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「あれ、酒ないじゃん。
小野寺も今来たところ?一緒に頼も」
ドリンクのメニュー表をさらっとこちらに向けてきた西村くんに、落ち着かせようとしていた心拍がまたあがっていく。
「私は、ビールだけど西村くんは?」
一瞬、横にいる真央のようにカクテルを飲もうかと考えた。
しかし、成人式の同窓会でビールを飲んでいたのに今更カクテルを頼んだら
女の子らしく振る舞ってるなんて思われたら嫌だ。
そう思いいつも通り、ビールにすることにした。
冷静に考えれば、
あの時私が何を飲んでいたのかなんて100%誰も覚えて居ないだろうが
もっとよく考えれば同級生相手に可愛らしくいく必要はないのだ。
言い訳するようだが、
真央は可愛さで選んだのではなく本当にカクテルやチューハイ以外飲めないので
決して友人に対する偏見で言ったわけではない。
「へぇ、小野寺ってビール飲めるんだ」
そう言ったあと、
「すみません」
と料理を運んできた店員さんに声をかけ
ビールを2杯注文した彼はパタンとメニュー表を閉じた。
「うん、ごめんねメニュー表見せてもらったのに」
「いやそんなの別にいいって。
来たら2人で乾杯しようぜ」
2人で、の言葉についドキッとしていると
「あーずるいー俺らもビール頼むから
乾杯しなおそうって」
彼の隣からズイッと他の人たちが割り込んできて
「もうお前ら酒まわってんだろ、うるさい」
西村くんにくっつくから、彼はめんどくさそうな素振りを見せながらも笑顔で対応していた。
お酒がきて、乾杯する頃には
別卓でお酒を頼んでいた女の同級生たちも群がってきて
彼はあっという間に色んな人に囲まれていたので
私は真央と一緒にそっと端っこのテーブルに移動した。