4.逆張りの宿命
「さっきは初心者だと思って油断してたけど、もう逃がすようなことはないわ」
姿こそ確認できていなかったが、この声は俺に「斬らして」と言ってきたあのPK(仮)…!腕はがっちりと掴まれている。とPK(仮)の装備、俺に対する初心者という言葉からわかる通り俺とPK(仮)のステータス・レベルの差は明らかだった。
俺一人の力ではこの拘束を振りほどくことはできない。ならば…
「誰か助けて!初心者狩りに襲われてます!」
他人の力を借りるしかない。だが俺の期待に反して周囲の通行人たちは誰一人としてこちらに反応を示さない。まるで俺とPK(仮)だけが世界から切り取られ孤立しているようだった。
「な、何故だ…!?」
「無駄よ、あなたの声は周りには届かない。正直私もびっくりだけどね、使えないと思っていた遮断機がこんな形で役に立つなんて。とにかくもう諦めてくれない?別に何の危害も加えないから」
なぜかその声色からは追い詰めた者の余裕ではなく、妙な緊張がにじんでいた。
遮断機?状況から見るに音を遮断するのか?くそ、ディストーションで勝利を収めたその日のうちにディストーションまがいのものにしてやられるとは…
しかし、「使えないと思っていた」か…逆張りの波動を感じる。どうせ逃げられないんだ、話を聞くぐらいはいいかもしれない。
「…わかりました。とりあえずもう逃げないので手を放してもらえますか?さすがに音が聞こえなくても、ずっと掴まれたままだとさすがに怪しく見えるので」
「あ、ごめんなさい。も、もちろん放すわよ。でもその前にこれだけは言わしてちょうだい。もしあなたがここで逃げたとしても私はあなたを追い続けることになるから。あなたもずっと追われる身なんて嫌でしょう?」
腕の拘束がほどかれる。ダメージ、なにか逃走を阻害するようなデバフを喰らったということも無く、こちらを害す意思がないということは本当のように思える。少なくとも今すぐ俺をキルしようというわけではなさそうだ。
「で何が目的なんですか?」
「その疑問に答える前にちょっと場所を移動しない?さすがにこの往来のど真ん中で長話はね…。私の工房に連れていってもいいかしら?もちろん監禁なんかしないからね」
なんか急に腰が低くなったな…本当にPKではないのかもしれない。なら「斬らして」という発言は何だったのか。
「そうですね、俺も同意見です。場所を変えましょう」
「よかった、じゃあ私の後ろについてきてね。そうだ、移動する前に名前だけは伝えておくね。私はリーズロッテ。ううん、ちょっと堅いかな?リーズって呼んでくれると嬉しいな。あなたは?」
「オーロラフォージです」
「いや、種族名じゃなくて…まぁ今の私怪しいもんね…しかたないか…」
少し拍子抜けするほど柔らかい口調だった。さっきまでの獰猛さが嘘のようだ。それに本当にオーロラフォージが名前なのだが、まぁ偽名だと思ってくれるならそれはそれでいいか。
リーズロッテとやらに従い、しばらくの間人通りの多い道を進んでいく。するとやがて木造の壁を越えて村を出る。
「オーロラフォージ君はまだゲーム初めてどれ位?あ、答えたくなかったら答えなくていいからね」
「…今日始めたばかりです。ちょうどあなたに追われたときがこのゲームを始めたタイミングでした」
「…それはごめんなさい。でもそれは嘘でしょう?これ以上は詮索するつもりはないけどできれば嘘はつかないでほしいな~」
嘘だと…?いや確かに俺は一度三か月前にログインをしていた。ニュアンスの違い程度ではあるが確かに今日が初プレイというのは噓ともいえる。
しかし何故そのことがバレた?いやただ嘘であるとだけわかったのか?遮断機を使ったという旨の発言をしていたのだ嘘発見機でもあるのか。もしくは虚言看破的な称号を持っているのか。
もしかして、リセット前の俺と面識があるのか?だが、俺に対して名前ではなく黒髪オーロラフォージのプレイヤーと呼びかけてきていたし、名前は知らない様子だった。
それにオーロラフォージと名前を伝えたがそれを偽名と思いつつも嘘だと指摘はしてこなかった。嘘ならすべてが嘘だと無条件にわかるわけではないのだろうか。だがそれでも初プレイが今日だということが何故嘘だとバレのかは依然わからない。
「すみません。確かに初プレイは今日ではないです。ですがソフトがちゃんとダウンロードできているか確認するために以前一度ログインしただけでちゃんとプレイするのは今日からなんです」
「なるほど、だから初期装備なのに…。私あなたが復帰勢だと思い込んでで、それであなたが嘘をついたなんていってしまったの。本当に申し訳ないわ」
本当にダウンロード完了の確認のために三か月前に俺がログインしていたのかは俺にもわからない。この場合は嘘と判断されて指摘されるのだろうか?もし嘘だとわかるなら彼女の助力を得れば俺が三か月前に何をしていたのかがわかるかもしれない。
「あ、いえいえそんな謝らないでください。でもなんで俺を復帰勢だと思ったんですか?」
「それはあなたの髪の長さからそうだろうなって、これ以上はちょっと長い話になるし目的地に着いてからでいいかしら?」
「髪の長さ…?まぁ、いいですよ」
彼女からの指摘はない。どんな発言に対しても一定の条件を満たせば嘘だとわかる。そういった仕掛けではないようだ。少なくとも彼女が嘘をついていなければだが。もし彼女が本当は嘘を見抜く力を持っていたとしても、それを安易に他人に明かすようではないのだから協力を得るのは難しいだろう。
「その反応やっぱ初心者ではあるのね。話は変わるんだけど、ここがどこだかわかる?」
「いえ」
「ここはあの始まりの村の敷地外にプレイヤー達によって建てられた街。意志ある者達の街。そしてあれがレゼリアの入り口である城郭門。私の工房はこの中にあるのよ。」
村を出て、たどり着いた場所。いざ中にはいってみると眼前に広がるのはファンタジーの定番、中世ヨーロッパ風の街並み。そこで多くの種族が織りなす日常の風景だった。リーズロッテさんは街と言っていたが、これはもはや巨大な城壁に囲まれた一つの都市だ。
「これをプレイヤーが建てたんですか!?」
驚きを隠せなかった。ゲームの中とはいえ、ここまでの規模の建築物がプレイヤーの手で作られたというのか?
「そう、最初は森だったこの場所を伐採開発したの。始めは小さな開拓地、天幕でほとんどのプレイヤーが寝食を共にしていた。なんせサービス開始時点では元々あの小さな村一つしかなかったのよ。そこに何千、何万というプレイヤーが一度に押し寄せたの。当然最初の頃は食料も足りない、ほとんどのプレイヤーが餓死してはリスポーンを重ねた。そして土地も物資も足りない中でNPCから奪うことを始めたプレイヤーが現れた。このままでNPCは全滅、プレイヤー達も常にデスペナルティーに苛まれることになる。ついにプレイヤーが共同して自分たちで自分たちの住処を用意する計画が上がった。それでできたのがレゼリアよ。私は最初からことの成り行きをこの目で見てきたけど、いくらゲームとはいえ一年にも満たない時間でこの規模の街が出来上がったのは正直信じられないわよね」
一人のプレイヤーが長い年月をかけて街を作るならまだしも、複数人が協力してここまでの都市を築き上げる――そんなことが、本当にオンラインゲームで可能なのか?もし事実なら、それを許容しているこのゲームの設計思想は常軌を逸している。
通常のMMOは、個人が定められたメインストーリーを辿り、その過程で他プレイヤーと一時的に協力するような“レールの敷かれた”構造を取っている。だが、このゲームではプレイヤーが街を作り、世界の在り方そのものを書き換えている。
つまりこの世界では、ゲームによって用意された筋書きさえも、プレイヤーの行動次第で意味を失う。攻略ルート、フラグ管理、イベント発生条件。そういった“ゲームの本筋”すら、もはや共通ではない。
好きな施設を建て、独自の勢力を持ち、ある者は支配を目論み、ある者は技術革新に走る。その結果として、同じゲームをプレイしているはずのプレイヤーたちが、まったく異なるシナリオを歩むことになる。
「プレイヤーによって、ゲームそのものが進化していく…」
それは言い換えれば、“既存の正解に従う”というプレイスタイルが、この世界では通用しないということだ。
たとえば、ある村でモンスター討伐のクエストを発注していたNPCがいたとしよう。しかし何らかの理由でそのNPCが死亡してしまった場合、以降そのモンスターに出会うことすらできず、当然報酬も受け取れなくなる。
さらに深刻なのは、ストーリー上重要な意味を持つモニュメント、例えば“古代王の墓”や“封印の際壇”みたいなオブジェクトでさえ、プレイヤーの手で破壊されうるという点だ。一度壊されたものは基本的に元には戻らない。少なくとも、死んだNPCが何事もなかったように復活する。そんな都合のいいリセットは、このリアリティ重視の世界観では“ご都合主義”として却下される。
実際、リーズさんも言っていた。かつてNPCが全滅しかけたことがある、と。
この世界はそういうゲームだ。プレイヤーの行動が物語を変え、時に“物語を終わらせる”ことすらある。
「そうなのよ!リタイトルズは明らかに他のゲームとは違う。もはや一つの世界になってるの」
確かに凄い。だがそれよりも懸念点が一つある。このゲーム、”本当に逆張りのしがい”があるのか?
プレイ人口が多いというのは確かに素晴らしいことだ。だが、俺にとって重要なのはそこじゃない。皆が同じ土俵に立ち、同じ条件で、同じ目標を目指す。その中で“あえて弱い・不人気なものを選ぶ”からこそ、逆張りには意味がある。
けれどこのゲームでは、どうもそうじゃない。誰かはパズルを、誰かはアクションを、誰かはリズムゲームをやっているかのように、プレイヤーごとに目指してるものも遊び方も違いすぎる。つまり、そもそも「何が強くて、何が弱いのか」という前提がプレイヤーごとに異なる。評価軸がバラバラなんだ。
そんな中で“あえてこれを選ぶ”なんて行為に、どれだけの意味がある?
俺が求めているのは「劣っているとされる選択肢で、トップ層を倒す」──そんな構図だ。でも、このゲームでは、そもそも“誰がトップ”かすらわからない。
そもそもこのゲームで、逆張りが成立するのだろうか?KENの言葉が疑わしく思えてきた。
「まぁでも、最前線の攻略はもうずっと停滞していて、ライトユーザーに限らずガチ勢も含めて多くのプレイヤーがこのゲームから離れちゃったけどね。アップデートもストーリーに関してはずっと不干渉で、「リタイトルズはもう完結した」「プレイヤーの勝手な行動のせいでフラグがたたなくなって進行不能になった」なんて言われてるし…」
どこか悲しそうに、つぶやくように彼女は言葉を漏らした。
「本当にこのゲームが好きなんですね」
「え…そう見えた?」
「そうにしか見えませんよ。いくら俺への説明だとしても熱弁が過ぎます」
「そうかな…」
彼女ははにかんだ表情で少しばかり顔を反らす。
「そうですよ」
「あ!やっと笑ったね。オラフ君」
しかしそれも束の間のこと。今度は大層うれしそうな顔で俺を見つめてくる。
「え?」
「いやずっと難しい顔してたから。どう?ちょっとはこのゲームにワクワクしてきた?」
確かに俺はずっとリーズさんをPKだと思っていたし、俺の初ログインのくだりではかなりリーズさんのことを警戒していた。せっかくゲームをしているのにそのことで悩んでゲームそのものを楽しめていなかったかもしれない。
今までの言動からリーズさんの本当の人となりが垣間見えた気がする。彼女は純粋で不器用な人に見える。もう警戒する必要もないかもな。
「いやそうじゃなくて、オラフ呼びはちょっと…絶対に色々被りますよ」
「え、ダメ?オーロラフォージじゃ長いし略称はあった方がよくない?オーロラフォージでオラフ、いいと思ったんだけどな。じゃあラフ君…はちょっとイメージと違うし…ロラフ君!オーロラフォージのロラフでどう?」
それならばオーロラフォージの省略系だというのは伝わるだろう。
「それでいいです」
「なんかまたドライになってない?」
「そんなことはないです」
「本当?っと、到着!ここが私の工房でーす。ぱんぱかぱーん!」
リーズさんが両手を揺すアピールを街の一角の建物に向けてする。その後その建物の扉を開いて俺を招き入れる。案内されたのはまさに工房という言葉がふさわしい空間だった。
壁際に並べられた大釜に机の上に置かれた大量の試験役と試薬、使い道の検討がつかないような器具もたくさんありこの街並みと科学の要素が融和した工房であった。そして何より、俺の求めていたものがそこにあった。
「私はここで錬金術を営んでいるの。これでも結構内装にはこだわってるのよ?もちろん実機能もしっかり備えてるわ」
「あの、これちょっと見てもいいですか?」
「鏡?それ魔法具でも何でもないただの鏡だけど…それでいいなら、自由に見てもらって構わないけど」
「俺こんな顔してたのか…」
このゲームを始めて数時間やっと俺は自らの姿を確認することができた。鏡に映る俺の姿は一言でいえば幼かった。
顔の面積のうち、大きく開かれた瞳が占める割合は歴戦の俺のアバターに比べて大きい。肌も曇りの一切が見られず若々しく可愛らしいといったところだ。それにお似合いの少年ほどの体格。
それでいて人間ではない。オーロラフォージだと一目でわかるのが煌々と輝く髪と瞳だった。どちらも黒色。そして髪の毛は所々が、瞳は全体が反射材のように光を反射し、そこに下地の色である黒色が映えている。黒色の輝きをまとう少年、そんな幻想的な容姿だった。
「なになに、そんなお年頃だったの?」
「いえ、以前のログインがだいぶ前だったのでどんな見た目にしたのか忘れてしまって」
「なるほどね。一応聞いておきたいんだけどその前回のログインから今までログインしていなかった理由てキャラクリに原因があったりする?」
「いや、覚えてないですけど。もしキャラクリに何か不備があったなら多分アバターを作り直してる思います。なのでそれはないんじゃないかなーと」
「良かった…」
「それって何かリーズさんの目的に関係があるんですか?」
「まぁね。さて、何から話したものか…とりあえず、私ね──ロラフ君の髪の毛が欲しいの」
「髪の毛ですか…?」
「えぇ、正確にはオーロラフォージの髪の毛がね。オーロラフォージの髪の毛は錬金術に使える素材なんだけど中々手に入らないのよこれが。それでついロング髪のロラフ君を見つけたときは我を忘れて追いかけまわしちゃったの、ごめんね」
あの「斬らして」という発言は正しくは「(髪の毛を)切らして」だったのか…
「そんでロラフ君初期装備のくせにめちゃくちゃ逃げ足速いし、挙句には壁まで登りだすんだもの。事情を説明する暇なんかなかったわ。だから恐らく初期リスに戻ってくるだろうと山をはって無理やり捕まえるしかなかったの」
なんか申し訳なかったな。いや、でも「斬らして」なんて聞こえたらふつう逃げるよな?
「オーロラフォージの髪の毛ってそんなに貴重なんですか?」
「髪の毛自体のレアリティが高いわけじゃないだけど入手方法があまりにも限定的で実質手に入らないのよ。まずね、オーロラフォージ以外にも生産業に使える素材を定期的に生み出す種族がいるの。ドラゴニアは竜鱗を、ホムンクルスはマテリアルコアをって感じで生み出すんだけどこれらはその種族のプレイヤーが多数いるから市場には溢れてる。だけどオーロラフォージは数がかなり少ないからまず市場には出回らない、欲しければオーロラフォージのプレイヤーを直接捕まえるしかないの」
確かにここまでかなり多くのプレイヤーとすれ違ってきたが、俺のように目と髪に輝きを纏った人は一人も見なかった。それだけオーロラフォージの数は少ないのだろう。
「オーロラフォージを選んだ子の前でいうのは気が引けることだけど。オーロラフォージってすごく不人気だからさ、今はもう減少の一歩をたどってるのよね。さっき最前線の攻略が停滞している言ったじゃない?そのタイミングで離れていったプレイヤーの多くがオーロラフォージだったのよ、みんなオーロラフォージのままじゃ他の種族についていけないってゲームをやめるかキャラクリをやり直してた」
「でもいくらオーロラフォージのステータスが弱くても新規プレイヤーだったり、種族は変更できないんだしそこまで極端に数が少ないだなんてあるんですか?」
少なくとも俺みたいに好んでオーロラフォージを使う層は一定数いるはずだし。
「新規プレイヤーにオーロラフォージがいることはたまにあるんだけど、それでもその数はかなり少ないの。どのリタイトルズの攻略サイトにもオーロラフォージは選ぶなと書かれてるし、オーロラフォージというだけで野良ではほとんどのプレイヤーがパーティを組んでくれないし、人がいい人ほどオーロラフォージを選んだ人に対してキャラを作り直すことを勧めてくる。それぐらいオーロラフォージの立場って弱いの」
「ならキャラクターを作り直す人に協力してもらって、本命のキャラクリする前にオーロラフォージのアバターを作ってもらって髪の毛を提供してもらうのはダメなんですか?」
「それがね…そういうことができないようなっているの。素材を生み出す種族は最初はその素材がない状態でアバターが生成されるのよ。オーロラフォージの場合は強制で坊主スタート、それが何より人気がない原因なのよね」
「でも、今俺坊主とは真反対の髪型してますよ?」
「それはキャラクリしてから時間が経ってるからよ。オーロラフォージは髪の毛が素材になる性質上髪の毛が伸びる特性を持っているの。伸びる速度は現実よりは速いけど、それでも一か月で十数cmくらい、初めてからしばらくは坊主でいなきゃいけないし、望んだ髪型にするにはもっと時間がかかる。だから尚のこと選ぶ人が少ないわ」
それで俺の初ログインが今日ではないと見抜いていたのか。となると嘘の正誤を判定できるわけではないのか。少し残念だ。
それにどうやらこのオーロラフォージという種族は俺が思っていたより遥かに不遇で冷遇されているらしい。普通のプレイヤーがオーロラフォージを選んだ上でこの話を聞いたら悪い報せだと思うだろう。だが俺にとっては違う。
これほどまでに“選ばれない”種族があるなんて…最高じゃないか。
「この話を聞いてキャラクリをやり直すかどうかはロルフ君の自由だけどその前に髪の毛を切らしてもらっていい?」
「いえ、その心配は必要ないですよ。俺は望んでオーロラフォージを選びましたしそれは今も変わりません」
「ほんと!?よかった…!」
そこまで安堵することか?俺がキャラクリし直すにしても結局いま髪の毛を切るのだから、手に入る髪の毛の量は大して変わらないはずだ。まさか俺の髪が伸びて、再び採取できるようなる数か月以上先のことを見据えてるのか?そこまで俺の代わりは現れないと?どんだけ人気ないんだオーロラフォージって。
「じゃあ、もうバッサリ切っちゃってください。長いと邪魔なので」
「その言いにくいんだけど…実は私としては一気に切るのは避けたいというか…オーロラフォージの髪の毛って保存がきかなくてね…切り取ってから24時間で輝きを失って、素材として使えなっちゃうの…もちろんロルフ君の意思が最優先だけど私としては今後必要な時にその都度少しづつ切らしてもらえたらありがたいな~なんて…もちろん報酬は弾むよ?」
なるほどそんな理由があったのか。しかしオーロラフォージの髪の毛そのものは大してレアではないといっていたのに、ここまでして欲しがる物なのか?オーロラフォージの髪の毛って。
「そういうことは先に行ってください。わかりました切り取る量はリーズさんに一任しますが髪の毛の使用はリーズさん個人に留めてください。さすがに俺一人で何人分もは用意できないので」
「いいの…!?やったー!ロルフ君ありがとう!」
「ちょっ…俺レベル1…そんな強く抱き着いたら死ぬ…うっ」
不意に全身が柔らかな体温に覆われる。リーズさんが喜びのあまりか俺に抱き着いてきた。さっきまで仮称PKだった相手とこんなことになるとは…複雑な気持ちだ。それよりも生命の危機を感じるけど…。
「ああ!ごめんなさい」
こうして開幕早々の逃走騒動は解決に至ったのだった。
種族図鑑:オーロラフォージ:髪の毛と眼球以外はヒューマンと全く同じである。身体構造が人間と異なる種族はいくつかいるがオーロラフォージはそれに当てはまらない。人間から変異する形で生まれた数少ない種族である。実は髪の毛だけでなくその瞳も貴重な素材となるが、それを試したプレイヤーは未だいない。眼球をくりぬいたとして再生するのかも定かでない。和訳した時の「極光鍛冶」が何を指すのかは判明していないが、輝く髪の毛を生み出すことを指しているのではと言われている。




