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22話 そうだ! ロッキュー!

「しっかりしろ! ヤスくぅん!」

「ヤスぅ! 一体どうしたんだぁ!? ぼ、ぼろぼろじゃねーかぁ!」

「誰だ! 誰にやられ――」


 今俺の腕の中には半分白目向いてるヤス君。

 この子の仲間であろう二人の少年と懸命に呼びかけてたら。


「「お前誰!?」」


 随分と薄情な問いがぶん投げられた。

 こっちはヤンキーの仲間意識的なのを垣間見て、共感性なんちゃらでグっと来てんのに。

 寂しい。


「バカ野郎!」

「「!」」


 だから俺はそのまんまのノリで走ることにした。


「俺が誰かって? 今大事なのはそんな事なのか? 目の前にダチが血ぃ流して倒れてる。俺たちが今すべきことは何だぁ!?」

「「!?」」


 つって、医療品が詰まったバックパックをヤンキーの一人に突きつけた。

 え、なにこの子。袖から紐いっぱい出てるけど……往年のロックスターの袖についてるフリフリみたい。

 ロッキューって呼ぼう。てか顔怖っ。


「あ、ああ。そうだ! まず手当てしてやんねぇと!」

「そうだ! ロッキュー!」

「ロッ……? まあいい。おい! おまわりはいい、お前も手伝え!」


 おまわり?


「わ。おまわりさんじゃん」


 ヤス君の治療に集中しだした二人を尻目に、床へと放り出された人影に寄ってみたら、探し人のおまわりさんじゃん。

 まぁ、ヤス君がここに居るっていうから来たんだけど。


「やたら薄暗いからわかんなかった。大丈……うわ。足いってそうだなこれぇ」


 あのへんな力で骨折ったとか言ってたもんなぁ。


「うーん。何か添え木になりそうな……」


 包帯はあるとして、何か棒状のないかな。


「しっかし暗いな。この――」


 おまわりさんから離れて、くっらい室内を進んだらまた誰かの人影。

 ……え? いやいやいやいや、まじか。


「救井君」

「ど、どうして。あなたがここに……?」


 頭の上で両手首が縛られ……てるだけじゃないな。

 両足も紐が絡まってるっぽい。

 シャツは裂かれて辛うじて首元で繋がってるけど、危うい感じで胸元は露わになっちゃってる。


「えーと……こ、これ、間に合ってないのかな」

「ぁ。み、見ないでください。た、多分ギリギリのところで、です」


 うーん。

 泣いてたっぽいけど、本人がセーフと言うならセーフなんだろう。

 とりあえず目のやり場に困るから……


「紐。取ろっか。ちょっとごめんだけど、足の奴から外すね」

「え? で、でもこれ。そこに居る獄門の力で。すごく頑――」


 うわ、なんだこれ。

 結んでないのに肌に食い込んで。生き物みたいで気持悪っ!


「……柔らか」

「え、え、え? そんな、裂けるチーズみたいに簡単に……? いくら力入れてもびくともしなかったのに、柔らかいって……」


 あ。柔らかいってのは、食い込んだ紐を外す時に触れた救井君のフトモモ。

 女の子って聞いたら意識しちゃうんだから現金なもんだよね。

 ちらっと見上げりゃ、意外なほど壮観な半球が見えるし。役得役得。


「ほい。これで全部」

「あ、ありがとうございます」


 両手足が解放された救井君。

 当然胸を庇いながらの立ち居振る舞い。なんか余計に目の毒感が強まっちゃった気がする。

 不思議だね。


「貸してあげられる服は……無いから、包帯でなんとかなるかな?」

「え。あの……」


 メンズである俺がシャツ脱いで貸してあげればとも思うけど、昨今はメンズでもトップレス嫌がる人いるだろうし。多方面に配慮しないとね。別に俺はどうでもいいんだけど。


「まぁまぁまぁ、ちょうどいいや。おまわりさんも治療してあげなきゃだしね」


 ヤス君を治療してる二人からもらってくるか。

 元々俺の持ち物だけど。


「救井君。あのロッキューの名前知ってる?」

「え? ロ、キュ……?」

「あそこで医療行為してる、袖からワラワラを垂らしてる人。顔いかついの」


 まだ二回しか口にしてないけど、ロッキューの馴染みの無さ半端じゃないからね。

 この愛称は早々にリストラですよ。


「……獄門、です」

「カッコよくね? 苗字?」

「苗字です」


 ヒールに生まれるべくして生まれたって感じの性背負ってんじゃん。

 俺なんか『下句』ぞ? 上句はどうしたんだっつって。


「おーい。獄門君」

「あ? ああ、あんたか……って、なんでオレの名前知って――」


 ヤス君に集中してこっち向いてくれなさそうだったけど、何か引っかかったみたいでこっち見てくれた。


「さっき渡したリュックに包帯一杯入ってるから取って」

「救井!? なんで、動け……!?」


 俺と救井君を視線が行ったり来たり。


「ご、獄門! ヤスが、ヤスが何か言ってるぞ!」

「! ヤス! どうした!?」

「――ら、れだ……ぞ、いづ」


 おお。ヤス君ちゃんと意識が戻ったのか。

 二人に治療してもらってたっても、ただ傷薬ぶっかけてただけだったから気合で目が覚めたんだろうな。


「やら、れた? 誰だ!? 誰に――」

「ぞい、づ……! ぞの、野郎に、やら、れだ!」

「「……」」


 あれ。

 この感じ……


「……言ってなかったっけ?」

「てめぇ……いったいどういうつもりなんだ!?」


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