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「いいの?」
彼の行きつけのバーに行く為に歩き出す
背中にそう尋ねれば、足を止めて振り向き眉毛を下げて笑う。
「あいつらと居ると墓穴掘りそう」
「ああ。なんとなく察した」
酔っ払いの彼らに、希美ちゃんとの関係を茶化されることは目に見えていて
それをうまく流して誤魔化す自信がないんだ。
彼の弱い部分に今から踏み入れるのかと思うと失礼ながら少し好奇心的なものが疼いた。
バーに到着した私たちは
カウンター席に腰を下ろす。
「っと、そういえばタバコ、いける?」
ポケットから自然と取り出した電子タバコを机の上に置く。
同窓会のあの場ではみんなお構いなしに吸っていたし外でも彼は少し離れたところではあるが吸っていたというのに今更ながらそう尋ねるのは
私への配慮のほかないだろう。
先程は吸っているところに私が近寄ってきたから仕方ないとして、今この場で改まって吸うか否かは私次第ということだ。
「気にせずどうぞ」
我が家の父親はベビースモーカーなので、電子タバコのフレーバーな香りは全く気にならない。
まあ何度でも言うが同窓会ですっかり服はタバコ臭くなっているから香りうんぬんはもうどうでも良いのだけれど。
注文していたカクテルが届き、
二人で再度乾杯する。
「それで。どうしたの」
「随分直球なんだな」
周りくどく世間話をできるほど、コミュニケーション能力に長けていない私は
早速、本題に話を持っていく。
「これから俺が言う話は全部酒のせいにして」
本当は全く酔っていない彼の精一杯のプライドなのだろう。私は静かに頷いた。