第八話 異界 その⑤
あれからしばらくして、登校する人が増えてきた。
しっかし、変わったヤツだったな。
名前を覚えるのは苦手だから、ポニーテールに眼鏡の女子ってことくらい覚えていないがな。
それにしても交換条件が勉強って……。
そんなことを考えて真帆と目を合わせていると、とある人物に話しかけられる。
「よっ、おふたりさん!」
「大河内くん!」
「一応言っとくけど、超目立ってるからな。お前ら」
「マジか」
注意しておかないと。
まず常に目を合わせるのをやめるか……?
でもそれだと、真帆が寂しがって死んでしまうかもしれない。
兎だけに! ……って、いまは目の色がブラウンだけど。
とりあえずここは、
「大河内くん、どんなふうに目立ってるの? あと、誤魔化す方法も教えて!」
詳しく聞くしかないな。
状況さえ分かれば対策できる! ……はずだ。
「はっはっは! 冗談だよ。でもそんなんじゃ、本当にバレるぞ」
「大河内くん……」
「悪い悪い……」
「あ、そういや大河内くんさ、テスト勉強捗ってる?」
「なんだ急に?」
「じつはさ、今日からしばらく期末テストの勉強会をしないかって、真帆が言うからさ」
「そうそう。失礼だけど、大河内くんって成績があまりよろしくないでしょ? だからもうひとり呼んで、4人で勉強会しようかなって」
「いいなそれ! じつは部活が忙しくて、帰ってもすぐ寝ちまってさ! テスト範囲もわからないし、手詰まりだったんだ!」
「よろこんでくれてよかった」
「真帆、テスト範囲わかるか?」
「それは愚問。一学期の範囲をやればいい」
「なるほど」
ん? なんかちょいちょいむこうの口調になっているような……。
そういや、オレとの会話ではなるって言ってたっけ。
「それで、そのもうひとりって誰だ?」
「ポニテ眼鏡の……なんつったっけ?」
「今石さんよ」
「今石さんか……」
「あ、今石だけに、イマイチ?」
「は?」
真帆が見たことのないような顔で呆れる。
てか、初めて見たぞ! そんな顔!
「ち、ちげぇよ! その、密かにいいなーって……思ってたり、思ってなかったり……?」
「ほう……」
獅導みたいに大げさな反応はしないが、ちょっとだけ獅導の気持ちがわかるな。
たしかに、他人の恋愛話を聞くのは悪くないかもしれない。
でも、あんな地味な女子がタイプなのか。
どこが好きなんだ……?
「頼む! 今石さんには内緒にしてくれ!」
「いいけど、どのみち今日は勉強会だぞ」
「うおー! 緊張してきた!」
こんなに落ち着きがない大河内くんは初めて見るな……。
出会って2日目だけど。
「大河内くん、落ち着いて!」
「そうね。席は向かいがいい? それとも隣がいい?」
「真帆、いま聞くのは早くないか?」
「そう?」
「隣同士がいいかな」
「了解したわ」
「頑張れよ! 大河内くん!」
「じゃあまたあとで。あと今朝、先生から、しばらくテスト勉強のせいで部活休みになるって聞いたから、しばらくは一緒だな」
「ああ!」
「それじゃあ、しばらくよろしく」
「おう、じゃあな!」
こうして、大河内くんは去っていった。
それにしても今石が好きなのか。超意外だ。
「そういや大河内くんってモテるのか?」
「スポーツマンだし、イケメンだし、モテるらしいよ。足は法魔くんより遅いけど」
「いや、そりゃそうだろ」
魔法なしで時速4000キロ出せたら、ただの化け物じゃねーか。
◇◇◇
そんなこんなで午前の授業は終わって昼休み。
オレは購買でコロッケパンをたらふく買う。
アイツと食べるごはんは美味しいからな。パンだけど。
オレはコロッケパンを1個真帆にやる。
すると、真帆が複雑そうな顔をする。
「あの、鳳真くん」
「なんだ? 2個食いたいとかか? 仕方ないな。こんなにやるのは真帆にだけだぞ?」
「そうじゃなくて! 言いにくいんだけど、わたしカツサンド派だから……」
「ま、待ってろ!」
まったく、時速4000キロを無駄遣いさせやがって。
「ほ、ほら! 1個買ってきてやったぞ」
「あ、ありがとね」
真帆がかわいく笑う。
そんな真帆に少しドキッとする。
なかなかかわいく笑うじゃないか。
導魔ほどじゃないがな!
「あの、鳳真くん」
「なんだ? まさか2個食べたいのか?」
「そうじゃなくて、お金払った?」
「あ……」
「大量のコロッケパンとこれを合わせたら4000円くらいだろうから、あとで一緒に払いに行こうね」
「おう……」
オレの速さがルールという壁に阻まれ負けた……?
クソ真面目なこのオレが、まさかルールを破ってしまうとは……。
「ルールは守らないとな……」
「うん」
「よっ、おふたりさん! 混ざっていいか?」
「大河内くん!」
「昨日さ、車の話するって約束してたろ? でも、渋堂寝てたからさ」
「ああ、本当にごめん」
「いいって」
そういやそんな約束してたっけ。すっかり忘れてた。
だがそんなオレに怒りもしない大河内くんは、やっぱりいいヤツだな。
「それで、好きな車は?」
「ごめん、まだないんだよね。でもどれもかっこいいとは思うよ。車ひとつひとつにドラマがあるイメージ? なんつーか、人生みたいに」
「おっ、よくわかってるじゃん。……ところで、コロッケパン3つくらい譲ってくれるか? 腹ペコでさ」
「いいよ。大河内くんは運動部だもんな」
「そうそう。それで今日は母さんが弁当作り忘れてさ、絶対お腹が空くよなって不安な気持ちで、授業にまったく集中できなくて……」
「それっていつものことじゃないの?」
「ははは、そりゃ言えてるかもな」
うん。やっぱり大河内くんは社交家でいいヤツだな。
そう思いながらも会話を弾ませていると、今石が割り込んでくる。
「あの、ちょっといいですか?」
「あ、今石だ」
「どうかした?」
「その、一緒に勉強するのって、大河内さんですか?」
「そうだけど……」
「おれじゃ駄目……ですか?」
大河内くんがガチガチに緊張している。
それだけ本気だってことか。
そんな大河内くんに、オレは小声でエールを送る。
「頑張れ、大河内くん」
すると、大河内くんはオレに見えるように、こっそりと右手の親指を立てる。
「それで、どうなの? 今石さん」
「いえ、迷惑だなんて! むしろワタシの方が迷惑というか……」
「そんなことは……」
……なんだか空気が重くなってきたな。
ここは流れを変えよう。
「それより、みんなの趣味って? こんな空気じゃ、コロッケパンも喉を通りそうにないからさ」
「そうだね。鳳真くんの言うとおり、まずは互いを知ることから始めましょうか」
「そ、そうだな」
「ですね」
ん? そういや真帆の趣味は聞いたことないな。
あれだけわかったつもりになってたけど、やっぱり知らないことだらけだ。
前は思わなかっただろうけど、いまは真帆について知りたいな。
「じゃあオレから! 機械系のファンタジーとか、いろんなファンタジーが好き!」
「SFに近いですね」
あ、そっか。
こっちだと、オレの中のファンタジーにもう名前があるのか。
「おれは車が好きだ」
「ワタシはファンタジーもの。魔法とかが好きです!」
「真帆は?」
「恋愛ドラマかな」
「普通だな」
「普通ですね」
普通なんだ……。
オレにとってはよくわからんけど。
つーかドラマってアレか? テレビでよくやってるやつ。
オレ興味ないんだよなぁ。
「あのさ、ドラマってなにが面白いの?」
「えっ!?」
真帆が驚く。
「渋堂、それはドラマ好きの前で言ったら駄目だろ……」
「鳳真くんは、テレビとか見ないの?」
「むこうだと観なかったかな。こっちに来てからは忙しくて観れてないし」
「そうなの」
「その代わり、部屋ではファンタジーものの小説とか漫画を読み漁ってたような」
「あのさ、おれずっと気になってたんだけど……渋堂の故郷ってどこなんだ?」
「魔導世界」
「「えっ!?」」
あ、やべっ。
聞かれたから普通に答えちゃった。
だけどオレが誤魔化すのは、余計に怪しいので、代わりに真帆が誤魔化す。
「違う違う、マドゥー・ス・カイだよ。とある小国の一部の地域の名前で、鳳真くんはそこに住んでたんだよ」
ナイス真帆!
……と思ったが、ふたりは納得していないようだ。
「……嘘くさい」
「ですね」
「あーもうしょうがない。じゃあ『メッセ』でグループ作ろうぜ!」
「そうだね。そこで話し合おうか」
「わかった」
「わかりました」
こうして、オレは大河内くんと今石の「メッセ」を登録する。
でも、こっちのスマホを登録できるのだろうか。
「真帆……」
「大丈夫。ふたりとも、警告が5つくらい出るけど、全部イエスを押して」
「お、おう」
「わかりました」
なんの話だ?
と思ったが、おそらくこっちのスマホに魔導世界のスマホを登録するときにバグるのだろう。
あからさまにバレそうな要素だな。
つーかこれ、クラスメイトに正体バラさないと登録できねーじゃん。
むこうのフィルターはむこう産のスマホにもかけられてるのか。
「登録はできた?」
「ああ。できたけど……」
「渋堂さんは文字化けしてますね」
「放課後に全部話すから、続きは放課後ね。鳳真くん、購買行くよ」
「あ、そうか! 金だな?」
「うん。それじゃあまた後でね、おふたりさん」
真帆がそう言うと、ふたりともだんまりしていた。
これで本当によかったのだろうか。
ま、いいか。
もし言いふらされたら、そのときは――――
◇◇◇
こうして、今日も放課後がやってくる。
教室に残ってるのはオレたち4人で、他のみんなは帰っていった。
そして、机を合わせて話し合いを始める。
「よし、じゃあやるか! 勉強会!」
「そうだね」
「おい、話をするんじゃ――」
「静かに……!」
真帆がそう言うと、大河内くんが黙る。
真帆はスマホをいじり出し、「メッセ」でグループを作ったようだ。
そして、真帆以外のスマホに通知がくる。
『だれにも聞かれないように、グループ内のみで話し合いましょう』
『真帆に賛成』
『了解』
『わかりました』
さてと、なんの話からしようか。
とりあえず、約束どおりオレの故郷の話からでいいか。
『じゃあオレから話すぞ。まずはオレの故郷の話だ』
『ごくり』
『鳳真くんは異世界出身なんだよ。本名は『渋堂法魔』で、いわゆる魔法使いのたまご』
『お前が言うのかよ』
『マジか』
『その世界って、金属はないんですか?』
『加工技術ができる前に魔法が生まれたから、概念の上書きのせいで土器くらいしかないぞ』
『想像以上にヤバい環境っぽいな……』
『その前に、天堂さんは何なんですか?』
『わたしはむこうに急に呼び出されて、奴隷みたいになってたの』
『真帆の過去は重いからいまは話さないけど、いまは魔導生だよ』
『ここまでで気になることは?』
『それと言っておくが、むこうの異界人はほぼ奴隷扱いだ。戦争のための道具でしかない。簡単にむこうに行きたいだなんて言うなよ?』
『そうだね。案内役がいるならいいけど、召喚されたら地獄だし』
『よくあるファンタジーものの、剣とかはないのか?』
『剣はないけど、剣という概念はあるから、剣を創造する魔法はあるかもね』
『つまり、人が作る過程をすっとばして、創造魔法で直接生まれる可能性はあるってことですね!』
『そうなるわね』
『流石はファンタジー好きだな。大河内くんは信じたか?』
『まだ半信半疑……と言いたいところだが、車どころか加工された金属をファンタジーと連呼する渋堂を見たし、本当なんだな?』
『土日に来なよ。こっちとは真逆で、毎日夜に学校あるから』
『わたしと法魔くんは、平日は毎日2回学校へ行ってることになるわね』
『そう考えるとすごいな』
『ワタシ、土日空けておきます!』
『おれもだ!』
「楽しみにしてるからな!」
「おう!」
「はい!」
『ところで、渋堂さんはどんな魔法を使えるんですか?』
『オレの魔法は【加速】と【減速】だ』
『わたしは【過重力】と【無重力】。こっちだと使ったことないけど』
『嘘つけ。昨日野球で使ってただろ』
『あれはフォークボールだから』
『あくまでもしらを切るつもりか』
『つもりというか事実ね』
『痴話喧嘩はさておき、ふたりとも、これからもよろしくな』
『ちょっと待ってください。【加速】ってことは、やっぱり頭いいんですか?』
『普通よりちょい上くらい』
『法魔くんの中ではね。法魔くんは魔導学校随一の魔法センスと頭脳を持ってるから、普通に天才だよ。記憶力もいいから、少なくとも馬鹿じゃないし』
『ほー』
『へー』
『ふーん』
『なんで法魔くんも混ざってるの』
うーん、そろそろ目が痛くなってきたな。
ここでお開きにするか。
『よし。それじゃあ、そろそろ勉強するか』
『そうね。スマホと睨めっこは、このへんで終わりにしましょう』
『じゃあ終わったら、なんかひとつ質問に答えてくれよな』
『いいですね、それ』
「というわけで、勉強しよう!」
オレは顔を上げて仕切る。
ダルいからさっさと終わらせるか。
それにしても、スマホをこんなに長時間も眺めたのは初めてかもな。
「よし、やろうか」
「やりましょう!」
「おー!」
◇◇◇
こうして、計3時間……じゃなかった。計1時間半の勉強会が終わる。
「みんなお疲れさま!」
「ああ。よく頑張ったぞ、おれ!」
「ワタシもよく頑張りました!」
「わたしも少し……」
「それよりも、国語の解き方のコツを教えてくれてサンキューな、真帆!」
「うん。ご褒美に頭撫でて」
「いいぞ。導魔にやるみたいにするのがいいか?」
「いや、わたしそれ知らない」
「じゃあ犬みたいにわしゃわしゃ……」
「それはやめて」
「すみません……」
睨まれたので、ついつい謝ってしまう。
でも、こっちの方がいいかな。
真帆が哀しんでるところは見たくないし。
「じゃあ導魔スタイルで撫でるぞ」
「うん」
「よくやったな!」
オレは真帆の頭に手を乗せ、横に3~4往復させたあと、ぽんぽんと手を置いてやる。
「どうだった? ……あ、大河内くんたちいるの忘れてた」
「よかった……」
「それはよかった。あと大河内くん、イチャイチャしてごめん」
「いいって! それより、すっげぇ仲良いのな!」
「ラブラブですね! 素敵です!」
「それより、質問の権利はどうする?」
「ああ、じゃあ本人が答えたくないこと以外なら答えることにしよう」
「いいですね」
「ズバリ、今石さんの男性のタイプは?」
「え? そっちに使うの?」
「えーと、人が努力してる姿って、かっこいいですよね」
「そっか! ありがとう……ございます」
「大河内くんはまだまだ堅いなぁ」
「ていうか、わたしたち関係ないよね?」
「じゃあワタシからも。大河内さんはもしファンタジーを読むならどんなのが好きですか?」
「うーん、車が出るヤツとか? でも、今石さんが好きなのならなんでもいいかな!」
「そ、そうですか……」
大河内くんのキラッと爽やかな笑顔にやられる今石。
つーか真帆の方がかわいくないか?
まあいいか。個人の好みに文句を垂れるつもりはないからな。
「じゃあ帰ろう?」
「おう! じゃ、行こうぜ!」
「おれたちもいいのか?」
「……お嬢、どうします?」
「なにそのノリ……。法魔くんの好きな方でいいよ」
「承知いたしやした。ありがたき幸せ。……真帆もいいって!」
「ははっ! なんだそりゃ」
「ファンタジーの5910」
「……なんかの暗号か?」
「それよりも早く行こう。ほら、今石さんも」
「あっ、はい!」
こうしてオレたちは、惣菜屋に寄って行く。
やっぱりコロッケはこの店じゃないとな!
昼に購買のコロッケパンを食べて、そう思った。
「おばさん、コロッケ4つ」
「はいよ」
「いつもお疲れさまです」
「ありがとねぇ。それと真帆ちゃん、友だち増えたんだねぇ」
「はい」
「この店は?」
「オレが初めてコロッケを食べた店だ」
「わたしがいつも買い食いしてるところ」
「はい。熱いから気をつけるんだよ」
「はい! ふー……ふー……」
「法魔くん、ちゃんと冷ませるようになったんだ」
「当たり前だ」
「昨日はコロッケを振ってたよねぇ」
「なになに!? 渋堂そんなことしたの?」
「ジェネレーションギャップですね……」
はぁ……人のプライベートをペラペラと……
こっちの世界は油断も隙もありゃしないな。
そう思いながらもコロッケにかぶりつく。
「いただきます。うん、美味いな!」
「うん、いつもどおり美味しいです」
「美味いです! おれも部活帰りに寄ろうかな」
「ん! 美味しいですね」
「じゃあ真帆の奢りな」
「えっ? ……まあいいか」
「いいのか? 天堂さん」
「なんかすみません」
「勉強会に付き合ってくれたし、そのお礼かな。昼のコロッケパンとカツサンドよりは安いし」
「どうもありがとねぇ」
「はい。では、また来ます」
「それじゃあね、真帆ちゃん」
「はい」
「また参ります! ごちそうさまでした!」
「「ごちそうさまでした!」」
こうして、今日もコロッケを買い食いした。
やっぱり真帆と食べると格別に美味いな。
大河内くんと今石も、オレたちのような関係になってくれたらオレはうれしい。
「じゃ、オレたちこっちだから」
「ワタシも失礼しますね」
「じゃあ、おれはこっちだから」
「ふたりともさようなら」
「また明日な、大河内くん」
「おう、また明日な!」
その後、ふたりと別れてから、真帆が朝のようにしがみついてきた。
正直言うと悪くないが、外だと少し恥ずかしい。
なので、真帆に離れてくれる方法を模索してみる。
というか、まずは普通に言うか。
「真帆? 歩きづらいんだが……」
「じゃあ【無重力】にする?」
「余計歩きづらいうえに、絶対に目立つからやめてくれ」
「帰ったらなにする?」
「それより、むこうで付き合ってるって話すかどうかだろ」
「そうだね……」
「ん? どうかしたか?」
「なんでもない……」
そう言った真帆の声は、むこうのように弱々しかった。
何をそんな不安がっているのだろう。
お前そんなキャラじゃないだろ。
うーん、わからない。
でも、むこう関連の話であることは確かなんだがな。
オレが考え込んでいると、いつの間にか家に着いていた。
「真帆、か…………鍵たのむ……」
「はいはい」
ガチャリと音が鳴り、家の扉が開かれる。
「いつもすまないな」
「いいよ別に」
こうして帰宅するオレと真帆。
だがオレは帰宅して早々、スマホをいじりはじめる。
『帰宅なう』
『おう。そういや、渋堂ってどこに住んでるんだ?』
『天堂さんと同棲してるって言ってました』
『へぇ! すげぇな』
なに普通に話してるんだよ、この裏切り眼鏡が。
内心そう思ったが、かなりマイルドな表現にして「メッセ」する。
『オレとしては秘密にして欲しかったかな……』
『『グループメッセ』なんだしいいじゃないですか』
『でも現実世界で言ったら駄目だからね』
『この中だけならいいのかよ』
真帆もかなり緩いよな。
バレたらオレ、こっちにいられなくなるんだけど。
それだけはイヤだ。
『でも内緒にするって約束したし、大丈夫なんじゃないか?』
『大河内くんがそう言うなら……』
『渋堂さん、大河内さんに甘いですね』
『ま、とにかく頑張れよ。渋堂』
『おう。じゃあオレたちは魔導世界に戻るかな』
『そうだね。それと20時~0時までは学校だから、間違ってもその時間帯に『メッセ』は送ってこないように』
『了解』
『わかりました』
ふぅ、あの裏切り眼鏡許さん。
絶対大河内くんとくっつけてやる。
……とか言ってる場合じゃなかったな。
真帆が何に不安がってるのかは知らないが、真帆はオレが守らなくちゃ。
「じゃあ行くか」
「うん。ところで、むこうでも名前で呼び合う?」
「ああ。でも心配するな、オレが全部守ってやる」
「……うん」
こうして、オレは真帆の鞄の中に触る。
さて、オレたちが付き合ったって報告したら、あっちの魔導生たちはどんな反応をするのか楽しみだ。




