第九話 抑えきれないもの
「リヒトーくーんお腹すいたー、あと今日は何ー?」
6畳程の大きさのキッチン室でリーフェがリヒトーの周りを右へ左へはしゃぎながら移動する
「火を使うから離れろ〜。」
リヒトーがリーフェの頭を撫でながら話す
「はーい、、、。」
リーフェが少し不機嫌な声を出してリヒトーの邪魔にならないように後ろに移動し、近くにある椅子に座る
「ステーキだ。」
「私のは?」
リヒトーが手を洗い、まな板を棚から出し包丁で肉をリーフェを抜いた人数分に切る
「肉なしドリア。」
「えー! ドリア!? 好きなんだよねー! リヒトーくんが作ったの!」
切った肉に塩コショウを振り、盾で覆い少し置いておく
「皆同じものにしたかったんだけど、、材料が無くてな、すまない。」
「いいよ! いいよ! そんな事、それにしても久しぶりだなー、リヒトーくんのご飯。」
リーフェが右手で左耳をさわる
「まぁアレから会って無かったもんな。」
「全くだよ、、、やっと戦闘が終わってリヒトーくん探しても敵すら居なかったから相打ちで消滅でもしたかと思ったんだよ?」
ほんの少し呆れた声でリーフェが話す
リヒトーが米を研ぎ、鍋に入れる
「リーフェ、話変わるんだけどさ、二重人格ってなんだ。」
「マルジィちゃん達のこと?」
「ああ、そうだ。」
「つい最近の言葉だよ、そう言われてるのもあの二人が初めてだし。」
リヒトーがフライパンを上の方にある棚からガチャガチャと探す
「まー、なんだろ、、、一つの体に二人分の意識がある、みたいな感じな。」
「あー、だから達な、、、。」(フライパンと鍋を用意したのは良いが、、、。)
「リーフェ、火を使う所はどこだ?」
リヒトーがリーフェの方を向く
「右下見てみて。」
リヒトーが言われた方へ目を向ける
「、、、、ファイヤー・ボールの魔法陣? なんか気持ち悪いな。」
小指の爪程の大きさの魔法陣が連なり、直径10cm程の円を作り、その中に二回り小さい魔法陣の円が書かれている
「その下に棚あるじゃん。」
「あるな。」
「それ開けて上の方にスイッチがあって、それ押して。」
リヒトーが右手で探る
「スイッチ? 何だそれ、、、この少し出てるやつか?」
中指でそのスイッチを押す
すると、棚の扉の少し上に円柱状の物がゆっくり出てくる
「何だよ、まだ何かあるのか?」
「それ右方向に回してみて。」
「こうか?」
リヒトーが円柱状の物を右手の親指と人差し指で掴み、手首を右方向へひねる
魔力を少し吸われる感覚と同時に内側の魔法神が光り、それぞれの位置に小さな火が出る
「わっ、スゲー! コレどうなってるんだ?」
「私も知らん!」
「リーフェ、みんなを呼んできてくれ。」
大きな食卓に作った物を並べる
「んー!」
リーフェがキッチンから食卓へ入って左側の出入り用のドアから人を呼びに出ていく
「そう言えば、アデル達遅いな。」
「ん"ん"ん"ん"!! 重いッス!!」
「なぁ、もう一樽持とうか?」
大きい樽を1人ふた樽持ち、リヒトー達が居る所まで歩いている
「でも、そっちももう半分持ってるッスから、、、。」
アデルが左側を見て話す
「この先坂っぽいけど?」
「ん"ん"ん"、、、持って下さいッス。」
「はいよっ!」
祐作がアデルの左腕から酒樽を受け取り最初から持っている酒樽に乗せる
「何で、ハァ、、そんなに、ハァ、、持てるんッスか?」
「俺は固有能力で身体能力を強化してるからな、アデル君と筋力は大して変わらないよ。」
「強化系ッスか?」
「あー、能力の話はまた明日以降な、着くまでには終わらなそうだからな。」
「そうだ、アリアを起こさなきゃな。」
イスに座った神猟がつぶやく
「アリアが居るのか?」
「なんだ、知り合いなのかリヒトー。」
神猟が廊下へ続くドアを指さす
「そのドアを開けてそのまま真っ直ぐ、1番奥の部屋だ、呼んで来てくれ。」
リヒトーは返事をし、言われた通りに進みドアを2回ノックする
「入るぞー。」
リヒトーがドアを開け薄暗い部屋へ入る
「アリア?、、、、隠れてるのか?」
そう呟いた途端、リヒトーの首元に鋭い牙が迫る、、、が、リヒトーは首を噛まれる寸前に左腕を代わりに噛ませる
「危ねぇな、お前が首はダメだって言ってたんだろ?」
白髪の少女が腕にしがみつき、ゴクゴクと音を立ててリヒトーの血を飲む
「プハッ!! ごめんリヒトー君、最近飲んでなかったからつい。」
アリアは言い終わるとまた血を飲み始める
「はぁ、首から飲んだら眷属化するんだろ? ほんと、気おつけてくれ。」
リヒトーがアリアの頭を撫でる
「ふぁあい。」
血を飲みながら腑抜けた返事をする
「ほら、ご飯作ったから食べるぞ。」
リヒトーは肘を曲げ、左腕を上向きに固定しながら歩き、ドアを開け、アリアがぶつからないように通る
「あ、アリア起きたkあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!! お前!!」
神猟がイスをガタッと倒し、立ち上がる
「離れろ! せめて吸うのをやめろおおおお!!」
神猟は、リヒトーにしがみつくアリアを無理やり引き剥がそうとする。それと同時に出入口がガチャっと開く
「あー、疲れたッス! ただいまっッsうぅぅぅおおおおおお!!」
帰ってきたアデルがすぐに神猟に加勢する
「ちょっ、あの! 離れてくださっス!!」
「て言うかリヒトーも抵抗しろよ!!」
神猟がアリアを引っ張りながらそう叫ぶ
「ククク、フフ、、、、アハハハハハ!!」
目尻に涙をため、抑えきれなくなったかのように口を大きく開けながらリヒトーが笑う