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これは私の良く知るいくつかの未来の一つだ

私は未来から来た。

未来を変える為では無い。

ただ私のよく知る未来への、もしくは無数の未来達への過程を知る事が目的だ。

ただそれだけである。


私、まぁ名前は何とでも呼んでくれて構わない。

皆さんの言う所の日本人、同じ民族だ。


それと私のこの備忘録がこの時代、この次元の人々に影響を与えるのは本意では無いので

このお話しはフィクションと思ってくれて構わない。


何故備忘録を公開するのか?

然したる理由も無い。

ただの暇潰しだ。

暇潰しに、ほんの数人が付き合って貰えればそれでいい。

そんな所だ。


そうだ。

皆さんの暇つぶしにもなるように私からクイズを出そう。

私は今から私が深く知る二つの未来の話を皆さんにしようと思う。

私はその二つの未来のどちらかから訪れている。

どちらの未来から来たのか、そして私が誰なのかを皆さんに当ててもらいたい。

そう、これは私が未来に帰るまでのあと2週間ばかりの

ただの暇潰しだ。


それでは始めよう。

誰の目に触れる必要もない。

少しの過去と少しの未来の話を。


まずは少しだけ私の話をしよう。



『私の話』



私がこの時代に来たのは今から半年前

目的は…

まぁ色々な理由も事情もある。

今は語るべきではないだろう。

いずれ何年か何十年か先にはわかる事だ。

ちなみに『今』が何時なのかだが、正確に教える訳にもいかないので…

まぁなんとか宣言が出た日くらいに思っておいてくれてかまわない。

ともかく私は半年前この時代でいうところの東京に来た。

感想はと言えば

言葉もない。

全てがパーフェクトだ。

街も人も。

人類全てが二度とこの日に戻れない事を本当に残念に思う。

ともあれ私が見届けるべき事態もう少し先だ。

それまでに私は知らなければならない。

この時代の人々の事を、人々の日常と精神を。


私にはその時点で時間が多く残されていた。

なので暫くこの世界の日常を謳歌し満喫することにした。

かと言ってだらだらとその平和な日常を書き綴る気はない。

私の知る、格差と怨嗟そして不幸に満ち溢れた未来との違いに感動を覚えただけである。

この世界は素晴らしい。

弱者も強者も老いも若きも素晴らしい。

問題はあるのだろうが、それでもこの世界は素晴らしかったのだ。

ただそれだけだ。



『さあこの日が始まった』



本題に入ろう。

ある日未知のウイルスが世界の片隅で出現した。

それが何時かは皆さんもよく知るところだろう。

まぁ多少の誤差や間違いもあるのだが、それもいずれ解る。


私は街に出た。

そこには何も変わらない日常が広がっている。

危機感を感じている人はいないように見えた。

もちろん識者の中には幾らかいただろうが、私の目に映る人々は日常を謳歌しているように見える。

それに私は知っている。

識者の合理的で正しい判断など始まってしまえば何の役にも立たない。

『人々』という複数形、集団というものは合理性や思考能力を奪うのだ。

なので識者の危惧と警鐘にさしたる意味はないのだ。


ともあれ『それ』は現れた。

私のミッションが始まった。


一応断っておくが、私は皆さんがどんな選択をしようと興味は無いし

それは常に正しい選択だと思っている。

正解も当然ない。

自分達が選択したのだからどんな未来も幸福なのだ。

自分達で考え、責任を持って選択したのだから結果の如何に関わらず受け入れるべきであり

何より選択できた事自体が幸福な事なのだ。

あなた達の未来はあなた達が決めればいい。

ただそれだけの事であり。

私はただあと2週間、見て、聞いて、そして未来へ帰るだけだ。


話を戻そう。

まず始まりは世界の片隅だ。

この時点で私の見える範囲の世界は変わらない。

当事国だけは大騒ぎになりつつあるがあくまで私の観察対象はこの国だけだ。

他の国は他の国の観察者がいるだろう。


この国は変わらず平和である。

一か月ほどが経った頃少しずつ変化が現れ出した。

発生したウイルスは隣国で猛威を振るい患者は増え、この国にも患者が幾人か出始めた。

少しずつ恐怖を持つ人々が現れ始めたようだ。


まぁもちろん私からすれば歴史のおさらいみたいな事柄なのだが

生で見られるのは興味深い。

特に恐怖が広がる様は非常に興味深かった。

失礼、もちろん悪意は無い。

純粋な学術的な興味の話だ。

人に根拠のない恐怖を伝播させるというのは私の時代では非常に難しいのだ。

もちろん明確な根拠のある恐怖は存在するのだが

この時代のように根拠のない偏った情報が人々の恐怖を誘発していくような事態はとても新鮮なのだ。

特にテレビというメディアはすごい。

驚愕だ。

恐怖の煽り方が非常に見事なのだ。

知識としては知ってはいたのだがこれも生で見ると非常に新鮮だ。

他国の惨々たる状況を自国の確定した未来であるかのように

言い回しや言葉のチョイスによって実に巧く誘導できている。

しかも何と情報に意見が付くのだ。

恐い、危ない、大変だという意見が付く。

これが凄い。

数値的根拠やデータの印象を見る見る曲げていく。

実に見事で美しい、そして素晴らしいテクニックで称賛に値する。

もし私の時代にあるのなら…想像もできない。


ともかくそれらに群衆が同調していく。

その様はまさに圧巻だった。


話しが少しズレてしまった。

ここからはさほど時間はかからなかった。


テレビやメディアによって恐怖が広がり。

それをネットワークが拡散しエスカレートさせていく。

この時代のセレブや特権階級の人間らしき人々までも様々な手段で恐怖をあおり自制を求めた。

群衆は扇動されるがままになんとか宣言を要求した。

そして時の権力者たちはその圧力によりなんとか宣言を出した。

これが今日の事である。


まぁ短いながらこんなものだろう。

ここまでは皆さんにとって過去の話しだ。

さして意味もなく

まさに私の備忘録に過ぎない。



『こからは未来の話をしよう』


さぁ未来の話をしよう。

重ねて言うが良い悪いは無い。

私の語る未来もあくまで私の良く知る二つの未来で皆さんの未来がそうなるとも限らない。

皆さんの行動も思想も変える必要はない。

もちろん決断もだ。

私は私が皆さんの未来を変える事を望まない。

私の未来と皆さんの未来が一緒である保証も無いのだ。


そうフィクションなのだ。

未来の全ては皆さんにとってはフィクションなのだ。



何はともあれ世界は変わる。


まずは『一つ目の未来』だ


それは人類、いやこの国の人々はこのウイルスに見事に勝利する。

そんな希望に満ちた素晴らしい未来だ。


この国のウイルスによる死者は今から1年と少し先に0になる。

感染者もいなくなる。

そう未知のウイルスを駆逐したのだ。

まぁ実際は何度も流行する事になるのだが、

それはその時の人々は知る由もない事だろう。

それにここまでの大騒ぎは後にも先にもこの時位だ。

ともかく人々は狂喜し互いを称賛し合った。


しかし当然の事ながら犠牲はある。

この国の大半の産業は壊滅的な打撃を受ける。

感染拡大を阻止しようとした大半のインテリやエリート、著名人などは然したる被害を受ける事はなかった。

だが、その判断に付き従った大衆は大変な被害を受ける事になる。

それは凄惨な光景だった。

町は失業者で溢れ、人々の心は不満と怨嗟が支配した。

その悲惨な光景を目の当たりにした、リーダーやインテリ、著名人などは大慌てで一斉に

『これで良かった』『沢山の命が助かったのだ』と

その結果を掲げ不満を沈めようとした。

だが既に町にはスラムができ、各地の犯罪発生率は上がり、自殺者は歴史上類を見ないほどの数に膨れ上がっていた。

そうそれはまるでsamuraiのhrakiriのように人々の命が軽くなり、そして消えていった。

何も失わない、もしくは、失っても問題ないもののみ失った

そんな持てる者達、失わなかった者達の言葉は

全てを失った民衆に届くはずも、ましてそれらを動かす事も出来なくなっていた。


民衆のコントロールを失い始めたリーダー達は責任を押し付け合うようになっていく。

口々に『仕様がなかった』、『悪くない』『最善だった』と繰り返した。

そして誰が悪い彼が悪いと罵りあった。

それは全てを失った人々の精神を逆なでする事になる。

そしてそれは起こる。

ある日一人の失業者が救済を求めてデモを企画する。

そのデモには100万人以上の人間が参加する事になった。

100万人のデモなど今の皆さんには想像できないかもしれないが

想像して欲しい。

国民の3/1が仕事と財産を失い家族も友人も手を差し伸べる事も出来ない。

連鎖的にあらゆる職種で失業、倒産の連鎖が絶えず発生し続けている。

そんな状態だ。

今は想像出来ないかもしれないが、それは起こるのだ。

かつてない規模のそのデモにインテリ達は恐怖した。

そしてそれは、デモではなくテロと同等のものとして厳しい規制がかけられる。

その中でそのデモのリーダーが殺されるのだ。

大衆は怒りは頂点に達し、その感情に飲み込まれた。

しかも時を同じく若者がある事実を発信してしまう。

それは、故意か過失かはさておき、命の選別が行われたという事実だ。

よくよく考えれば誰にでも解りそうなものだが

その時は誰も気が付く事ができなかった。

幾人かの学者などは気付き警鐘を鳴らしていたが

恐怖で扇動された民衆には届かなかった。


簡単な事だ。

病は誰にも等しく死を与える。

それは富める者貧しい者、もちろん権力、財産、名声、職業、能力その全ての有無に関わらず一定の確率で死をもたらす。

正に平等な死なのだ。

だがその平等の死を拒否する、感染症を根絶する。

その選択の代償は、経済を介して間接的に、より確実で不公平な死を弱者にのみもたらす。

そう弱者のみ、持たざる者のみに死が訪れる。

それはウイルスとは比にならない程の不幸と死をまき散らすのだ。

その自分達に最も都合が良く、自分たちにとってはローリスクな決断をインテリやリーダーがした。

強者は何も失わず、弱者は全てを失う。そんな選択を強者の側がした。

そんな結果が既に伴ってしまった。

実証された事実を発信してしまう。

人々は逆上し怒り狂った。


そしてこの国は沈んだ。


内戦が起こる。

いや正確には内戦ではない虐殺だ。

インテリ、権力者そして、事実を客観的に報道せず扇動したとみなされたメディア、そのほとんどがこの世から消える事になった。

ひとしきり民衆が悪だと思えた者を駆逐したのち人々は恐怖した。

冷静になる事を恐れたのだ。

過熱し続けた民衆はお互いを攻撃し始めた。

意見が割れた者、正義が、正しさが違う者

とにかく興奮と熱が冷めないように争い続け、殺し合い続けた。

こうしてこの国の人口が半分程度になった時

人々はようやく止まった。

ついには弱者どうしで奪い合い、殺し合う自分たちに絶望しながら止まった。

無秩序と混沌、恨みと恐怖、後悔、そんな負の感情の中で立ち止まる。

そこから先の時間は、もはや国と呼べるような体をなす事は無かった。

人々は人間に絶望し自らの愚かさに絶望し、種の絶滅すら望みながら生きるだけ生き、死んでいく。


もちろん救いはある

数十年の先だが人間以外の統治者に統治される事によって人はまた今で言う所のロボットのような役割を与えて貰えるのだ。

このような事があったからこそ私達は道具として活用される幸せな未来に繋がるのだが

まぁこれは余談だな。

これが私の最も良く知る一つ目の未来で、数ある未来の一つだ。



さて、今日はもう遅くなった。

私も寝る必要もあれば食べる必要もある。

いくつかミッションもこなさなくてはならない。

まぁ多忙なのだ。

もちろん始めたゲームは最後までやる主義だ。


明日か明後日の夜には二つ目の未来の話をしよう。

その時

私は『誰』でどちらの未来から来たのか?

このゲームの答えをあなたに聞く事にしよう。


ああ

それと私は沢山の人の目にこのゲームが晒される事を良しとしない。

あまり人目に触れるようであれば削除してゲームは中断させてもらう。

その時はまた別の機会を設けよう。

もちろんその時は誠意と謝罪の心を以って、私は少しのハンディキャップを負う事を約束しよう。


それでは良い夢を。






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