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この日は同窓会に参加することになっていた。
もう既に会場にいるはずのこの時間、
私は車の中でラジオのお姉さんのトラフィックインフォメーションを聞いている。
お姉さんは現在使っている高速道路の渋滞状況を淡々と伝える。
ええ、まさに今、その渋滞に巻き込まれていますよ。
5kmの渋滞なんてそんなに大したことはなさそうに聞こえるし、すぐに抜けられると思うが
気が急いているのは、私が現在向かっているのは
同窓会会場ではなく、仕事場だというこの状況のせいだ。
私の職場が扱っている花の配達に行って帰ってすぐに準備をすれば間に合うはずだったが
配達先での対応にも少し時間がかかって、尚且つこの渋滞だ。文句を言っても気持ちを急かしても残念ながら進まないのが渋滞で、その間もどんどん進んでいくのが時間というものだ。
なんて、上手く言ってみた風だが所詮、止まった車の中で考えるくだらないことに過ぎない。
仕方ない、同窓会は諦めよう。
1時間近く遅れて、もうお酒で程よいテンションが出来上がっているであろう人々の中にノリよく入っていける自信がない。
車が止まっている間に携帯から幹事の名前を探し電話をかける。
「もしもし?」
「あ、もしもし。ごめん。
まだ仕事なんだけど、渋滞捕まってていけそうにないんだ」
コース料理ではなかったはずだから私一人ぐらい来なくても大丈夫だろうと思い電話したが
「えー?明日休みな人たち多いし遅くまで飲んでるから大丈夫だよ。
また来る時教えて」
「え、ちょっと」
断りきれずに切られた電話に思わずため息をつく。
スピーカーにしていたためか、車が余計にしんとして思える。電話のためにボリュームを下げたラジオの音量も戻して再びラジオに耳を傾けた。