のダートが立っていた。観戦席には生徒会役員と思しき奴等がいた。
「逃げずにきたことは褒めてやる・・・だが、俺はテッラのようなバカではないぞ?」
「・・・・・・」
俺は無言だった。
「・・・怖気づいたか。やはりコイツなんかに生徒会に入る資格はないですよ。会長?」
「・・・・・・」
俺はそれでも無言だった。
「フフッ、さぁ、始めましょうか」
「くっ・・・」
ダートは苦虫を噛んだような顔で初期位置へと歩いていく。
「・・・手加減はせんぞ」
「・・・・・・」
無言を貫き通す。
「それでは・・・開始!!」
生徒会長がそういった瞬間―――
勝負は決した。
―――――――――――――――――――――――
「ヴァン君ー。起きてくださーい・・・」
いつものようにヴァン君を起こしにいくともう部屋はもぬけの殻だった。
今は朝の6時。休日なのに早すぎる、と彼は言うが、こっちとしては一秒も早くヴァン君にあいたいのだ。
彼もそれが分かっているから、文句を言った後、すぐに許してくれる。
ヴァン君は私が起こしているから起きているのであって、自分からこの時間に起きるなんてありえない。
1週間前から感じていた嫌な予感が私を急かす。
急げ、急がないと取り返しのつかないことになる―――
私は急いで部屋を出ました。
「ヴァン君・・・」
ただの私の早とちりであって欲しい。
そう、願わずにはいられませんでした。
―――――――――――――――――――――――
何が起こっているというの・・・?
観戦しに来ていた役員の皆も野戦場に降りてきて警戒している。
一瞬だった。
私が開始を告げた瞬間、爆発でも起きたのかというほどの音をたて野戦場の3分の一が吹き飛んだ。
ゆっくりと砂埃が晴れていく。
そこにいたのは、ぼろぼろになって地面に突っ伏しているダート君と、それを見下すかのように立っているヴァン・エイジトールだった。
ヴァン・エイジトールがこちらを振り返り、私はぞっとした。
感情などどこにもない、否、瞳の底で他の感情を燃やしながら静かに燃える憤怒がこちらを捉えていた。
ヴァン・エイジトールが一歩こちらに向かって踏み出す。
われに返り、役員は私を守るように展開した。
「ま、まちなさい・・・!?これ以上近づけばあの子が―――」
「調子に乗るなよ、小娘・・・」
底冷えするほど冷たい声。
それが自分たちに向けられている。
恐怖が目の前にあるとき、人間がとる行動は決まっている。
恐怖の対象を、無くすこと。
体は勝手に動いていた。
役員の皆も、自分の持てる最高の技を放っていた。
10にも及ぶ大魔法は対象を無残に食いちぎる、はずだった。
パりイイイィィィィン!!!
彼の右腕に銀の篭手が出現し、私たちの魔法を握りつぶした。
呆然とする私たちの前で、彼の篭手の、手の甲に一つ、腕に二つある光のない宝玉が順に紫色に光りだす。
それと同時に、腕の周りに3個の拳大の紫色の高魔力体が出現する。
意識が途切れる瞬間見たのは誰かの背中だった。
―――――――――――――――――――――――
「調子に乗るなよ、小娘・・・」
俺がそういった後、生徒会の奴等は魔法を放ってきた。
怒りで自身を制御できていない俺は流れのままに、魔法『戦機召喚』を発動した。
この『戦機召喚』こそが俺の唯一の魔法。
別次元に収納してある物を取り出す、という魔法だ。
俺は、一瞬で『三位の篭手』を装備して、迫り来る魔法を握り潰した。
そして拳に魔力をこめる。
『三位の篭手』
魔力を込めることによって、最大3個の高魔力体を出現させる。
この魔力体は、対象を殴ることによって、一瞬遅れて対象に発射され、自動的に追い討ちをかけることができる。
俺は右腕を何の躊躇いもなく振り抜いた。
生徒会の奴等は拳の圧力と、魔力球によって見るも無残な姿に成り果てる。
ハズだった。
それは一人の少女の眼前で止まっていた。
一瞬遅れて剛風が巻き上がる。
少女は瞬き一つせず、それを見据えていた。
「・・・どういうつもりだ?シャル・・・」
「・・・っ!!」
パチン、と―――
乾いた音が野戦場に響いた。
頬を引っ叩かれたと気付くのに少し時間がかかった。
「目は、覚めましたか?」
「・・・・・・はぁ」
ため息をつく俺に、シャルはやっと微笑んでくれた。
「また、やっちまったのか・・・」
そうつぶやく俺にシャルはがばっと抱きついてきた。
「どうして、とは聞きません・・・ですが、心配したんですよ?」
「シャル・・・」
「本当に、心配したんです・・・」
「ああ・・・悪いな・・・」
シャルの髪を撫でてやる。
―――何分そうしただろうか。
やっと落ち着いたシャルが生徒会の奴等を起こしていく。
「・・・うぅ」
最初に目が覚めたのは生徒会長だった。
「よう・・・」
「・・・っ!!」
起きた瞬間身構える。
「まぁ、まて・・・全員起きてからだ」
10分ほどで全員が起きた。
起きた瞬間俺を見て身構える、ということを全員がやった。なかなか面白いが、何か傷つくぞ・・・。
「さて・・・さっきは済まなかったな」
「あなた一体何者なの・・・?」
「それは気にするな」
「「「「「ええー」」」」」
「言っとくがお前等がシャルにしようとしたことを俺は許したわけじゃあない」
その一言で固まる生徒会。
「それについては謝らせてもらうわ・・・ごめんなさい」
「やけに素直だな・・・」
「もともと本気でやるつもりはなかったのよ。ただ、あなたを闘わせるにはこうするしかないと思っただけなの」
「なんで俺なんかを生徒会に入れようと思ったんだ?」
「強いからよ」
「強いからって入れるわけじゃないだろ」
「ホントの事よ・・・力が必要なのよ」
「なに・・・?」
「この学校に危機が迫っているわ」
一週間交替で小説を書いていきたいと思います。
続きは来週からということになります。
感想・指摘あればバッシバシください。