青春と幻想
「表紙?」
夕暮れの教室は、電気をつけなくても外から差し込む夕陽が眩しいくらいだった。
「そう、私の作品の表紙作ってほしいんだ」
スマホにはあいかが作った作品のページが開かれている。
「高いよ?」
冗談めかして言うと、親友なのにお金とるんだ、と膨れていた。
「私これでも、人気絵師なんだけど」
密かに何年もイラストを描いてTwitterで投稿していたけど、最近になって結構フォロワーが付いてきて、投稿した画像にはいつもかなりの数のいいねがついていた。
「これ、私とゆずはちゃんを主人公したんだよ」
作品には、タイトルの作者名のみで表紙には何も画像がない。
「『空を泳ぐ~魔王城でおやすみ~』って何?絵本?」
「あぁ、それは適当につけただけ。浮かばなくって。内容はファンタジー」
私たちが主人公のファンタジーとは…?全く想像がつかない。
イラストで何か書いてぶつけるとか?本だと、なんか呪文唱えるとかありそうだけど。
「それとも漫画にする?」
「なんか私のほうが負担大きくない?」
私たちの笑い声が響く。
もしかして永遠ってこんな感じなんじゃないか、なんて幻想が私たちを包んでいるようだった。