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6話・心通わせる闘い (ボクくん&紗友里視点)

『※※※※。お前は母さんによく似ている』

『お父さん?』

『この刀を授けよう。その刀で母さんのように、民のために、仲間のために、多くの人達を守る戦士に育ってくれると嬉しいな。弱虫で軟弱な私ではなく、お前のお母さんのようにね?』

『……やだ!いらない!お父さんも一緒に逃げようよ!』

『すまない。この子を連れていってくれませんか?』

『やだ!離して!お父さん、お父さん!ボクを置いていかないで!!』


 ――!!


『はぁ、はぁ、はぁ』


 今のは……あの日の……夢?

 近頃は見なくなっていたが、何故に今になって…


『ぐっ!』


 チッ!寝床から起きただけで傷が開くとは、己が虚弱さには嫌気がさす。

 父上は失った右腕と左脚を木製の物で補っていたとはいえ、とても戦える体ではなかった。それでも民や仲間を守るため、この地にきた百を超える魔法使い様を一人で全て弔った。


 豪傑かつ偉大な父を血を引いてはいるが、ボクは出来損ないもいいとこだ。

 この地に住む民の不安を拭い切れず、サラ以外の同期はおろか多くの同士を死なせてしまった。父上から授けられた名も、あの日の記憶に阻まれ思い出せず、挙句に劣勢とはいえ全く無関係の別世界の住人に助力を求める始末……父上が今のボクを姿を見たら、必ずや失望するであろう。


「サーシャ様が戻られた!」

「大量の布と湯を!おい、医療班は何してる!?」


 外が騒がしい。

 サーシャが戻ってきたなら、お二人も……否、医療班?!


「そ、総隊長」

『どけ!道を開け――』


 サーシャ、なんと痛々しい姿。


「隊長…報。告し…。現在サユリさんが、、クリスタル…王国…騎士と交戦中」

『分かったから、もう喋るな』

「私は……力及ばず……ダイスケさんを……サユリ…より、伝…言を……」

『サーシャ?サーシャ。頼む、目を開けてくれ、頼むから…逝かないでくれ』


 呼吸が細く脈も弱い、何より火傷と出血が酷い。

 

『早く止血用の布を!医療班はまだ来ないのか!?』

「おーぉ、サラちゃんの傷より酷いな」

『大介殿。サラの傷を診てくれたのですか?』

「あぁ。えっと、これとこれと……これも必要だな。これ医療班の人に、さっきの部屋まで運んでくるようにと渡してくれるか」


 強いだけでなく、医療の知識もあるとは、何という方だ。

 サラの傷を治したのなら、この地で一番医療の知識に長けている。

 不躾かつ我儘になるが……。


『大介殿。足りぬ物があらば、ボクが調達してきます』

「おう。なら、まずはあの馬鹿を連れ帰ってきてくれ」

『はい。お任せください』



 ――数十分前――


 くそ!一緒なら勝てると思ったけど……慢心だった。

 それにサーシャちゃんに伝えた事も失敗だった!宿営地にも医療関係の人はいるんだろうけど、包帯の結び方や縫合の仕方がぐちゃぐちゃだった。あの傷のサーシャちゃんを置いて、先輩がここに来てしまったら、サーシャちゃんの助かる可能性が低くなる。


 なんで私は先輩やお兄ちゃんのような判断力を……あっ、ヤバ!


「くっ!ぐ……ゲホッゲホ!」


 油断した……過ぎた事を悔やむより、この強敵に集中しなきゃ。

 恐らく救援は来ないだろうから、私だけで弔うしかない。


「――ッ!」


 髪が……今のは広範囲型じゃなくて、集中型だったか!

 あの人が燃えている剣を振るうと、必ず剣を振るった軌跡上に炎が残る。それだけでも厄介なのに、炎が風に吹かれたように広がる事もあれば、広がらない時もある。


「くっ…そぉ」


 左足を踏み出してからの斬り上げは、炎を広範囲に広げるパターンが多いから近づけると思ったのに、広げなかった分、軌跡の炎の火力が上がったから近づけなかった。


「……」


 隙がない人と闘うのは始めてじゃないけど……どうしよう。

 全身で剣を振るう大振りだけど、回転したり、回転しながら後方に跳んだり、着地と瞬間に踏み込んでくると剣を振らせる前に攻めたら、その踏み込みが回転しながら後方に跳ぶためのフェイクだったりと、斬撃を躱すだけでも神経を使わされる。


 しかも、斬撃を繰り出す動きは同じでも、剣を振った時に残る炎が広範囲だったり、集中型だったりと規則性がないから、大きく距離を開けて躱す事も、紙一重で躱す判断も難しい。


『ウォオォォ』


 なになに?!耳を塞ぐほどじゃないけど、いきなり叫んだ?

 もしかして、仲間を?!


『……』


 え……なんで突然屈んで?

 ゾクッとするというか、この嫌な感覚……何をしてるのか分からないけど、このまま立っていたら危険な気がする。


「あ、づ!」


 飛んで剣を地面に刺した瞬間に、地上に花火のような長広範囲に炎が広がった。

 咄嗟に飛んで直撃は避けれたけど、火力や熱がさっきまでの比じゃない!


「くっ!」


 今度は着地した瞬間を狙った火柱を飛ばしてくるなんて…。

 さっきから避けることばかりで、全然攻められていない!そもそも、あの人自身が炎のような熱を発しているから、迂闊に近づけ……


『……』


 あれ?あの人の立ち位置と私の立ち位置……ヤバい!


『……』

「ぐ、ぅぅ」


 服が焦げてきてるせいか肌が焼けるように痛い!

 いや!どうでもいい!今は剣を振りきらせない事の方が重要だ!

 疾走で剣を受け止めれたけど、徐々に押され始めている。

 このままだと……


『紗友里ちゃん。あの力……あ~、あの才能は勝機を見出すまで使ったら駄目だよ』

『何でですか!?さっきの力を使えば、もっと沢山の、沢山の……?』

『ボーとするだろ?きみのお兄さんから聞いた話だけど、あの力は瞬間的に身体能力を大幅に上げてくれる一方で、持続力がないし、膨大なエネルギーを消費するから、奇襲向きであって戦闘向きではないんだよ』


 先輩には勝機を見出す前まで絶対に使うなって言われたけど、この剣を振らせたら炎の弧が必ず宿営地まで届く。たしかに一度解放したらリスクはあるけど……私は宿営地の人達を守りたい!!


「ぅぅ」


 人間が本来もつ力を引き出させまいとする鎖を……鍵を開けるんだ。

 頭痛や筋肉痛、眠気に神経痛がなんだ!

 どんな代償があろうと、人の命には代えられない!!


「うわぁあぁあ!」

『――‼』


 剣を弾き返せた!

 炎も弾いた衝撃で散ったから、今なら――


『ハァアァ!』

「がっ?!」


 肩に何か……これは火球!?

 そうか!さっき散らした炎を纏め、操ってぶつけてきたのか。

 ふん!今更火傷がなんだ!このまま一気に勝負をつける!


「斬!」


 初太刀は止められると思ったけど、まさか全て受け流されるなんて!

 ボクくんの刀と違って、重量がありそうな剣なのに、どうやって……


「自我がないって、絶対嘘でしょ」


 炎が邪魔で見えづらかったけど、よく見たら剣の長さと形状が変わっている。

 剣に纏わせている炎で剣の一部を溶かして、刀身を短く――回転しながら後方に高く飛び上がった!

 また、あの超広範囲の地上版花火を広げる気なんだ。


 それなら……


『――?!』

「……」


 剣を地面に刺したら首を斬られるから、受け止める方に変えるよね。

 貴方はこの地を荒廃させるために剣魔法を使うんじゃなく、私を殺すためだけに剣を振るえばいいの!


『血しぶきを撒きながら、斬り、斬られる闘い方は、随分久しぶりだなぁ』

『某も。自分を……魔法ではなく、自分の意思で心を燃やしたのは、いつぶりか』

『貴方、魔法も凄かったけど、剣術もよっぽど練習したでしょ?』

『修練は積んだが、第二、第一の先輩方やアグニ様の魔法や剣術は、某の比ではないぞ』


「――?!」

「――!」


『今……どうして、血で足を滑らせたのに、一瞬手を止めたの?』

『某の目的は狂魔病を祓うことであり、人を殺すことではない。こうして剣を交える事で心を通わせらるのは嬉しいが、同時に其方を傷つけて……申し訳なく思う』

『それは狂魔病のせいでしょ?ねぇ、狂魔病の正体って何ですか?』

『何かは不明。しかし、某は己が意思に関係なく肉体を動かし、魔法を使うようになった。その時から人間を殺せと何者かの声がずっと聴こえ続けるようになった』

『えっと……つまり、どういうことですか?』

『狂魔病とは当初、魔法使いが狂う病と言われていたが、病ではなく魔法使いの肉体、意思を制御し乗っ取る術なのかもしれない』


「……」

「……」


 炎を散らすだけでなく、体躯を崩させるとは見事。

 願わくば、もう少し語りたかったものだが……


「魔を、混沌を斬り払う!!」

「ゴ、フ」


 どう動いたのか、何をされたのか全く見えなかった。

 瞬きする間もなく、鎧もろとも全身を切り刻めるとは、見事な剣術と大した女性だ。


「ガハ!」


 あぁ、そうか、アグニ様が魔法ではなく、剣の道を選ばれたのは…


「た、しか、に……高揚……し、ますね」

「はぁ、はぁ、はぁ!」


 倒れはしたけど、まだ意識がある。

 あの人がこれ以上苦しまないように、速く弔ってあげなくちゃ。


「……」


 だめ、まだ駄目!もう少し、もう少しだけでいいから。

 あと少し、弔ってあげる、までは……絶対に……意識を……。

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