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第9章 遺伝子

  彼らが埃を嫌う理由が分かるほど通路は磨き上げられている。

床も壁も天井も真っ白で目が痛いほどだ。

目を細めながら私が向かう先は...。

黄金の派手な飾りが両開きの戸の四隅から手すりに伸び広がっている。

やけに細かい波打った紋様。

手すりは室内に頭を向けた鶏のような造形だ。


正直この扉を見て悪趣味と思わないやつはいない。

鶏の腹をガッと掴むと、中から話し声が聞こえてくる。

今は首脳会議中だ。

今回の議題は確か地下移住計画の再開について...だったか?

地下都市の拡張工事もこの6か月で犬小屋の広さしか進んでないのに

何が移住計画の再開だ。

やつらの議題など興味もないし、私の目的でもない。

やつらの口からプロジェクトDを吐かせるためには

この取っ手を握る必要がある。

私程度の一軍人が所在不明の上層部25名の前で話すためには

この首脳会議に割り込むという行為しかない。

用意した資料をまた頭の中で読み返し

ともかく開けた。その扉を。


扉の隙間が左右に広がり、扉より凝り固まった金の装飾が眼前に姿を現す。

5段ぐらいに連なったシャンデリアから垂れ下がった宝石の角が揺れた流れで

光を通し、それぞれが一瞬光る。

パノラマのように横に広がった壁面には賢者のような者の手から放たれた

光から鳥や木々が息吹を吹くような形の巨大リリーフになっている。


目線を落とすとやつらの顔が一斉に見える。

リリーフは鏡のように磨かれているせいで

豪華な背もたれとやつらの後頭部がはっきり見えた。

やはり懐疑的な目線を私に向けてくる。

まるで仲良しグループが談笑してる最中に唐突に乱入してきた嫌なやつ

みたいな顔で私を目で追ってくる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おや、我が地下連邦の英雄...どうなされたのですか?」

私から見てちょうど中央に座る人物・タラケイカがこちらに喋りかける。

タラケイカは地下連邦の実質的な権力者といった立ち場だ。

その左隣にはスミス。右にはイーグルといった配置。


周囲はざわめくこともなく、私の入室を皮切りにぴったりと声が喪失した。

「今は大事な首脳会議中です...今すぐ立ち去りなさい」

タラケイカは至って穏やかな口調だが、

こちらが本題を切り出す前に追い出されそうな態度の取り方だった。

閉め忘れていた扉を後ろ手で閉め、壁のスイッチをONにする。

すると天井にしまわれた投影機と真っ白なスクリーンが降ろされた。

早足で円卓へ。

手にしたファイルを切り分けられた扇状の机に乗せる。

「とっておきの議題があるので皆さんにお持ちしたんですよ」

皮肉たっぷりに言ってみせた。



「アル副隊長!君にはあの兵器について調べて欲しいと

 指示したんだ...ここで小話をしている場合じゃないぞ!」

スミスが私にそう言ってくるのを横耳で流し、胸ポケットから取り出した

薬指サイズのシリアルパス式メモリを机にある接続口に差す。

「今回はスミス事務総長が私に調査を依頼した

 人型兵器・”ドミナンス”について話して頂きますよ」


うんともすんとも言わない一同。

それどころか机上で手を組んでいるやつは指の先端すら動かない。

スミスただ一人はこれから私が何をやらかすのやらと目を泳がせ

こちらに熱い視線を向けている。


相手に問い正す際はまずは下地の話が大事だ。

二つ折りのファイルを開き、中にあるディスプレイで投影機を操作する。


「2週間ほど前に初めて地下連邦軍は謎の四足歩行の人型兵器を

 確認し、地下都市の一部とノアの箱の一つエリア4が損害を被りました」

私はこれまでのことを振り返りながら

階段を一段一段ていねいに登るように話し始めた...が。

「それで本題は?」

「君が話す猶予はこちらが決める」

「話を聞いてやってるのに前置きがふてぶてしいぞ!」

タラケイカと他数人が私に意見する。

いや、こんな文言は難癖だ。いちゃもんなぞ言いやがってこのカスが。

自分自身の額の血管を浮かび上がらせながらも

私がせっせと用意した資料を飛ばし、ある画面を見せた。


それは現状のドミナンス01を取り込み、3Dモデルに落とし込んだもの。

実物のように膝を折って真下を見つめる猫背の姿勢がスクリーンに映った。

疲れ果てた姿を囲むように写真と照合データが

3Dのドミナンスの各所に散らばり、

照合データで壁一面の画面が埋まりそうなぐらいに展開された。


「これは今回の一件で私が回収した機体の各部の解析結果です」

「この人型兵器にはケーブル状の関節以外の箇所に300パーツほどで構成

 されているようですが、このパーツすべてが現在の連邦規格と合致します」


私はここで一旦話を止め、次の資料を出す。



 地上の工業用ノアの箱は完全に放棄され、手つかずのまま。

地上ではドミナンスを建造する設備も技術もない。

それは地下都市の人々が周知していること。

そして以前見たECMポッドの他にもバッテリーやセンサー類、端子

それらの材質さえもが5年前に地下連邦で定められた新しい規格品ばかり。

とどめに地下連邦の刻印が0.007mmで刻印されていた。

...これらの事実を見て、”ドミナンスと地下都市、地下連邦に関連はない”

と言えるのだろうか。いいや、言える筈がない。


「この兵器の用途は回収した1機のデータに入ってました

 ...”人型で威圧しながらレーザー砲で地上の人々を焼き鎮圧”...だとか」


その場で声を発していたのは私だけだ。

静まり返った会議室には無が広がっている。

左端から右端へ目配せし、反応を探っていく。

柔らかい椅子の上で据わった目をしやがって...やつら何を思ってそんな

とげとげしい眼を私に向けるのか。


「確かにこの地下都市は地上よりは潤沢かもしれないが、

 こんな人型兵器を作る余裕なんてない!メリットなんてないぞ!」

スミスが椅子を勢いではじき倒し、立ち上がった。

「我々は地下都市の繁栄に努めているはずだ!

 それなのにアル副隊長はこの中の誰かがこれに関わったと詰めるんだな」


スミスは都市の人民よりよっぽどこの場の人間を信じているのだろう。

その願いか信頼かがこの大きな部屋に大きく響いた。


「タラケイカ氏!皆さん異議はないのですか!?」

スミスの汗が円卓に飛び散る。

膨らんだ水の粒が私の距離からでもしっかり見えた。


「確かにそれ...いやドミナンスシリーズを建造したのは我々上層部だ」

タラケイカは淀むことなく認めたので私は驚いた。

スミスが私の倍以上驚いている様子を見て、私自身を客観視することで

平静さを保った。

「...その事実がどうしたというのですか?アル・イネス」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


この場に居る人間には周知というか、

”そういえば~そんなことしたなぁ~”という

安心しか知らない10代後半の学生が記憶の断片を漏らす腑抜けた雰囲気だ。

視界に捉えられたスミスは比喩なしに空いた口が塞がらないようす。


「さきほど君は人を焼いて鎮圧とか言っていたが、実際は少し違う

 低出力レーザーを対象に浴びせ身体機能を無効化して鎮圧する兵器だ」

右側のブロンズの髭面坊主が訂正を加えた。

そのいらない補足に私は下唇を咬む。


悪びれもなくよくぬけぬけと”身体機能を無効化”など言えるな。

私は車いすに乗るじじいが必死に小石だらけの道を自力で進む様子を見たことがある。

お前たちはその後ろ姿を見たことがあるのか?

お前たちの知る地下都市は土の天井を支える長大なビルとそのビル街だろう。

しかしそれは今の地下都市の面積2割にも満たない。

残り5割が農業・工業地帯、残り3割はスラムだ。

ろくに整備されていないスラム街に車いすのじじいなどなどを押しやってるから

そんなことを言えるのだろうが!

その私の問答に彼らは全員首を縦に振った。

「ともかく!この人形は地上の人を殺すために作ったんだな!」

イラつきで丁寧語が抜け落ちてしまう。


「な、なぜそんなことを...?」

やっと口の硬直をほぐしたスミスが恐る恐る聞く。


「これ以上地上から地下への移住を進めると我々の生活水準に影響が出る」

「我々が順風に統治するためには必要なことだ」

「君や人が食すレーションは我々の口には合わんからな」


有象無象。

自分たちの贅沢のために不要な人間を消す...

そんなことが許されていいのだろうか。以前から信用できないとは思っていたが、

さすがにここまでとは思いもしなかった。

言いたい放題の状況にスミスは膝を床に落とし、私から隠れてしまった。

まぁいい、ささやかな希望を見出すためにここに来たわけではない。


「ここの一同がプロジェクトDに関わったことを認めるということだな?」

「そうとも」

「じゃあ聞かせて貰おうか...

 この計画で作った二つのAI”RE(アールイー)”について」

REという単語を発した途端

私を囲んだやつらがそれぞれ顔を合わせて内緒話をし始める。

急に眉を八の字に下げ、手をばたつかせる。

動かない時も動く時も全員一緒に行動するスイッチなぞがあるような挙動。

タラケイカも顎に手を当てて、何のことかと考えているようだ。

知らない...のか?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


フンセンが言っていた。

ドミナンスを動かすうえでAIの操作は必要不可欠らしい。

コックピット内のヘッドギアで脳波を読み取って操縦するようだが、

フンセンは基本的に単純な「歩く」ことを連想するだけで

あの巨大な人形を歩かせることができるという。

簡単な連想で行動を写すためには

ヒト人格を模したAIを介して思考を大量の制御へ”変換”しないといけない。

私もコックピットを見たから解る。

ほとんど席とモニターだけの空間であれだけのものを制御するのは不可能だ。


実戦投入されているのに誰も運用に関わってないのか?

私は前提を掴むために問い正した。

「ドミナンス03が実戦投入されていることはお前ら知っているのか?」

その場で首が横に振られた。

「3号機はまだ未完成と聞いたが...?」

タラケイカは静かにそう言う。

「そんなはずはない!03によって地下都市の刑務所が破壊されたんだぞ!」

私は声を荒げた。

さっきの前置きも跳ね返されてしまったしな。

...待て。

ま、まさか...こいつら...

「報告に上がってないぞ」

刑務所が補修されず放置されていたことと、この発言を頭の中で結びつける。

文字しか読めない猿なんだろう。ため息を喉に滞留させ、こらえよう。

こいつらの仕事への向き合い方はともかく

このままでは3号機の目的は掴めない。

REはここで開発されたAIプログラムであることには間違いない。

AIに上層部がどんな指令をくだしているのか知れれば、赤い人形を止められる。

と安易は希望的観測に任せて首脳会議に乗り込んでしまっていた私自身を客観視した。


「REがどうしたというんだアルくん」

そう言って立ち上がったのは...あの男。

イーグルだ。

その場にある目がイーグルに集中する。

"RE"という単語が奴の口から出たのだ。

私は必死にその撒き餌に食いついていく。

「単刀直入に聞く...REは何の目的で動いている?」

「目的?」

イーグルは柔らかい椅子に腰掛けたまま

疑問に爪を立てる。


「そうだ...REがプログラムであるなら

地下連邦上層部の欲に沿った目的がプログラミングされ、

その指示のプログラムに基づいて活動している筈だ」


「それなのにREが搭載された3号機は

 友軍である筈の1号機やファントムも攻撃している」

画面に映された俯いたドミナンスの3Dモデルに1本の指で指し示す。

更に分割した画面の右側に強化型の03に殺された彼らと残骸の写真を掲示。

ここぞとばかりに刑務所の写真も出す。

記録してあった3号機の写真も放出する。

イーグル以外の人相がますます歪んでいく。

「...これはお前たちの意図していることなのか?」


「AI搭載案は有人式を採用した際に撤去された!

 3号機のパイロットは誰か!...存じ無いのか!?」

タラケイカが呼びかける。

主語が歯抜けになっていて、どういう発言か分からないが...

「パイロットなんていないぞ!生体反応がしっかり”無かった”からな!」

私は有人であることをきっぱりと否定する。


猿のように騒ぎ出す会議室。

その中イーグルが図太く通る声で私に言った。

「君は3号機をどうしたいんだ?」

「3号機を破壊し、奴の目的を止める」

ジーンが話してくれた内容を思い出した。

こいつだ...

「諦めたまえREは止められないぞ」

厳しい修行に耐え抜いた僧侶のように座った目。

いや、一片に期待のまなざしを感じる。

僅かな期待はどこへ向けられているのか分からない。

「簡単に諦めるほど度胸はない

 ...教えろREはどこにいる?確実にREを”殺して”やる」

あえて殺すという動詞を使ってみたが

小声でさえずる上層部をはねのけるほどの声量が次に響いた。


「私の”息子”を殺す!?ふざけた口を開くな!!」


息子...

確かにそう言ったようだ。

やはりジーンが教えてくれたことに間違いはなかったようだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「息子?どういうことだ!?」

スミスが投げかける。

「貴様らの下らないドミナンスと人型兵器用AI開発チーム

 それらを私の”子供たちの蘇生”に利用させて貰った!」

蘇生という単語に強く違和感を感じたが

やつに白状することを続けさせた。

イーグル、私のほかは唐突なイーグルの子供の話が降下したため

発言できず静かに佇むしかできないようだ。


「一部を除き、ここに居る者は皆第8次の大戦を経た」

イーグルの昔話が始まる。

スミスが私に判断を仰いできていたのを仕草で静止させた。

「アル・イネス、君も分かるだろう大切な人物を失うということを」

奴は私に同意を得ようとするが

私に応じられない同意に私は感情を隠した。


「”あの決断”はこいつらが勝手に始め、勝手に終わらせたのだ」

「私は第8次で妻を失った...

 妻のお腹には双子の命が宿っていた...」


しんみりとした空気は流れない。

私は敵意を、周囲は疑問しかないからだ。

悪意がなくとも”あの決断”に加担した身として

ただ敵意を抱くだけでは駄目なことは解っているが、今大事なのはRE。

この心情を崩さず、同情に消されないように話を聞く。


「私はな、核で妻のフォーラを失ったころに解せなかった」

「フォーラの膨らんだ遺体から我が子を取り出した

 僅かな希望を賭け、無我夢中に...だが勿論二人とも死んでいた」


イーグルは自然と

無意味な切開で妻の赤で染まった手の平を今ある手に重ねるかのように、

イーグルは自身で持ち上げた手のひらを見つめていた。


「切開した子供を連れ帰ったその日、われら上層部だけの秘密会談があった

   ...そこで話されたのが地上人駆逐の計画”プロジェクトD”だったのだ」


「待て!イーグル貴様!地上から毒を持ち込んだのか!?」

上層部の一人が連れ帰った発言を見逃さないよう

椅子と円卓を派手に叩き、立ち上がる。

...やはりこいつらの一番の着弾点はそこか。


「ドレイジュ...人の子を”毒”などと言うなあぁぁぁィ!!!!!」


激昂した手から繰り出された銀色に光る拳銃が。

正面から左側へ。

弾丸がドレイジュなる人物の肩に撃ち込まれ、その男は悶えた。

悶えた拍子で腰を落とし、尻をつく。

その怒りようにこわばった連中が席を離れ、会議室の壁に身を委ねている。

ドレイジュという男の周りからは左側の全員が3メートル以上距離を空けた。

イーグルは凶器を円卓に丁寧に置く。

「貴様らのドミナンス用AI開発を任された私はこの計画を利用した」


「デジタル上で我が子を蘇生できると考えたからだ...

 それがこの私がひそかに進めていた”REプロジェクト”なのだ!」


「まさかあなたの子供の遺伝子情報をAIに使ったのか」

スミスが口を開いた。

意外だった。あんなに冷静を欠いていたと思っていたのに、吹き出る汗は

いつの間にか消えていた。

イーグルが”そうだ”と頷くと彼は大きく息を吐く。


「私の息子・レイモンドと娘・レイチェル!

 デジタルとドミナンスという巨大な器で蘇った!私の目的は果せたのだ!」


レイモンド・イーグルとレイチェル・イーグル...

REプロジェクトは恐らく|resuscitation《蘇生》の頭文字2つと

子供たちの名前から取ったのだろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 私は前にこんな話を聞いたことがあった。

”人工知能に感情を持たせるのは難しい”と。

そんな話で例として出されていたのが人と椅子だった。

人は座るために椅子を作るが、椅子には様々な形が存在する。木製のもの、

車輪がついた金属製のもの、革など使い座り心地を良くした椅子、背もたれがないもの、椅子の脚が1本のもの、背もたれがないもの...


人は瞬時にそれらを椅子と捉えることができる。しかし人工知能にはすべてが

果たして”椅子”なのか精査する必要がある。

何故なら人工知能は座ったことがないし、座りたい気持ちを知らない。

なんだったら椅子という製品がなくとも丁度良い高さの石を”椅子”と捉えて

座る行動をすることだってある。

”座りたい、座ろうとなったときに椅子は初めて実在する”

とか書かれていたと思う。


では人工知能に座りたいという感情や椅子という概念を解らせるために

どうするべきか。答えは載っていた。

...人とほぼ同一の体を与えて生活させる。



「ふざけやがって!そんなのは蘇生などではない!」


「いいや蘇生だ!だとしたらAIにあんな感情や意思は宿らない!!

 私が証明したのだ!人と同じ体を与え、育てたのだ!!あれは私の子だ!」


イーグルが誰かと言い争う声が聞こえる。

イーグルは我が子が完全に復活したと思い込んでいるのだ。

「ともかく!イーグル長官!

 あなたが人型兵器開発の裏でそれをやっていたのは今把握した!!」

スミスが天井を裂くような声で止めに入った。


「一つ答えて貰う!」

「...何故今になってそのお子さんの話を始めたんです!?」

スミスは真っすぐイーグルを見つめる。

するとイーグルは不吉で不気味な笑いで頬を膨らませた。


「今日のこの日が我が子と未来へ旅発つ契機の日だからだ」

私含めた大きな室内が困惑する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おい、お話は済んだろお前に”目的”を話して貰うぞ」

私はその歪んだ笑顔を無視して聞く。

「アル!イーグル長官の目的はもう果たされているはずだ!?」


「スミス!私がこいつから聞かなきゃいけないのは

 レイモンド・イーグルなるものが何をしようとしているかだ!」


「レイモンドがやりたいことを叶え、共に暮らしたいだけさ」

イーグルは余裕そうだ。


「そのREがやりたいと言っていることは!?」


「この地球を改修した3号機で焼くことだ

 高出力レーザーで地球をマグマ・オーシャン化させる」


マグマ・オーシャン。

地球の衛星の月の誕生が巨大衝突説によるものだという学説で出てきた名前だ。

巨大な隕石が地球に衝突した際に発生した熱が留まり

地球表面の岩石を溶かし、全面がマグマになった状態のことだ。

そこから多数の隕石の衝突と炭素質コンドライトの衝突で今の地球の原点の

”生物が生きれる環境”になったという...


「マグマ・オーシャン化して何をするつもりだ!?」

「”地球をやり直す”のだ

 生命のある地球と生物進化の過程を見たいというのが我が息子の夢だ」


地球をやり直す。

元からAIのREからしたら問題のあるコンピュータから

削除や修正を行ってから再起動するような気軽さなのかもしれない...

しかしそんな興味心だけで根絶やしは私は拒絶する。

そんな無邪気な破壊にこれ以上奪わせるわけにはいかないぞ。


「そんなことは出来る筈がない!」

スミスが反論する。

「アルくんが撮った強化型の3号機を君も見ただろう?

 あの強化パーツには地球の表面をマグマ化する力を3号機に与えたのだ」


「地球はあなたの子供が好きに遊んでいい箱庭ではない!!」

スミスが怒りをあらわにする。

私はスミスが上層部の金魚の糞と思っていた。

しかしその考えを改めようと心中に決めた。


「地獄から蘇った私の息子だぞ!?地球の一つぐらい捧げてやる!!」


会議室が揺れる!

強い揺れに立っていたやつらが均衡を失って、バタバタと床へ倒れていく。

「くそっ!なんだ!?」

窓がないこの部屋では何が起こっているのか緊張に拍車がかかる。

地震ではない。この建物が揺れていることだけ分かった。


「来たか!レイモンドの迎えが!」


イーグルは喜々としている。

出口の確保のために私は出入口に走り寄り、大扉が閉まらないよう押さえる。

揺れが収まらない。

REかREが寄越した刺客だろう...

この会議室は地下都市内の標高でかなり高い位置だ。

すぐには迎撃できない...

フンセン、都市(まち)はまずあんたに任せるしかなさそうだ...!頼むぞ...!


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