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11話・雑談 (大介視点)

 昨晩ボクくんが言っていた… 


『ボクは剣や鎧もろとも一刀両断するスタイルなので、声が聴こえるのは一瞬でありますが、世話を掛けた、申し訳ない、()()()()()()()()と言った言葉を聴いた事があります』


 そして、転移してくる際にシルディアさんが言っていた…


『僕もキミと同じ考えだけど、その答えを出すためのヒントを得るためには、狂魔病に侵され自我を失い、人を殺すためだけに彷徨い歩く魔法使いを…魔法使いを……始末する必要がある』


 封印の儀には裏がある。

 そもそも、封印の儀は狂魔病を無くすための術だったはず。

 しかし、風韻の儀をやったのにも関わらず、何故狂魔病の魔法使いが残っているんだ?


『ダイスケくん。そんな高温だと煎じれないわよ』

「あっ!貴重な薬草を……申し訳ございません」

『いいのよ。それより、少し休憩しましょ?』


 悪い癖のせいで、初歩的なミスをしてしまった。


『あら、飲み物持ってきていたのね』

「はい。今朝サラちゃんが持たせてくれたのです」

『あらあら、若いっていいわねぇ』


 若いって、ヒョウカさんも俺達と左程変わら…


『ヒョウカ様の歳にゃ?う~ん、これはヒョウカ様に限った話ではないですけど、魔術士様は私達と違って条件を満たさぬ限り歳をとらないと、以前ライゼン様から聞いた事があります。ライゼン様が二千三百年前に魔術士になった時には、既にヒョウカ様は魔術士だったとも聞いてますので、何か分からない事はヒョウカ様に聞けば、大抵のことは教えてくれます』


 …って言っていたよな。

 封印の儀が行われたのが数百年で、ヒョウカさんがそれ以前から生きているなら、もう魔法使いを倒して解明しなくても、聞いたら分かる……って、それならこんな大事になってないわな。


『ふふ、どうした?さっきから、う~んう~んて首傾げて』

「いえ、封印の儀が行われたとき、ヒョウカさんは何してたのかと思いまして」

『ダイスケくんには言ってなかったわね。封印の儀をしたところを実際に見たわけじゃないから、封印の儀の時に何をしていたのかと聞かれても定かではないけれど、当時の私はこの大陸で魔法の才に恵まれなかった子達の入国検査をしていたわ』


 ん?封印の儀で魔法が使えなくなった者達が、この地に集ったと認識だったが、元々魔法の才能がない人達もいたのか。


 それにしても、入国検査か…。

 何故入国検査をする必要があったのかは、大体の予想はつくが。


『当時、各国が臨時で立ち上げた自警団があったのだけれど、狂魔病の拡散速度に対応できなくてね。シルディアが解決策を模索する中で、ダイアスとライゼンは狂魔病の魔法使いを始末していたわ』

「失礼ですが、シルディアさんも封印の儀には関わっていないですか?」

『関わっていないと言えば嘘になるけど……あぁ、思い出した。そう、今から五百三十二年前、シルディアが何で教えてくれなかったのって、突然乱心した日があってね。シルディアは封印の儀を行った魔法使いと親密な関係だったから、もしかしたら、あの日に封印の儀が行われたのかもね』


 ふむ、封印の儀が大体何年前に行われたのか把握できた。

 しかし、解決法として封印の儀をしたのは魔法使いで、魔術士のシルディアさんは別の解決策を模索していたのか? いや、そもそも――


「すみません。魔法使いと魔術士、具体的に何が違うのでしょうか?」

『私は魔術士だから、魔法のことはさっぱりだけど、明確に言えるのは()()と誓約を交わしているか、いないかの差ね』

「精霊……ですか?」

『そ、私達は誓約した精霊が持つ特性の力を使っているのだけれど、精霊は人見知りで誰もが誓約を持ちかけられる訳ではないから、魔法使いと違って人数も多くはなかったのよ』


 現在存命の魔術士は、ヒョウカさん、ダイアスさん、ライゼンさん。

 シルディアさんは俺達が転移した直後に亡くなってしまったし、ヒョウカさんの言い方からして、遥か昔はもっと人数が多かったのだろう。


「そういえば、封印の儀をしたのに、何故今でも狂魔病が?」

『人伝だけれど、抽選みたいなものだったそうよ』

「クジで当たりを引いた人が、魔力を奪う魔法を掛けられたとかですか?」

『むしろ逆だと思うわ。魔法を掛けてからじゃないと、当たりか外れか分からなかったらしいからね。当時、自分は魔力が無くなったけど、子供は魔法使いのまま……子供を寝かせて、自分だけ生きるのはごめんだと自殺する人が多かったのよ』


 ……………。


『あ、こんな暗い話をべらべらと――』

「いえ、狂魔病が如何にクソだって分かったので、聞けて良かったです」

『ありがとう。ふふ、一筋の雫に畏怖したのは、いつぶりかしら』


 昨晩のボク君が言っていたことや、仲間を殺されているのに魔法使い“様”と呼ぶのか違和感があったが、ようやく違和感の正体が分かった。


「い゛?!」

『圧巻の殺気だけれど、小屋が軋んでるから止めてちょうだい』

「す、すみません」


 現代を生きる者を殺してはいるが、魔法使い様も狂魔病の被害者。

 言葉からして殺したくて殺してるわけではないし、ボク君が『弔い合戦』と言っていたのは間違いではないな。


「ん?」


 あぁ、つい美味くてガブガブ飲み干しちまった。

 そういえば、サラちゃんも最期の言葉を聞いたと言っていたな。


「いろいろと聞かせて頂きありがとうございました」

『いえいえ、何かあったらいつでも聞いてちょうだい』

「ありがとうございます。では、午後の診察に行ってきます」


 サラちゃんは左腕を骨折しているが、それ以上に心の傷が深い。

 最期の言葉を聞いた事を機に、闘うのが怖くなったと言っていたから、恐らくその言葉が心を傷つけ続けているのだろう。布を巻き直すついでに、その心の傷を少しでも癒すことが出来ればいいが…。


『ふぅぅ。ふふ、若いっていいわね』

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