表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/24

18話 ってなんじゃぁ!?

「上の階っぽかったな」


 校舎中が静まり返ってるからよく聞こえた。

 中に入る前に見たけど、この学校は全部で3階。

 何階で音が鳴ったかは知らんけど、上なのは間違いないと思う。


「ひぇ~……存在仄めかさないでよぉ……」


 いくら静かったって、多少の物音なら聞こえないだろうから、人為的なもんの可能性が高いじゃん。


「人ならまだいいけど……」


 救井君達であってほしい。

 もし外に居た化け物の類だったらマジ勘弁してほしい。

 広くて開放的な屋外ならまだしも、隠れられるところだらけの室内じゃもう、心臓が持たん。


「あーもう、一気にホラゲーになったじゃん」


 この保健室から出たくなくなっちゃったな。

 絶対セーフティールームでしょ、ここ。

 扉壊しちゃったけど。


「……まぁ、狭い屋内のが、かえって立ち回りやすいか」


 こちとらパルクーラーぞ?

 つま先でもひっかけられれば、くるりんぱで逃げおおせてやるわ。


「よし、いくぞー」


 まってろ、新聞記者のおねーさ……じゃなくて、救井君。と、おまわりさん。


「扉。このまんまでいっか」


 なんせ緊急事態だかんね。お咎めなしでお願いします。


「階段どっちだろ――」


 保健室出て右行くか左行くか悩んでたら。


「ってびっくりした!」

「!」


 長々と続く廊下、窓ガラスが飛び散った場所にしゃがみ込む人物発見。


「え。窓破って入ってきたん……?」


 今探している救井君でもない、おまわりさんでもない誰かに、思わず鉈を持つ手が上がる。


「……あ。それやったん俺か」


 廊下を見渡してもガラスが飛び散ってるのは一箇所だけだから、当然不慮の事故でダイブした俺の仕業ってわけだ。


「あの~。体育館に避難してた方ですかぁ?」

「……」


 若いな。

 あの年齢層の高い体育館では見かけなかったと思うけど。


「どこかでおまわりさん見かけませんでしたかぁ?」


 両手を頭の高さまで上げて、無害ですよアピールしながらソロリソロリと寄ってく。

 あ、鉈持ったままじゃん。

 俺今相当怪しい奴になってるんじゃ……


「お」


 見知らぬ人が立ち上がった。やっぱ若い。

 男……だよね? 救井君みたいにジェンダーサプライズ潜んでないよね?


「あの~――」


 おん?

 なんだ、拳握り込んで両手振りかぶって……言語コミュニケーションに対してボディランゲージで返すんじゃありません。

 さては陽キャか?

 この距離間の計れなさ――


「っらぁ!」


 んで振りかぶったそれをオーバースロー? なんそれ?

 ラップバトル的なやつの新手なスタイル? 

『問を投げかける』の肉体言語バージョン?


「――ってなんじゃぁ!?」


 風みたいなんがビュアーって!

 ほんであっちとこっちに連なる窓ガラスが――


「は? 割れ――べ」


 呑気に観察してたらすぐ横のガラスもパリーン。

 直後に顔面、というかもう、体の前面全体がググっと。

 バカでかいバランスボールでぶん殴られたみたいな衝撃――


「ぐああああああ!?」


 突如訪れる激痛。

 口から洩れる悲鳴を抑えられないまま後方へと飛び転がった。


「――か、っは」

「ひっ、ははは!」 


 なにが、起きた?


「飛び過ぎだってぇの!」

「ま、待って……」


 いや、ナニが起きたかなんてそんなことは俺自身がよくわかってる。


「おいおいおいおい。抵抗も無く命乞いって……お前それでも――」

「うるせぇ! 待てっつってんだよこの野郎!」


 正面から、あの男から発せられた見えない圧。

 そいつが、この身にもたらした深刻な……ダメージ。


「んだぁ? 急にイキって……()()にいるんだよな。お前みたいに、弱いくせして去勢だけ張るやつ」

「うるせぇ。ちょっと黙ってろ……」


 全身を硬直させる、肉体の痛み。


「気に喰わねぇな。お前、もう死に確だわ。()()()()俺に出くわしたてめぇの不運を――」

「たまたまたまたま、うるせぇ!」


 回復だ。回復を図らねば。


「……つか、なんでずっとそんな声量ちっさいんだ?」


 話しは変わるけど、パンチングボールってあるじゃん?

 あの、ボクサーとかが上から吊るした球をチョンって叩くと、バルルンって揺れるやつ。


「タノムカラマッテッテェ……!」

「……あっ。あぁ~……あぁ……」


 どうやら察してくれたみたいだ、若干引き気味なのがムカつくけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ