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白湯と温泉。時々異世界  作者: 脇汗ルージュ
湯けむりと白湯と魔法陣
7/25

王子とポロリーノと湯気の記憶後編

ゆのとレオンハルトは、かすかな記憶の断片を頼りに、過去の真相を探ることにした。


「この国の東に、“記憶の泉”って呼ばれてる場所があるんだ。失われた記憶を取り戻すことができるらしい」


「いやいや、その泉の水、白湯にして飲んじゃダメ?体に良さそうじゃない?」


「それ、完全に台無しになるやつ」


軽口を交わしながらも、ゆのの胸は少しずつ高鳴っていた。

記憶の中にいた小さな男の子。小さな指。柔らかな笑顔。


(あれが……レオンなのかも)


一方のレオンハルトも、胸に小さな違和感を抱えていた。

「なぜ、彼女の笑顔を見ると、懐かしいと感じるのか」

「なぜ、彼女の前でだけ、心が素直になるのか」


そして。


「ふたりとも~~~!ポロリーノおいてかないで~~~!!」


ゆのとレオンハルトに必死についていくポロリーノ。

何気なくぴょこぴょこ跳ねながらも、その背中にはほんのりぬくもりが宿っていた。


(……ポロリーノ、地味に癒し力高い)


泉へ向かう道すがら、ふとした拍子に、ゆのがつまずいた。

レオンハルトが咄嗟に手を伸ばし、彼女の体を受け止める。


その瞬間──。


「……思い出した」


「えっ……?」


「ゆの……君のこと、知ってる。幼い頃、僕の世界にも、一度だけ“魔法陣”が開いて……」


言葉の続きが出てこない。だけど、確信があった。


ゆのの瞳が、大きく見開かれる。


「……レオン、なの?」


「やっと……会えた」


二人の距離が、ぴたりと重なる。

長い時を越え、二つの魂が再び巡り合う瞬間。


「って、ちょっとーーーー!!おふたりさんーーー!!ポロリーノの立場ーーーー!!」


「ポロリーノはそのままでいてくれ」


「よし来い結婚式!!ご祝儀用のトリュフ探しとくから!!」


泉にたどり着く前に、すでに“記憶”は彼らを選んでいた。

白湯のようにじんわりと、体の芯に染み渡るような、やわらかな縁。


そして──彼らの物語は、新たな幕を開ける。

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