# 魔法使い後勇者後賢者と呼ばれた男 #
幻想世界と呼ばれるこの星には知性ある人型の種族として人間、獣人、亜人(森人、土人、海人)、魔人が住んでいる。寿命もそれぞれで一番短い種で平均70年最長で200年程であり、ある例外を除いて人間の平均は約110年だ。そして、知性の低い共通の敵として挙げられるのが野生動物が魔力を持って変質、凶暴性を持った魔物と呼ばれるもの。最たるものはドラゴンで、かの者は知性ある者ながら凶暴性も力も最も強い魔物であり、彼らが一度翼を羽ばたかせればただ人は紙の様に飛ばされ、ブレスを吐かれれば人里など簡単に焼き崩される。
今から丁度500年前、主に人間と魔人の間で大規模な種族間戦争があり、ちょうど重なるようにドラゴンの大繁殖期が訪れてしまった。魔人の王、魔王はすでに人間が勇者と担ぐ人物に殺された後の事、人間の軍隊が喜々として魔王軍の残党を狩っていたまさにその時、ドラゴンたちが舞い降りて、人間も魔人も食い散らかした。元々図体の大きい彼らには大繁殖で一度に増えすぎた子らを自分らの生息地で養う事は無理だったのだ。半数の子連れドラゴンたちが巣分けとして人里近くに降りてきて生息地を広げてきたのだ。彼らからしてみれば、人型の種族は一人一人は小さくとても腹の足しにはならなかったが繫殖力が高く力も弱い彼らは孵って間もない年若いドラゴンにも狩れる格好の餌兼狩の練習台だったのである。
絶望の淵に立たされた人々を救ったのは、人間の勇者だった。かの者は聖剣と呼ばれる神代の時代に作られた意志ある剣に選ばれた自称ではない正真正銘、世界に選ばれた救世の勇者であった。かの者は一人聖剣を携え、瞬く間に増えすぎたドラゴンたちを屠っていき、生息地から出てきた者たちを殲滅した。討伐した魔物の素材は討伐した者の物。しかし、とても良質な武具防具になるドラゴンの素材を全てかの者はドラゴンにより苦しめられてきた者たちに分け与え、聖剣を返上した後、また一人旅に出た。後に全ての人型の種族に救世の英雄と呼ばれるかの者は、人々の押しとどめる声を振り切って一人きりになると暗い表情で呟いた―
「やってられるかヴォケェ」
その後、かの者の姿を見た者は誰もいない。