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4話・弔いの儀の前に現れた者 (紗友里視点)

 ここが宿営地かぁ。


「……」


 あれ?宿営地ってどういう意味だっけ?

 私達は野営が基本だったけど……あれ?宿営地と野営地の違いってなに?


「サユリさん。どうしたんですか?」

「ううん。なんでもないよ」


 凄く広い畑とか田んぼもあるし、簡易な家も沢山ある。

 宿営地っていうよりも、基地…村に近いかな?


「サーシャ隊長も戻られましたか」

「ご苦労様。ねぇ、隊長見なかった?」

「いろいろあって、現在兵舎でスヤァされています」

「スヤァ……うん、何となく何があったか予想できた」


 え!?何があったか全然理解できないんだけど!

 私と先輩がアイコンタクトや指でのサインで、次の行動パターンを決めるように、スヤァって単語には休む以上の秘密が隠されているのかな。


「サーシャ隊長。そちらの方々が件の?」

「うん。この人たちが例の……」


 サーシャちゃんが視線をチラチラ向けてきてる。

 私達の名前は知っているんだから、サーシャちゃんが言ってくれてもいいのに。


「大介。限りはあるが、力になれる事は全力で協力させてもらう」

「紗友里です。知識と知恵はないですけど、戦闘は任せてください」

「ダイスケ様にサユリ様ですか。隊長から話は聞いております。兵士一同感謝と歓迎を儀を行いたい所ですが、我々は同胞達の遺体を運ぶ作業がありますので……」


 ボクくんは傷の悪化を防ぐために、兵舎で休んでいるのは良いけど…。

 この人も含めて、遺体を運んでいる人達はどこかしら怪我をしている。

 遺体を放置すると病気の蔓延になるとはいえ……


「あの、私にも埋葬の手伝いをさせてくれませんか?」

「いえ!別世界から遠路遥々来て頂けたのに――」

「ほい。えっと、どこに運べばいいですか?」

「……ありがとうございます。こちらです」


 この遺体……私が片手で持てるくらい軽い。

 布で全員を覆われているから見えないけど、多分体の大部分を欠損している。

 この遺体が誰で何をしていた人なのか知らないけど、あなたが命を賭して守って世界は私達が必ず守るから、生まれ変わってきた時は平和の世界になっているように頑張るから、どうか仮眠じゃなくて、ゆっくりと熟睡してきてください。


「ここが……今夜弔いの儀をする場所です」


 ざっと見ただけだけど、絶対に百以上は越えてる。

 この遺体の数……三年前の内戦の時と左程…


「紗友里。我慢する必要はない。泣いていいんだ」

「はい……はい。全てが終わったら、もう生まれてきてもいいよって、笑顔で手を合わせたいですもんね」


 三年前の内戦を生き抜いたのだから、どうにかなると思っていた。

 弾丸だって避けれるし、斬り流せるから、魔法も変わらないと思ってた。

 でも、あの狂人共と違って、一人で世界を滅亡させる事が魔法使いたちの下にいた人達だから、個々が弱いはずがない。


「サユリさん」

「サーシャちゃん。私も戦争を経験したけど……考えが甘かったのかな」

「サユリさんが何を考えていたのか分からないですけど、悪いのは全て狂魔病でサユリさんのせいではないので、顔をあげてください」

「でも…それでも……私の魔法使いに対する認識は甘かった!」

「ねぇ。サユリさん?この場で言うのもなんだけど、とっても安心してるし、嬉しいの」

「どうして?」

「だって、強いだけじゃなくて、見ず知らずの私達の仲間のために泣いてくれてる。もし、私がここに安置されて、今のサユリさんの姿を見たら、命を賭して守ったのは無駄じゃなかったって、安心して眠れます。ここで眠るみんなも……きっと同じだと思います。ね?」

「サーシャ隊長の仰る通りです。それに、同胞の亡骸を運んで頂けただけでなく、皆のために泣いてくれた。自分は今回協力していただけたのが、お二人方で良かった安心しております」


 私は自分のやりたい事をやっただけなのに…。


「えぇ!?サユリさんは悪くないから、自分を叩く必要はないにゃ!?」

「ううん……自分に喝を入れただけ」


 めそめそしていたら、この人達は熟睡できない。

 あなた達に変わって、私達が絶対に終わらせるから。

 あなた達が命と引き換えに守ってくれたように、私も命を代償に戦うから。

 私が全て終わって手を合わせるまで、どうか…どうか熟睡したままでいてね。



 ふぅ、もう夕方か。

 物資とか負傷者を運ぶのには慣れているとはいえ、少し疲れてきたなぁ。

 途中から先輩は把握しておきたい事があるって居なくなったけど、私と違って幅広い知識を持っているから、畑とか兵力とかの確認に行ったのかな?


 それはそうと……


「ねぇ、サーシャちゃん?」

「はい。何ですか?」

「あそこで遺体に水掛けてる人いるけど、あれはなに?」

「ん~?あ、あ!忘れてたにゃ!一緒にくるにゃ!」


 えっ、え?私も水掛けられるの!?

 いや、それがこの世界での仕来たりなら、全然いいんだけど…。


「あら。サーシャちゃん。どうかしたの?」

「あ、あ…この人がこの度、私達に協力してくれるサユリさんで――」

「ふふ。落ち着いて?そう、この子が…」


 う、うわ~! すっごく美人!

 特に眼が綺麗!青い宝石がそのまま瞳になったみたいな輝きがある。


「私はヒョウカ。氷の魔術士よ。これからよろしくね」

「紗友里といいます。こちらこそよろしくお願いします」

「サユリちゃんね。ごめんなさいね?新しく入隊した子かなって気づいてはいたのだけど、弔いの儀の方を優先して、声を掛けてあげられなくて」

「いえいえ!気にしないでください。それより、何で遺体に水を掛けていたんですか?」

「そうね…。水で濡れていた方が凍らせやすいの。昔ならこのままでも良かったのだけれど、今の私は使える魔術が限られているから」


 凍らせた後に埋葬するのかな?

 あれ?でも結局は溶けるから、早々に埋めた方がいいんじゃ…。

 いやいや!私達の世界でも火葬とか土葬とか故人の思いや宗教的なことで、いろいろな弔い方があったから、弔い方に口出しは厳禁だよね。


「それじゃ、私も手伝います!」

「ありがとう。でも、サユリちゃんは何十回も往復して、この子達を運んでくれたでしょ?弔いの儀は夜にするから、それまで――」

「サーシャ隊長!!」


 あっ、ここに来てから始めてあった兵士さんだ。

 そういえば、まだ名前を聞いてなかったから、今後のために聞いておこう。

 それより、あんな慌てて……あれ?この気配……


「報告します。先程第三小隊が戻ってきました」

「え!負傷者は!?全員戻ってきたの!?」

「全員負傷していますが、命に別状はございませんが…」


 消息不明だった人達が戻ったのは良いけど、この気配はなに?

 いや、気配というより、もはや感情に近い。一番…肌を針で刺される錯覚に陥るほど、ひしひしと伝わってくるのは憎しみだけど、その中に哀しみも見え隠れしてる。


「帰路で魔法使いと遭遇したらしく、それと思われる魔法使いが現在近づいてきています」

「みんなが無事なら問題ない!それで、どこまで来てるの?」

「物見やぐらから目視できるので、三百メートル圏内です」

「報告ありがとう。私一人で迎え撃つから、みんなは門内で待機するように伝えて!」

「その件で!住人には既に避難するよう伝えたのですが、今度は自分達が我々を守ると住民が次々と武器を取り始め……」

「あー!もう!!私がすぐに弔ってくるから、住民は絶対に――わわ!」

「地面が……まさか!」


 地鳴りはしているけど、揺れたのはたったの一回。

 揺れというより、水面に波紋が広がるように、地面が波打っている。

 先輩は先輩で何かしら動いている!それなら、私がやるべき事は…


「サーシャちゃん!私も同行してもいい?」

「それは私の台詞です。どうか協力してください」

「うん、行こう!」

【本編では絶対に明かされないこと】


清水紗友里 (しみず・さゆり)


身長・154㎝

体重・4――(自主規制)

年齢・25歳

性格・明るい,前向き

好きな物・甘いもの,ぬいぐるみ,正直な人

嫌いな物・銃火器,警報音,爆音,死体,血痕,瓦礫の山,大人の事情。


高校時代は、現代文、地理、数学、英語は毎回赤点。

当時から運動神経は頭一つ抜けていたため、女子バスケ,バレーボール,陸上,水泳など、紗友里が助っ人としていった部活は必ず全国大会で優勝していたことから、卒業後は学園専属のコーチにならないかと、学校側から勧誘を受けていた。(紗友里の所属していた部活は剣道部)


しかし、紗友里はやりたい事があるからと、卒業後は警察学校に入学。

入学2ヵ月後に内戦が勃発。右頬にある傷痕は内戦の時に長年の宿敵との交戦で負った。

その後いろいろとあり……ボク君の話から希望も魅力も感じなくなった世界より、危険はあれどアルカディアへ行く事を決意して転移してきた。

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