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白湯と温泉。時々異世界  作者: 脇汗ルージュ
湯けむりと白湯と魔法陣
3/25

湯けむりと白湯と魔法陣後半

「……ここ、どこ……?」


森の中に立ち尽くしたまま、ゆのは呆然とあたりを見渡した。

湿った土の匂い、ざわつく風の音、木々のざわめき。さっきまで温泉の湯船に浸かっていたとは思えないほど、五感が鮮やかに世界を感じている。


「いやいやいやいや!転んだ?夢?幻覚??」


パニック寸前のゆのの手には、しっかりと白湯入りポット。

なぜかそれだけは一緒に転送されていたらしい。


「……とりあえず、一口落ち着こう……」


ゴクリ。

白湯を一口飲んで、深呼吸。


すると、背後から「グゥ……」と重たい音がした。


「ひぃっ!? く、熊!? いや……豚!?」


振り返ると、そこには信じられない光景が広がっていた。

――しゃべる豚だった。


いや、正確に言うと、豚が口を動かし、声帯を使って、明らかに人語らしきものを発していた。


「おお、ようやく目を覚ましたか、人間の娘よ!」


「えっ!? あ、喋った!! しゃべった豚ーーー!!」


「拙者の名はポロリーノ三世!この辺りの森の支配者にして、現・王国付き豚魔導士である!」


「王国付き!? 豚で魔導士!? しかも三世って……代替わりするの!?」


「あれこれツッコむな、驚くのもそこそこにしておけ。お主には運命の使命がある」


「ええええええ!?!?」


白湯で落ち着く暇もなく、ゆのの異世界ライフは容赦なく始まっていた。



ポロリーノ三世の案内で、ゆのは森を抜け、見晴らしのいい高台に出る。

そこから見えたのは、立派な城と、その城を中心に栄える街の姿だった。


「……まるで、絵本の世界……」


石造りの建物、賑わいのある市、空を飛ぶ魔導士たちの姿。

ファンタジー作品で見たことがあるような景色が、現実としてそこに広がっていた。


「これ、夢じゃないのか……」


「夢ではない。お主は“選ばれし湯女”として、この地に召喚されたのだ」


「湯女!?」


「そう、この国では“白湯の力”は神聖なる癒しの源とされている。そしてお主の魂は、その白湯と強く共鳴している。故に……魔法適性、極めて高し!」


「ちょ、ちょっと待って!? なんか凄そうだけど、まだ気持ちが追いついてないの!」


そのとき。

市の中心を横切るように走ってきた馬車が、勢い余って転倒しかけた。


「危ない!!」


咄嗟に手を伸ばしたゆのの掌から、ぽうっと白く温かな光が溢れ出した。

次の瞬間、馬車とそれに乗っていた人々が、ふんわりと宙に浮かんだのだ。


市民たちはどよめき、すぐに拍手喝采へと変わる。


「おお……! これが、“白湯魔法”…!!」


「“白湯の乙女”、現る……!」


戸惑いながらも、ゆのは思った。

“この世界で、私にも……必要とされる場所があるのかも。”


そして、その人混みの中。

城下町の広場の階段に、金の髪に碧い瞳を持つ青年が、じっとこちらを見つめていた。


――彼の名は、レオンハルト=エルネスト王子。

ゆのが記憶を失った幼馴染だと知るのは、もう少し先の話である。


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