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脱退とか斡旋とか

「突然なんだが、このパーティから抜けてほしいんだ」

僕の所属する冒険者パーティのリーダー、シアンに自分だけ呼び出されて、ドアを開けると同時に告げられた言葉だ。

「それはまた何故…」とは返すものの、理由はだいたい判っている。

「まあアレだな。ほら、この前神官ちゃんが新しく入ってきたろ?神官といえば回復要因かつバフ要因だな。そんでもって君は白魔術師…同じく回復兼バフ要因。仕事が被っているわけだ」

彼はさも当然のことだとでも言いたげだ。僕と目を合わせる気もないらしく、何やら白紙にペンを走らせている。

しかし此奴は新しく入ってきたメンバーと役職が被っているからと古参を出ていかせるような男ではない。この前も魔術師がうちのパーティの門を叩きに来たが、生憎間に合っているからと突っぱねていた。それを見ていれば普通は納得しないだろう。

然し幼馴染の僕はこの男の考えることなど簡単に判る。

「この前はあっちを突っぱねたのにどうして…」それでも義務のような気がするので食い下がってみると、彼はくくく、と可笑しそうに笑った。

「君、理由は判ってるんだろ。表情で判るぜ、何年の付き合いだと思ってる。…で、お待ちかねの追放理由だが、君も察している通り仕事が被ってる女の子がいるのに態々男のケツなんぞ見たくないから。それだけだ」

そこでやっと此方を向いて、彼はへらりと笑った。正直いつもの真面目そうな顔より今の何処か不快感を覚える表情の方が彼らしいような気もする。

ああだろうと思ったよそっちこそ何年の付き合いだと思っているんだボケナスという言葉をどうにか抑え込んで「…やっぱりそうだよな」と返した。他の奴らは知らんが、此奴に関しては本当にそれだけなのである。だいたい冒険者になったのだって「あわよくば町一個救って町娘にちやほやされたい。そこまで行かずとも有名になって女子メンバーいっぱい連れてきてハーレムパーティ作りたい」という不純な動機に拠るものだったのだ。寧ろ何故今まで僕が此奴に付き合ってこられたのかが全く謎なくらいだが…いつかは来るだろうと思ってはいたが、いざ来ると実感が湧かない。

僕が余程難しい顔をしていたのか、シアンが僕をフォローするように続けた。

「本当にそれだけだ。正直、あの娘と比べても君の回復能力及びバフ付加能力は申し分ない。というより君のほうが彼女の数十倍優秀だ。君がパーティから脱退することになったのは単に僕が女好きのクズだからであって君のせいじゃないからな。そこだけは勘違いしないでくれよ」

そこで彼は一度言葉を濁らせて目を伏せた。

「…僕の勝手な事情に付き合わせて悪いとは思ってる。だいいち不純過ぎる動機で始めたくせに幼馴染に一寸は外の世界に出てほしいなんてエゴであのとき引き篭ってた君を無理矢理外に連れ出して冒険者にしたのは僕だ。…でも、このパーティは所詮週末に遊びに行くノリでクエストをこなしている集団だから…多分此処では君は実力を出しきれてない。他の、例えば冒険者一本で食う気満々みたいなパーティに行ったほうが君が全力で活躍できる筈なんだ。てかそのほうがもっと食い扶持稼げるだろうし…いや、なんか1ミリしか思ってないこと無理矢理膨らまそうとしても駄目だった。やっぱ極力女のケツだけ見てたい以上の理由は無かったぜ」

彼は諦めの混じった微笑をたたえた。彼はどうやら、僕が未だにボロアパート住まいなことにゴブリンすら倒せないくらい弱い負い目を感じているらしかった。今の収入でも生活に支障は一切出ないしシアンが勝手に奢ってくるから税金とアパートの光熱費、電気代等以外の支出はないのだが。

なんか珍しく眉の下がっているシアンがだんだん面白くなってきたので合いの手を入れることにした。

「でも…僕達って親友だろ?それなのに…そんな理由で…」と、僕は態とそこで切った。

僕の予想に反して、シアンは呆れたような素振りを見せた。少し苛々してもいるようだった。

「パーティ辞めさせるのと絶縁を同列に置くなよ…悪いが今まで通りちょっかいはかけに行くし誕生日は押し掛けて派手に祝うよ?僕は単に態々ハーレム要員以外を連れて行く必要がなくなったから出ていってくれと言っているだけだ、親友までやめるとは言っていない」

一瞬良い奴なのかと錯覚したが言っていることがゲスいのに変わりはない。

「…ま、そういうことで。君は強いから、屹度うまくやっていけるよ。多分世界ひっくり返すくらいの偉業は達成できる筈…とか応援の言葉っぽいの投げつけたところで結局最ッ低な理由で追い出すわけだし、最大限サポートするつもりだよ」

うん、やっぱり此奴クズだ。あとやってることが最低って自覚があるんなら直してくれ。

…けど、自分の勝手でパーティから追い出すから最大限サポートするなんていう変なとこで見せてくる義理堅さはやっぱりシアンだな、と思う。

「てことで組んでくれそうなパーティは予め手配しといたから」「いやあ流石シアンくん展開が早すぎて僕は追いつけていない」

彼の実家は冒険者ギルド系列の酒場(所謂「冒険者の店」。勿論宿屋もセットだ)。要するにギルド本部に行かなくてもクエストの斡旋とかパーティ編成のお手伝いとかをやってくれる便利なお店だ。シアンは冒険業を生業にしている訳ではなく、此処に勤めているのである。その彼が新しいパーティを斡旋してくれたのだから信頼はできる。

…とは言ったものの、どうしてあんなくっだらない理由で僕がパーティ辞めることになったくせにアフターケアはいやにしっかりしているんだろうか。これも親友のよしみというやつか。本当にクズなのか良い子なのかはっきりしろよ。お前はDV彼氏か。

いや待て。まじでなんでこんな奴と親友なんだ。

「…ところでシアン、他のメンバーにはこの件は話したのか?」「話しているわけがないだろう」

…は?

待て。それは僕に言う前に他のメンバーに話せ。混乱するだろうが。何が話しているわけがない、だ。

他にも色々と訊きたいことはあったのだが要件はこれで終わりらしいので帰された。帰り際、彼は嬉しそうな声で「今回手配したパーティは腕利きだから、今までと違って君が全力で活躍できると思う。依頼の受付はうちで頼むぜ」と言った。嬉しそうに言わなくてよろしい。

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