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私と彼の恋物語  作者: byとろ
一章:ヴァン・エイジトール
10/19

奇跡

どうも。byとろです。


何か最終回っぽいけど違います。

まだまだ続くと思います。


そんな感じの9話目です。

スティテイレ魔法学校に俺が入学したのは、それが普通のことだったからだ。


『世界最強の存在ファースト・オリジン』であり、しかしその中でも特に規格外の2人。


あいつはずっと引き篭もっているからいいのだが、俺は外見は普通の少年。


怪しまれないためにも学校に行くことにした。 


ちなみに校長が政府に顔がきく大物で、俺の入学の際、便宜してもらった。


そして、彼女とであった。


最初は仕方ないからだった。


でも、初日の放課後から自分の意思で学校に通うことにした。


今思えば、一目惚れ、というヤツだったんだろう。


実技で一緒のグループになったり、一緒に下校したり、休みの日には買い物に付き合ったこともあった。


毎日が本当に楽しかった。


俺が『世界最強の5ファースト・オリジン』の、しかも化け物だというのに関わらず俺を受け入れてくれた少女。


俺の人生に色をつけてくれた少女。


あの日、この少女を守ろうと決めた。


何があっても必ず守ると。


それなのに、どうして?


俺は、守れなかった。


前の俺なら相手が動いた瞬間に取り押さえることができたはずだ。


頼りきっていた。


あの子が側にいるだけで、浮ついてしまう。


彼女のいうとおりにだけ動く。


それで守れるはずが無い。


それはまさしく、彼女への依存が招いた悲劇。


俺は弱い。


なにが世界最強だ。


何が狂戦士だ。


目の前の1人すら守れないただのバカだ。


どこから間違ったのだろう。


いや、出会わなければ良かったのか。


目を開ければ放課後の教室だった。


俺以外には誰もいない。


1人、いた。


灰色の景色の中で唯一つ、色のついた人。


肩までの金髪に、澄み切った青色の瞳。


小柄の体とは対照的に育つ所は育っている。


彼女は帰る用意をしていた。


俺はただ座っている。


彼女が席を立つ。


それでも俺は座っている。


ここで声をかければ、巻き込んでしまう。


出会わなければ良かった。


声をかけるな。


かけてはいけない。






「・・・・・・どうして、泣いているんですか?」






泣いている?


ああ、そうだ俺は泣いている。


何故?


そんな事は分かりきっている。


「君が行ってしまうから・・・」


ぽつぽつと机に黒い染みができていく。


「それでいいはずなのに、出会わなければ良かったはずなのに、駄目なんだ」


静かに独白していく。


「出会わなければ君は怪我を負うこともなかった。君は幸せになれた。それでも、それでも俺は―――」


拳を握り締める。


言葉に。


この思いを言葉に。


「俺は、君と一緒に居たい」


「君と共に歩んでいきたい」


「自分の意思で・・・!!」


そっと握り締めた拳に温かみが伝わった。


彼女の手が包み込んでいた。


「・・・やっと、言ってくれましたね」


「・・・ああ、随分と時間がかかった」


「それでも、言ってくれました」


「君は、後悔しないかい?」


「するわけ無いじゃないですか。だって、愛していますから」


「ありがとう。俺も愛してる」


「はい」


「一緒に生きよう。二人で支えあって」


「はい!!」


とびきりの笑顔。





手を取り合う。


その瞬間、世界に色が着いた。


そして温かさも。




笑いあう。


「「一緒にいこう」」


「「未来へ」」


世界がはじけていく。


恐怖は無かった。


手のぬくもりが残っているから。





―――――――――――――――――――――――





目を覚ました。


どうやらシャルのいる病室で眠ってしまったらしい。


「・・・夢、か」


さっき見たものはどうやら夢だったようだ。


「・・・はっ、都合の良すぎる夢だな」


「そうですか?」


「え・・・!?」


振り返ると、そこには彼女がいた。


優しく微笑んでいる彼女が。


もう聞くことがないと思っていた彼女の声。


もう見ることが無いと思っていた彼女の笑顔。


自然と涙がこぼれる。


「もう、泣き虫ですね。ヴァン君は」


「ああ、格好悪いかな?」


「そんな事は無いですよ。もっとヴァン君を知りたいです」


「俺も、シャルのこと、もっともっと知りたい」


「はい、ゆっくり時間をかけて知っていきましょう。時間はいっぱいあるんですから」


「ああ、ずっと傍で支えてくれるかい?」


「あたりまえです。私のことも支えてくださいね?」


「わかってるよ。支えあって生きていこう」


「はい」


「愛してる」


「愛しています」


抱きしめあい、唇を重ねる。


長く長く重ねあって、そして笑いあった。


ただただ、純粋に。


ただただ、幸せに。






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