第六話 杉田 祐作
「んん、どこだここは。」(ここは、、、俺は確か、父さんと母さんと旅行で、、、高速道路に乗って、、、、、。)
真っ白な空間に1人だけ居る少年が周りを見回し、座り込む
「杉田 祐作さん。」
とても安心する声が聞こえ、祐作は声のする上の方を見る
「ここはパレティス、現界と天界の狭間に存在する場所です。私はネロ、不幸にも亡くなられた貴方に、新たな道を示す者です。」
突如淡い光の中から出てきた白く、全く装飾の無いドレスを身にまとった白髪長髪の女性が音もなく着地をし祐作に哀れんだ顔で優しく伝える
「亡くなった、、、、俺が?」
「はい、そうです。」
「俺、車に乗ってて、、、それで 、母さん、、、、そうだ! 母さんと父さんは!?」
「貴方の父と母にあたる方も亡くなっています。」
「そんな!? 、、、、、じ、じゃあネロさん! 母さんと父さんをここに連れて来れないですか?」
祐作はネロの方へ近ずき、膝立ちでドレスを両手で掴む
「それは出来ません。」
「なっ、何で!?」
「貴方のご両親の死は、決まっていたものだからです。」
「決まったいた?」
祐作はゆっくりと手の力を抜く
「言うなれば、運命の寿命が尽きたと言いましょうか、ですが貴方は違います。貴方まだ運命の寿命は尽きていない、まだ生きるはずだったのです。ですから私が提案を出します。」
「提案?」
「はい、記憶の一部分だけ残したまま、また新しい家族の元に赤子として生まれ変わるか、記憶と今の身体をそのままに、異世界に転生するか。」
「異世界、、、、。」
「はい、異世界に転生した場合、固有能力と言う力が与えられ、その力で異世界に居る魔王を殺して貰います。」
祐作は少し後ろに下がり立ち上がる
「その魔王ってのを倒した後はどうなるんです?」
「貴方が死んで一ヶ月後の世界にそのまま帰します。」
「え? 帰れるんですか? 記憶も体もそのままに?」
「ええ、帰れます。体も傷を直して帰します。家も私がそのまま残しておきます。」
「マジか。」(すんごい良い条件じゃないのか? 難しいとは思うが、魔王ってやつを倒すだけでそのまま戻れるんだもんな。よし!)
「さあ、どうしますか?」
「転生、、、転生します。」
少し間を開け、ネロの右手隣に銀色のモヤが出てくる
「ではまず、武器と固有能力を。」
ネロはモヤに右手を入れ鞘に収待っている両刃の剣を取り出し、祐作に渡す
「この剣は?」
鞘は白く、所々に金色の装飾が施され、鍔と柄は全て金色になっている
「剣の名はフラガラッハ、風を操る力といかなる者からも真実を聞き出す力があります。」
祐作がフラガラッハを鞘から抜く
「刀身が、、、、硝子みたいだ、、、。」
祐作は硝子のように透き通っている刀身越しにネロを見てからそのまま鞘にしまう
「次に、固有能力を。」
祐作の胸に当たりが銀色に光る
「何か、、、、変わった?」
「目を閉じ、声に出さず固有能力と、唱えてください。」
祐作は指示どうりに従う
「!! これ、、、盛りすぎじゃ無いですか?」
「それだあっても、例え貴方が100年修行したとして魔王には1人では勝てないでしょう。」
「え、じゃぁ能力を増やすとか、、、。」
「それは貴方の魂と脳が能力の情報処理をしきれず廃人化します。」
「うげっ、やめときます。」
「では、能力の使用訓練と戦闘訓練を始めます。」
「今からすぐ行くんじゃ?」
「貴方は訓練をされている兵士と筋肉だけの初心者、どちらが勝つと思います?」
「事理明白ですね。」
「? はい。」
100年後
祐作とネロが立ちながら向かい合っている
「これで祐作くんに教える事は無くなりました、よく頑張りましたね。」
ネロはニコっと笑う
「100年、、、最初に見た目の変化は無いって言われた時はビックリしましたよ。」
「祐作くんはもう死んでいるから成長とかそう言うのはないですからね。」
「でも俺的にはもうちょっと修行して行きたかったんだけど。」
「これ以上やっても変化は少ないし、やっても無駄ですね、成長限界がかなり近いし。」
言い終わるとネロの隣に銀色のモヤが出てくる
「何出すんですか?」
「うーん、卒業祝いと言うやつです。」
そう言うとモヤに手を入れ、何かを取り出す
「それって、、、、服と靴?」
ネロが両手で持っている黒色の服を指さしそう言う
「そう! これ全部祐作くんのために作ったんだよ! 戦闘で汚れると思ってベースの色を黒にしたの! どうかな?」
ネロが期待を込めた眼差しを祐作に向ける
「嬉しいよ、ありがとう! 大切に使うね!」
ネロが満面の笑顔を見せる、ネロから服と靴を受け取り、祐作はすぐに着替える
服はほぼ全身黒のシャツとズボンとスニーカーのような形状の靴に所々白色の線が走る物
「あとこれ。」
ネロが差し出した物はオリハルコン製の胸当てと、ミスリル製の両足分のすね当てそれと指先が出るタイプの革製の手袋だ
「胸当てはオリハルコンでね、すね当てはミスリルで作ったの!」
祐作はそれらを受け取り、装着する
「ありがとう、、、、今まで、、、ありがとう、俺絶対魔王を殺してみせる!」
「うん、、うん!! 絶対に殺って見せてよね!」
ネロが祐作に首に腕をまわし、抱きつく
「君から教わった事全部忘れず活かしてみせる!!」
言い終わると、ネロが耳元で喋る
「アッチに行ったら近くに魔王の子、リヒトー・スランウェイって言う緑髪の男の人が居るわ、彼はとても強い、もしかしたら貴方よりも、魔王を殺すのなら彼と協力すれば必ず力になるわ。」
「魔王の子!? 、、、分かった、緑髪だな!」
ネロは名残惜しそうに祐作から離れ、右腕を前に出し、金色のモヤを出す
「行ってらっしゃい。」
ネロは両目に涙をため、無理に笑顔を作る
「ああ! 行ってきます!!」
祐作はゆっくり金色のモヤの中に歩き、眩しさに目を瞑り、そしてゆっくりまぶたを上げる
「ここが、、、異世界。」(ここは国の中か? 荷馬車、屋台、エルフに獣人、、、想像していた通りだ。)
「アデルくーん! 大丈夫ー!」
「うん? 何かあったのか?」
近くにある家の屋根に飛び乗り、声の聞こえた方を見る
「あれは、、、黒いドラゴン? 、、、あ! 緑髪の男らしき人物発見!」
祐作は屋根から屋根へ飛び乗り移りながらリヒトー達の方へ向かうが、途中で声をかけられる
「ちょっと君! 危ないし迷惑だろ! 降りてきなさい。」
なんの装飾のない鎧を着た兵士が声を掛けてくる
「え、でも今行く所が、、、。」
祐作はリヒトー達が居る方へ指を指す
「アッチは確かドラゴンが、、、野次馬なんて後でもできるだろ、良いから降りてくるんだ。」
「は、はい。」
兵士の目の前にジャンプする
「君、良いかい? ここは皆で使う場所だ、それに君の家では無いだろう? 君のせいで屋根が壊れたりしたらどうするんだ?」
「はい、ごめんなさい。」
「はぁー、やっと解放された。」
すると少し遠くの方から
「おーい! みんな! スランウェイ君が差し入れを持ってきてくれたぞー!」
「何! スランウェイ!?」
声のした方へ祐作が走る
「緑髪の男!!」
リヒトーらしき人物を見つけた祐作は大きく息を吸い
「今! 今確かに聞こえたぞ! スランウェイとな、そこに居るのは! リヒトー・スランウェイではないだろうか!!」
その声を聞いたリヒトーは腰に掛けてある武器を鞘から抜く
「?」(まずは拳で語り合おうって訳か!!)
「リヒトー・スランウェイ、俺の名前は杉田 祐作、、、、転生者だ!!」
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