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第一話 出会い1

はじめまして、こんにちは。新作始めました。タイトルは……あとで変えるかもしれません。

面白かった、続きが気になるというかたは、お気に入り、評価等してくれたら嬉しいです。



 現在地球には、大量発生する魔物に対抗するため、冒険者という存在がいた。

 魔物たちから地球を守る彼らはまさに子どもたちからすればヒーローのような存在だ。


 俺も、そんな冒険者にあこがれた。

 そしていつか、誰かを助けられる人間になりたい! 

 そう思っていたんだがな――。


 すべての人にチャンスが与えられるわけではない。

 そして俺は、才能がなかった。


 冒険者学園の進級試験――その結果通知書に書かれた不合格という文字。下には不合格の理由が細かく書き連ねられていたが、それに目を通すだけの余裕はなかった。


 みんなを守るヒーローに、俺はなれそうもなかった。



 〇



 高校一年生になった俺は、今一人で迷宮ダンジョンに潜っていた。

 進級試験を落とされたときのことを思い出していた俺は、慌てて首を振る。

 迷宮内で余計なことを考えていたらダメだ。


 まあ、その理由はすぐ近くを通った冒険者の集団が原因だった。 

 冒険者学園、高等部の制服を着ている人たちがいたのだ。


 ……俺はその中等部に去年まで通っていた。


「別に、学園の生徒じゃなくても最強の冒険者になれないわけじゃないっ」


 ……半年前に進級試験で落とされ、俺は一般校に転校した。

 冒険者としての才能がなかったからだ。

 学園への未練がまったくないわけじゃないが、もうどうしようもないんだから仕方ない。


 自分に言い聞かせ、頬を叩く。そして俺は現在潜っていた迷宮で魔物を狩っていく。

 襲い掛かってきたゴブリンの一撃をかわし、何度か剣で斬りつける。

 傷を負いながらもゴブリンはとびかかってくる。恐ろしいほどの生命力だ。


 俺はそれでも体を動かしていく。そうして、ゴブリンの首を斬りつけ、仕留める。

 普通の冒険者なら、もっとあっさりと倒せているだろう。

 ……こんなゴブリンに苦戦するから、試験を落とされたんだよな。


 戦うたび、むなしさがこみ上げる。それを忘れるように首を振って、また魔物を探す。


 それを繰り返し……時間を見て狩りを切り上げる。

 現在時刻は放課後。俺は毎日迷宮に潜って己を鍛えていた。少しずつ、少しずつだけど成長している。将来、最強の冒険者になるために――。


 迷宮から出た俺はギルドに立ち寄って素材を売却する。

 稼ぎとしては15000円ほど。……高校生の放課後バイトとしてみたら破格だ。

 だが、冒険者の稼ぎとしてはかなり悪い。


 冒険者には、武器の手入れはもちろん、迷宮探索を補助するアイテムが必要だ。

 それらに使っていたら、この程度の金額はすぐに消し飛ぶ。


 ギルドを出た俺は、これからのことを考えつつ、自宅に戻っていた。

 その途中だった。警報が町に響いた。


「す、スタンピードが発生するぞ! すぐに避難しないと!」


 近くを歩いていた会社帰りと思われるサラリーマンが声をあげ、逃げていく。

 スタンピード――魔物の大量発生の名称だ。サラリーマンの言う通り、これはそれを告げる警報だ。


 冒険者資格を持つものは、この警報に合わせステータスを持たない一般市民の避難誘導を行う義務がある。

 俺も資格持ちの端くれだ。急いで準備を整え避難誘導へとあたった――。



 〇



 避難誘導をしていた俺は、全力で走り、声を張り上げていた。

 町中に魔物が現れ、冒険者資格を持つ人たちが次々に対応していることもあり、もうすでに人影は見当たらない。

 角を曲がりながら、声を張り上げた瞬間、

 

「逃げ遅れた方、いませんか!」


 オークがずんっと現れた。

 

「に、逃げ遅れた方ですか?」

「ブァァァ!」


 どう考えても逃げ遅れた方じゃないね! わかってたよ!

 オークはD級の魔物だっ。


 この〇〇級というのは、おおよそ冒険者資格に比例する。

 オークはD級の冒険者が数名、あるいはE級冒険者の六人パーティーで何とか討伐できるレベルということである。


 つまり……F級冒険者の俺は見つけた瞬間逃げなければいけない相手だ!

 オークの振り下ろされた一撃に俺は反射的に背後に跳んだ。


 地面が砕け、逃げきれなかった俺の足をアスファルトの破片が掠めていく。

 ごろごろと情けなく転がりながら体を起こす。いってぇよ……。

 足首ひねったかも。最悪だ……。


 オークはゆっくりとこちらに近づいてくる。斧の先で片手を軽くたたいて遊んでいる。

 マジかよ……ここで死ぬのか?


 いつ死んでもおかしくないと思っていたから、覚悟はできている。けど、こんなところで、意味もなく死ぬなんて!

 どうせ死ぬならもっとかっこよいほうがよかった!


 くそ、どうにかできないか。……近くに何かないか視線を向けた時だった。

 思わず硬直する。そこに天使がいたからだ。


 俺が見たほうには、ひとりの女性がいた。

 その人は美しい金色の髪を揺らしていた。この場に似つかわしくない簡素な白のワンピースをまとい、つかつかと歩いていた。


 まるで、今この町が平和であるかのように。魔物なんて存在を知らない無垢な子どものように。

 なんで!? この状況に気づいていないの!?

 脳内に!? がいくつも浮かぶ。


「おい! こっちにはオークが――! クソッ!」


 痛む足に鞭をうち、跳びついた。

 女性を抱きしめるように転がる。俺が背中を打ちながら彼女を押し倒したように見ると、女性は驚いたように目を見開いていた。


 驚いたのはこっちだよ!

 ていうか、やべぇ……今ので限界だった。足の痛みがピークに達して動けそうになかった。


「あいたたた……あなた……大丈夫?」


 それもこっちのセリフ!

 気の抜けた声に、俺ははっと思い出す。

 早く避難させないと!


「お、俺のことはいいから! 早く逃げるんだ! あのオークは俺が――」


 ここは俺に任せて先に行け! そんなかっこいいセリフを吐こうとしたのだが、足の痛みに口を閉ざしてしまう。

 ……めっちゃいてぇ。


 それでも、剣を構えてオークを睨む。なんだかオークは困惑しているのか、動きを止めていた。 

 美少女に攻撃はできないってか? なら俺もついでに見逃して回れ右してください。


 そんな祈りは通じない。オークは斧を構えた。

 間違いなく死んだな、俺。

 けど、こんなカワイイ子のために命かけるのなら、悪くない人生だったかも?


 今世の教訓。才能ないのに、冒険者なんてやるもんじゃない。

 来世があったらもっと強い体に生まれなおしてほしいものだ。


 あの世いったら自慢しよう。美少女を守るために死にました、と。


 オークと向かい合い、剣を構える。

 せめて、爪痕くらいは残してやらないとな。


「あのオークに、勝てるの?」

「か、勝てるぜ!」

「声、震えているわよ?」


 なんでこの人こんなのんびりしてるの!?


「……わ、わかってるよ! 俺のことはいいんだ! あんた、早く逃げてくれ! 時間は稼ぐから!」

「逃げる必要はないわ」

「なにを言って――?」

「この体になってから魔法を使うのは……久しぶりね」


 彼女が片手をあげると、足場に幾何学模様が浮かび上がる。

 まさか、魔法――彼女も冒険者か!?

 オークはまっすぐに俺へと向かってくる。まるで魔法に警戒している様子はなく、そして――放たれた。


「焼き尽くせ――」


 放たれた火炎の一撃は、まっすぐにオークの体へと向かい――その体を貫いた。

 オークが目を見開きながら派手に倒れこんだ。

 その光景を作り上げた彼女は、軽く髪をかきあげ、それから片手をあげた。


「あまり無理はするものじゃないわよ。命は大事にしなさいね」


 からかうように笑ったその笑顔が、反則的だった。

 天使なんて表現では彼女の可愛さは表現できない。去ろうとした彼女を見て、思わずその手を掴んだ。

 女性は驚いたように振り返る。


 ど、どうしよう……。ここで別れたら二度と会えないと思ってたまらず手を掴んでしまった。


「どうしたの? まだ何かあるかしら」


 彼女のきょとんとした顔。それがまた可愛らしい。

 ……どうする。どうすればいい? このまま黙っていても、彼女に訝しまれるだけだ。

 何か口にしなきゃ、と俺は浮かんだ言葉をそのまま吐き出す。


「好き、です」

「へ?」

「結婚してください」

「えぇぇ!?」


 俺の言葉を理解したのか、女性は驚いたように顔を真っ赤にした。

 遅れて気づいた。

 俺は何を言ってんだ!?



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