13. 迷惑な目覚まし時計
おばさんの家の裏庭から、全く違う世界に連れてこられ、そして色んな人–––エルフや魔法使いや動物ですが–––と初めて会って、たくさん走ったり歩いたりして……
オリは本当に疲れていたのでしょう。
オリは、周りで誰かが喋っていても、ベッドに他の人が入って来ても起きませんでした。
スヤスヤと眠り続けて、そして–––
『ドゥルルルルルルッ!!』
という、工事現場のドリルのような音で、オリは飛び起きました。
オリは目を覚まして、そこが自分の家の自分の部屋でないことにまず驚きました。
そして、一緒に寝ているジャズや、カーペットの上で寝ているシドと、その更に上に寝ているディーンを見つけて、やっと自分が魔法の森に来たことを思い出します。
この森に来たことも、まるで夢の中の出来事のようだったのに、その中で眠りについてまた目覚めたのが、なんだかとても不思議でした。
『ドゥルルルルルルッ!!』
と、また大きな音がして、オリは肩をすくめました。
それは、近所の道路を工事していた時に聞こえて来た音にそっくりでしたが、もっと近くから聞こえます。
カーテンの隙間から差し込む朝日の中、周りを見渡しますが、オリは音がどこから来るのか全く分かりません。
「ふああああ……。」
と、オリの隣で寝ていたジャズが、欠伸をしながらやっと身体を起こしました。
「ジャズ!」
「ううん?お早う、オリ……。」
「さっきの音は何?とても大きい音だったよ?」
「音?ああ、ペックの音よ。」
「ペック?」
またあの音がしましたが、ジャズは驚きもせずにゆっくりとベッドから降りると、部屋の壁際にあった、小さな薪ストーブに近づきました。
そして、今は火のついていないストーブを、バンバンバンッ、と手のひらで叩いて、大きな声で叫びます。
「起きているわよ!ペック!!」
何をしているのか分からないオリは、呆然とその様子を見るしかありません。
ジャズは、トーファーの居る納屋に繋がる窓を開けました。
すると、ひょい、とその窓枠に飛び乗った影が有りました。
鳥です。
頭の赤い羽がトサカみたいに逆立った、黒い鳥でした。
「やぁやぁお早う我が友よ!新しい一日の始まりだ!今日も良き日を祝おうじゃないか!我が友人たちはこの朝いかがお過ごしかな?……おや?おやおやおや?見ない顔がいるじゃないか!これは珍しい!初めましてお客人!このペック、どうか今後お見知り置きを!」
忙しくひょこひょこ動きながらまくし立てる鳥を、オリとシドとディーンはぽかんと眺めます。
随分とお喋りな鳥のようです。
「お客人方は何処から来たのかな?おや?おんやぁ?そこのお嬢さんはエルフには見えないねぇ。魔法使いでもない……いやぁ、これは奇妙な!このペック、生まれてこのかたこんな生き物は見たことがないよ!いやぁたまげた!なんとまぁ、不思議な存在であること!」
「オリは人間だよ、ペック。」
ぬう、と窓から顔を出したトーファーが言いました。
「人間?人間だって?まさか!本当に?いやぁこれはたまげた!このペック、人間を見たのは生まれて初めてだ!なんと光栄な!」
「オリ、シド、ディーン、こちらはキツツキのペック。毎朝私たちを起こしに来る、迷惑なやつさ。」