エピローグ
兄「何か言うことは?」
俺「……」
兄「ばしぃん!(竹刀を叩きつけた音)」
俺「ひぃ!?」
兄「言うことは?」
俺「ごめんなさいでしたぁー!!」
MA☆ZIで謝る2秒前。
あれから一年が過ぎた。
もう卒業の時期である。
いや、まさに卒業する日であった。
ここ、屋上から眺める景色も見納めである。
長いようで短かった、この3年間。
楽しかった。
嬉しかった。
悲しかった。
でもやっぱり、幸せだった。
「ヴァン君。そろそろ式が始まりますよ?」
どうやら迎えが来たようだ。
「ああ、シャル。すぐ―――」
いいかけて、言葉を止める。
やはり話そう。
一つ、考えていたことがあった。
それこそずっと以前から。
「シャル、聞いて欲しいことがある」
「はい。なんですか」
雰囲気で真面目な話だと悟ったのだろう。シャルも真剣になった。
「俺のことを世間に公開しようと思う」
「……!」
「一年前の創立謝祭。あれが忘れられない」
狂気は最後にあれほどの誇りを抱いていたのだ。
確かなものを持っていた。
自ら修羅に走ったわけではない。
走らされたのだ。誰かによって。
許すことなどできない。
あの勇者を貶めた奴を。
「犯人は俺を知っている。今のままでは君が危ない」
公開すれば、近しい人たちのある程度の身の安全が保証できる。
オリジン達に頼んでみるのもいい。
今よりはずっと安全になる。
「ヴァン君はいいんですか?これまでずっと隠してきたのに」
「いいんだ。元々どこかで公開しなきゃならなかったから。それをするべきときが来たってだけさ」
ふっ、と息を吐く。
シャルの瞳を見る。
目を逸らすことはしない。
「だから、結婚しよう」
静かに、そう言った。
共に歩んで欲しい。
支えあって生きて行きたい。
ずっとずっと。
シャルは一瞬なにを言われたかわからないといった顔をしたが、すぐにぽろぽろと泣き始めた。
「嬉しい、です。本当に……嬉しいです」
抱きしめる。
最愛の人を。
守るように。
支えられるように。
愛おしく抱きしめる。
「好きだ。愛してる」
「わたしも、愛してます」
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一つの物語が終わる。
しかし、紡がれるものもある。
終わらないものもある。
少なくとも、彼の人生はまだ終わらない。
彼のいた歴史も終わらない。
彼女のいた歴史も終わらない。
二人がいた歴史は終わらないのだ。
これで一章は終わりです。
ヴァン君が主人公の話は終わりになりますが、ヴァン君は出てきますよ。これからも。
二章からは違う主人公です。
正統派で攻めてみようと思います。
主人公補正はつけないよう極力努力します。
感想お願いします。