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20話 ダウトダウトダウト

「この学校の生徒ね」

「そ、そっス」


 悶絶してるあんちゃんを後ろ手に縛ってやるとすっかり大人しくなって、こっちの質問に答えるボットにクラスアップしちゃった。

 ちなみに名前はヤス君。聞いても無いのになんか勝手に名乗った。

 お近づきになりたくはないので呼ぶことは無いけど。


「三日前、おれら野球部で、部室でたむろしてたんす」

「祝日だったよね?」

「色々悪いことすんのに、意外と部室が盲点なんすよ」

「ふーん」


 タバコ吸ったりとかそんなんか?

 わざわざ校内でやる必要なくない?


「で、外が騒がしいのに気が付いて。見に行ったら化け物だらけで……」

「あれビビったよねー」

「はい……ラノベかよ、って」


 お。

 ヤンキーの口から意外なワード。


「そしたら、今度は自分たちも変な力に目覚めたっぽくて……」

「君のなんか投げるやつなんなん?」

「多分、衝撃波的なやつかと……」


 自分の事なのに漠然としてんなぁ。

 救井君も自分の力を把握しきれてない感じだったし、よくある頭の中に使い方が流れてくる的な親切設計じゃないのかも。

 俺はパンピーだから知らんけど。


「んで、化け物たちともタイマン張れるってわかって。調子んのってぶっ殺しまくったりしてたんす」

「メンタルすごいね」


 俺なんかスライムでおたおたしてたのに。

 特別な力に目覚めっと、気も大きくなるのかな?


「三日間で学校の周りはあらかた倒し終わって……」

「ほんとにすごいね!?」


 体育館がずっと無事だったのってそういうこと?

 避難組は外に出ようともしなかったのに。

 まぁ、年齢層高めの集団だからしゃあないけど。

 頼みの綱の若手はお巡りさん一人と、女性陣三人。性犯罪者扱いの俺だけだもんなぁ。


「……」

「? あ、あの。急に黙ってどうしたんですか?」

「飴ちゃん食べる?」


 急に自分が惨めになって。

 何とか自尊心を守るため、ヤス君に飴ちゃんを進呈し、精神的なマウントを取った。


「そんで? 怪物やっつけた後は?」

「今までずっと食べ物とか取りに部室と校舎の行ったり来たりか、校庭に出てくる化け物を倒すかだけだったんで。一度校内から出て、遠出してみるか。ってなって……」

「体育館とか見に行ったりしなかったん?」

「え? こんな時に体育館いっても仕方ないかなって……バスケとかやってる場合でもないし」


 こういう時だから行くんだけどなぁ。

 大体、学校の体育館なんて地域の避難場所に指定されてんだから。

 流石ヤンキー(偏見)。


「で。本格的に外に出る前に物資を集めようってことで、手分けして学校中を物色してたんす」

「なるほどね~。したら、窓ガラスが割れてるのを見かけて調べてた的な」


 なんだ。

 案外そう悪い奴でもなさそうな雰囲気じゃん。

 この子とその仲間たちのおかげで、体育館が化け物に襲われてなかったみたいなところあるっぽいし。


「はいっす。拉致った救井が目ぇ覚ますまで暇だったんで――」

「ダウトダウトダウト」


 無し無し。

 前言撤回。


「拉致ったって。やっぱこの子だよね?」

「あ。俺のスマホ――」

「終わったら返すよ」

「……そス。朝早く警官が来て、俺のダチで大の警察嫌いが居たから、そいつに言われて警官ボコして……」


 うわ怖。

 外に化け物がうろついてるこの非常時に、おまわりさんに助けを求めるわけでもなく手出すって。

 可愛げ無っ!


「その後、しばらくしたら救井が来て」

「そういやなんであの子の名前知ってんの?」

「うちの学校じゃ有名人すよ。上玉で。まぁ、オレは爆乳派なんで、ツレの癒仕の方がタイプっすけど」


 あーね。

 あの二人もここの生徒なんか。


「うーん……確かに二人ともかわいいけど。癒仕さんもおっきいし」

「あん……なたは、あいつら知ってるんすか? 卒業生……?」

「一応聞くけど。なんで救井君のこと拉致ったの?」


 もしかしたらヤンキー独自の言葉のあやってやつかもしれん。

 拉致(ほご)かもしれん。


「そりゃあ……わかるでしょ? そっちも紹介してとか言ったし……そういう下心」

「だよねぇ」


 これはもう、手遅れなんかなぁ……まだ急いで探しといたほうが良いのかなぁ。

 でもそれにはなぁ……


「ちなみに、俺に襲い掛かったのはなんで?」

「警察嫌いのダチが、他にサツ見かけたら同じ目に合わせてやれって。ちがったみたいすけど……」


 うーん、これですよ。

 まぁ、いっか。しょうがない。

 この天秤はしょうがない。


「えーっとね……」

「え? なんす――がは!」


 うわ痛い。

 少しつま先で鼻先小突いたくらいだけど、血ぃ出ちゃった。


「あ、ご、ゴメン。力加減ミスった」

「は……歯、がが」


 鼻先小突けてなかった!

 鼻下の前歯いっちゃった!


「あわわわ。マジゴメン。わざとじゃなくて、鼻狙ったんだけど……」

「ひぃ!?」

「で、でもほら!鼻の骨的なもの折れたら、息苦しそうだし結果オーライで、ね?」


 まぁまぁまぁ、ちょっと間違いはあったけど。

 気を取り直して。


「あの、わかるでしょ? 向いてないんだってこういう感じに痛めつけるの」

「? ? ?」


 え。どうしよう、この子全然堪えてない?

 こ、これがパンピーとヤンキーの覚悟の違いってやつか。


「ほら、こうさ……察してよ。脅すとか得意じゃないんだから」

「あ、ひ……す、ずんません。急に、襲い掛かったりして――ぶ!」


 ほっ。

 よかった。今度は狙い通り鼻に入った。

 でも、中々口を割ってはくれない……


「ちょ、た、頼むよマジで……」

「~~ッ!? っ!?」


 これは……


「な、長丁場になりそうだなぁ……」

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