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私と彼の恋物語  作者: byとろ
一章:ヴァン・エイジトール
16/19

創立謝祭part6

ども、byとろです。


一話に一ヶ月とか・・・やべえぇぇ。

読者様はついてきてくれるのだろうか?


兄「無理じゃねぇか?」

俺「そんな・・・(ガクブル)」


まぁでも、新しい小説のネタを考えていたということでご了承下さい。


マイページの活動報告のところに新小説のあらすじを乗っけておいたのでよろしければ見てください。

皆様のコメントでやるかどうか決めさせてもらいます。


兄「宣伝じゃねぇか!しかもコメ稼ぎかよ!」


そんな感じの15話目です。

廊下にはさまざまな人が行きかっていた。


それをボーっと眺める。各教室から聞こえてくる声やら、足音といったいろいろな音がこの祭を活気付けているように感じた。


心ここにあらず、といった感じでボーっとしていた少女、シャルル・ロードライトは暇していた。


彼に急遽、仕事が入ったので、聞き分けのいい子のように送り出したが、やはり楽しみにしていたのは間違いない。


今日は創立謝祭である。


校内デートで、普段自分がしないような―――たとえば腕を組んだりとか―――ことをしたかったのだが、空回りしてしまった。


最近はことごとくである。


それこそ自分が彼と恋仲になってから、随分いろいろあったと思う。


死にかけたり、とか。


そんな事を考えながら、またため息をつく。

 

「あっれー?どったの?シャルゥ」


「・・・・・・リンちゃん」


後ろから声をかけられ、振り向いた先にいたのは、リン・ルゥだった。


「むー、彼の姿が見えないねぇ。・・・・・・もしかしてアノ糞野郎」


「ち、違うよリンちゃん!?ちょっと生徒会の仕事が入っていないだけだよ!」


おちゃらけたいつもの姿からは想像も出来ないほどドスの聞いた声でつぶやいた親友に、冷や汗をかきながらも訂正を入れる。


「そう、ならいいんだけどね。・・・・・・ねぇ、シャル」


「うん?どうしたのリンちゃん?」


「私はさ、シャルのこと親友だと思ってる」


「私もだよ?」


「あはは、ありがと。だからさ、シャルがため息とかついてるとさ、とっても嫌になるんだよ」


「・・・・・・」


「シャルと彼の事情には口を突っ込みたくないけど、やっぱり、我慢するのはダメだよ」


「・・・・・・え?」


「シャルが何か我慢してるのなんてすぐに分かるよ。シャルは分かりやすいし」


「そ、そう・・・・・・?」


「親友をナメンナ。・・・・・・でさ、嫌だったら嫌って言いな。そんぐらいの甲斐性は持ってるでしょ、アイツ」


「・・・・・・リンちゃん」


「と、いうわけで、リンリンの人生相談の時間でした~。んじゃあ、私はこれで。バイビ~!」


有無を言わさず一気にまくしたてると、すぐに行ってしまった。


そんな不器用な親友に感謝し、立ち上がる。


たまにはわがままを言ってみるのもいいかもしれない。


そんなふうに思いながら、歩き出した。


いつもよりほんの少しだけ、軽快な足取りで。





―――――――――――――――――――――――





ヴァン・エイジトールは焦っていた。


敵は強くない。テロ組織にしてはやけに多すぎると思っていたが、ほとんどが魔力で構成された囮である。


本当の組織の人員だってあしらうことなど造作も無い。


順調に殲滅して行き、一万近くいた敵もいまや半分に達していた。


順調である。


裏を返せば敵方にとっては危険な状況なのだ。


なのに『ピオーズ』が使用される気配が無い。


嫌な予感がする。ならば、相手が何かする前に潰してしまおう。


そう考えたヴァンは左腕の篭手『三位の篭手トリニティ・ギア)』に魔力を奔らせる。


横にいる敵の魔力体を蹴散らし、『三位の篭手トリニティ・ギア)』を掲げる。


「『反真理トゥルースノッド』・・・・・・!!」


瞬間、圧縮された魔力が吹き出し、あたりを光が覆う。


銀の装甲が糸のように解けていき、三つの莫大な魔力の固まりになる。


その魔力の塊は犬の頭部にそっくりだった。犬というよりは狼に近い、獰猛そうな顔。


「『死召す三つロスト・ケルベロス』!!」


ゴオオオオオオオオオッッッ!!


と、三つ首が一斉に咆哮したかのような破壊音。


三つ首が周囲を見境無く破壊しているのだ。


三つ首が通り過ぎた場所は無残にも荒れ果てていた。時折見える赤いものは血だろうか。


ヴァンの左腕を覆っていた銀の装甲は無くなり、ぼろぼろの包帯が巻かれ、手首に銀のブレスレッドがはめられていた。


反真理トゥルースノッド)


物質のあるべき姿を崩壊させ、宿っている魂を顕現させる、異形の大技。


大業といってもいいかもしれない。


万物をつかさどる神に真っ向から喧嘩を売っているに等しい行為なのだから。


物質ではなく本質が具現化されたそれは、元の物質とは比にならないほどの性能を発揮する。


ただ、物質に宿る魂を引き出すので、ただの物質では意味がない。


職人やら、それを所持していた者の強い意志がこめられている物に限られる。


その制約と大量の魔力を消費するが、それを補って余りある戦力となる。


ヴァンが『反真理トゥルースノッド)』を使用するのとほぼ同時に前方から魔力がひらめいた。


その一瞬で敵にはめられたことを悟ったヴァンは大きく後方に跳ぶ。


ジュッ!!


と、紫が駆け、今ヴァンがいたところの付近が跡形も無く融けていた。


続けて放たれる紫閃を空を蹴ることでかわしていく。


反真理トゥルースノッド』であふれた膨大な魔力を吸収して砲台と化しているのだろう。だから劣勢においても使えなかった。


まんまと敵の罠にはまってしまったというわけだ。


次々と迫ってくる紫閃をかわしていく。そして、最後に大きな魔力が放出されるのを感じ、避けるのは無理と判断し今度は右腕の篭手『煉獄の篭手オーガトリィ・ギア』に魔力を奔らせる。


「『反真理トゥルースノッド)』―――『憤怒の煉獄ラースオーガス)』!!」


篭手から暴力的なまでの赤が吹き出す。


漆黒の装甲は以前よりも攻撃的に、かつ禍々しく染まった形になった。


装甲の上を奔る幾重の血脈からは血よりなお禍々しい赤が吹き出している。


それを、迫って来た特大の魔力の紫閃に打ち付ける。


毒々しい紫閃を塗りつぶすが如く赤が弾け、爆発した。


無音とすら思ってしまうほどの爆音があたりを支配した。


「―――ククク、どうだこれは。どうだどうだ!!あはははは!!」


奇怪な笑い声と共に姿をあらわした人物は、もはや人とは思えぬ形をしていた。


肩に担がれるように背中から突き出た毒々しいまでの紫色をした砲台。


それを支えるように体中に絡み付いている同色の肉。時折生きているかのように脈をうっている。


「『ピオーズ』・・・・・・!!」


「ほう。よくこれが『ピオーズ』だと分かったな?国に保管されている時は完全な大砲の形をしていたというのに」


「クハッ、そんな禍々しいものを見て『ピオーズ』以外と考える方が無理じゃねえか?」


「・・・・・・リヒャルド。敵は?」


「あらかた片付け終わった。まったく、張り合いがねえぜ」


「リヒャルド・・・イグニ・リヒャルド・・・・・・!!『紅星を背負うクロス・プロメテオス)』!!」


話にわりこんできたリヒャルドを怨敵のように見つめる『アスクレ』の頭だと思われる男。


「クハッ。随分品がねえ姿じゃねえか。むかつくぜ」


「貴様が・・・貴様がぁ・・・・・・!殺してやる!殺す殺す!!この『狂気しかない(キルス・ショック)』が!」


「あん?『狂気しかない(キルス・ショック)』だって?・・・・・・知らねえなぁ。ヴァン、知ってるか?」


「・・・・・・たしか元SSツヴァイクラスの『魔法使い』だったはず」


「ふーん。じゃあ、微妙につえーのか?」


「ふざけるな!『ピオーズ』だぞ!貴様等でも適うことのない神格兵器だぞっ!!」


全く緊張感の無い相手を目にし激昂する『狂気しかない(キルス・ショック)』。


「クハッ。めんどくせえな。俺パス。後任せるわ」


「あっ・・・おい!」


くるりと体を回転させて飛び去っていくリヒャルド。


そんな彼を見て、相手は完全にきれたようだ。


「殺す殺す。全部ぶっ壊してやる!あああああああっっっ!!」


怒りに任せ次々に撃ちだされる毒。


どんな物でも腐敗させ融かすそれは、かすっただけでも命取りになりえる。


だがヴァンにはかすりもしない。


高速で動き、『死召す三つロスト・ケルベロス)』で喰らい、『憤怒の煉獄(ラースオーガス』で吹き飛ばす。


「くそくそっ!もっとだもっと力をよこせえええっ!!」


絡みついていた肉が圧迫するように肥大化し異形の怪物へと変貌した。


全長20メートルは超すであろう体躯。


足が異様に大きく、反面、手は元々のそれより小さくなっている。


腰の辺りから突き出た3本の突起と、両肩から突き出た6門の砲台。


頭部には8つ程度の眼がぎょろりとうごめいていた。


「グオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」


咆哮。それだけで体が吹き飛ばされそうになる。


続けて放たれる先程とは比べ物にならないほどの威力が込められた長大な毒の砲撃。


グジョオオオオオッ!


と、もはや融かすということですらない不明瞭な一撃。


それが続けて放たれる。


―――壊してやる。殺してやる。


不意に聞こえる男の声。


―――私こそが最強なのだ。


絶望と羨望と嫉妬が混ざり合った声だった。


神格兵器は人の思いで進化する。


だからこの男の本当の気持ちがあらわれたのだろう。


―――絶対的な強者なのだ。


その言葉はただの慢心の声ではなかった。


諦めているのに、それを否定しようと自らを奮い立たせんとする哀しい言葉。


だからこそ、ヴァンには許せなかった。


「『狂気しかない(キルス・ショック)』なんていわれながら、ちゃんとしたもの持ってんじゃねえかよ」


自分を鼓舞することが出来る勇気。


絶望を前に立とうとする心。


御伽噺の中にしかないようなものをこの男は持っていた。


なのに踏み外してしまった。なぜ誤ってしまったのか。もしかしたら、人々の英雄になれたかもしれないのに。


―――すこし、ほんとうに一瞬、悔いた。


戦闘における致命的な隙になろうと知りながらも、悔いた。


しかし攻撃は来なかった。


砲撃はいつの間にか止んでいた。


―――俺はどうして此処にいる?


「・・・・・・おまえが弱かったから」


突如告げられた問いに、自然に口が動いた


―――おまえは強いのか?


「・・・・・・ああ、強いぜ」


―――それは、羨ましいな。


「俺にはおまえの方が羨ましいよ」


―――どうして?


「おまえは勇気があるから。心を知っているから」


―――そう、か。


「俺は強いけど、心を知らない。知ろうとはしているけどな」


―――こ、・・・ころ・・・・・・か


どんどん声はかすれていった。


怪物の体が小刻みに揺れている。


もう長くない。すぐになけなしの理性も飲まれるだろう。


「だから、もう終わりにしよう」


両手を前に突き出す。


バキッ!


と、何かが折れる音がして彼の手には錆び折れた大剣が握られていた。


すでに先程までの理性をなくした怪物が特大の砲撃を準備していた。


剣を掲げ、つぶやく。


「じゃあな。すまなかった」


何に対して謝ったのかはわからない。


ただ言葉にしていた。


砲撃が放たれる。


掲げた剣を振り下ろす。


「『理に挑みし、愚か者の大剣フール・リベイオン)』」


静かにそうつぶやいた。





―――――――――――――――――――――――





学園に帰るころにはもう夕方になっていた。


1万の敵を半日で蹴散らしたのだから途轍もないスピードだったのだろうが、ヴァンとしては遅かったほうである。


すこし、時間をかけすぎた。


前方にシャルの姿が見えた。


「シャル!」


「あ・・・・・・ヴァン君」


振り向いた彼女を抱きしめる。ぎゅっと力を入れると、シャルは体を預けるようにしてくる。


10秒ほどそうして、体を離した。


「わるい、またせた」


「・・・・・・本当ですよ。もう」


「わるいって。俺等の劇までもう少しあるし、そこらをまわろう」


「はい。ならさっそくいきましょう」


そういって二人そろって歩き出すと、シャルが腕を組んできた。


その行為に内心驚きながらも歩きやすいように歩幅を調整する。


「ねぇ、ヴァン君」


唐突にシャルが聞いてきた。


「ん?どうした?」


「・・・・・・あの日を覚えていますか?」


「忘れるわけが無い」


あの日、雪が降る中、互いの気持ちを確認した。自分を受け入れ、愛してくれた。


きっと、これからもあの日の記憶は薄れることなく、自分を支えてくれる。


そう思っている。


「わたしは、あなたをあいしています」


「シャル・・・・・・?」


彼女らしくも無い、抑揚の無い声。


とたんに不安になる。


「だから、私は躊躇しません」


次に聞いた言葉で不安は吹き飛んだ。


とても美しい、覚悟の乗った声。


「私はあなたと共にいます」


「シャル・・・・・・」


「遠慮はしません。受け止めてくださいね?」


「・・・・・・ああ、まかせろ。俺は最強だぞ?どんなものでも受け止めてやる」


「はい、頼りにしてます」


そういって俺の肩に頭を乗せてくる。


この一日で彼女に何があったのかはわからないが、嬉しかった。


共に生き、隣を歩いてくれるといってくれたのだ。


まぁ、とりあえずは二人で、この創立謝祭を楽しみますか。





―――――――――――――――――――――――





「やはり、ああなるよなぁ」


男はつぶやく。


「せっかく狂わせてやったってのに、使えない」


やれやれとでもいうようにわざとらしくかぶりを振っている。


「・・・しかしまだ、『アレ』を出してはくれないか」


ゴポッ


と、男の背が膨れる。


「ははは、しばらくは黙っといてやろう。まったく、舞台を用意するのはめんどくさいんだぞ」


そういったときには男の姿はもう無かった。


まるで溶けてしまったかのように。


闇に塗りつぶされてしまったかのように、男は消えた。


男の眼下には、何が見えていたのだろうか?


あるいは、何も見ていなかったのかもしれない。


しかし、確かに男は、次の狂気の器を見つけたようだった。


マイページの活動報告をヨロシクゥ!

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