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7話・伝説の薬 (ボクくん視点)

 クリスタル王国の騎士様は紋章がある鎧を装着しているが、この方は黒色の生地に赤い線が施された服を身に纏っているだけで、鎧はおろか破片すら転がっていない。


「魔を……混沌を斬り払う!!」


 一瞬だが円のような銀色の光が見えた。

 それに、今の声は間違いなく紗友里殿の声……あそこか。


『紗友里……殿?』


 ボクは…ボクは……何故いつも、いつも!肝心な時に仲間の傍にいないのか!

 防衛戦の時も最前線ではなく、宿営地で戦っていれば、もっと犠牲者を減らせたはず。今回も傷の痛みで気を失わなければ、サーシャと紗友里殿が傷つくことはなかったというのに…。


『……』


 火傷で爛れ血濡れで赤く染まった肌。

 脈拍は微弱ながら感じられるが、この出血では…。


「ボ…ク……くん?」

『紗友里殿』

「どう、したの?傷…痛いの?」

『ボクの傷は……だいじょうぶです』


 何故この状況で自分の事ではなく、ボクの心配を…。


「良かった。ねぇ、そこに落ちてるの拾って、飲ませてくれない?」

『何とも言えない色の液体ですが、これは?』

「この騎士さんが最期に…シルディア様の使用禁止された回復薬だって貰ったんだけど、体に力が入らなくて、拾うこともできなくて」


 これが例の!?それに最期に渡されたとはどういう事だ?

 いや、今はそんなことどうでもいい!

 もし、これが子供の頃に聞いた薬と同じ効能なら助かるかもしれない。


『失礼します!』

「わ、ボクくん、意外と大…ん、うぇ~、苦いなぁ」


 話で聞いたとおり、全身の傷が塞がっていっている。

 切傷は綺麗に塞がる程の効能には驚きだが、火傷の痕は残ったまま…か。


「傷が…凄い薬だね」

『紗友里殿の生命力あってこそです』

「あは、なにそれ?」

『そのままの意味です。さぁ、大介殿も心配されておられたので戻りましょう』

「わわ!ねぇ、重く…ない?」


 古の言葉に『一難去ってまた一難』というものがあるが、現状を指す言葉なのだろうか?


『……』


 回復薬は全部で三つあった。

 一つは紗友里殿が使ったから残り二本。

 これを一刻も早く大介殿に届け、サーシャにも飲ませたいが……仕方ないか。


『紗友里殿。失礼ですが一度下ろします』

「え?や、やっぱり重……きゃ!」

『失礼しました。お怪我はございませんか?』

「う、うん。優しくキャッチしてくれたおかげね。でも、何で投げたの?」

『あちらの新手の騎士様を弔うためですが、申し訳ございませんでした』


 普通の魔法使い様ならまだしも、騎士様が二人も現れるとは異常だ。

 サーシャに薬を飲ませ、紗友里殿を宿営地に運んだら、一度調査を……いや、これ以上仲間を危険に晒したくない。宿営地に接近を許したとしても、ボクが弔えばいいだけのこと。


『そういえば、紗友里殿。お洋服ですが――』

「すぅ、すぅ、ん…んぅ」


 大切なことではあるが、今起こすのは野暮というもの。

 もし替えをお持ちでないなら、一度サイズを測り作る必要がある。


『……』


 今回は幸いな事に助けられたが、火傷痕に美しかった服の大部分を焼失。

 大介殿に殴られるだけですめばよいが…。

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