表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
りんごの木  作者: 雨世界
9/31

 輪廻はずっと一人だった。

 家でも、学校でも、ずっとずっと一人だった。

 家族もいたし、たくさん友達もいたけれど、……それでも輪廻は孤独だった。

 ずっとずっと、孤独だった。

 自分はすごくいろんな人たちから愛されていたと思うし、自分の生まれた環境がすごく恵まれているということもわかっている。いろんなことに感謝もしている。

 でも、それでも輪廻は孤独だった。

 輪廻はうまく、笑えなかった。

 だから、林檎に出会って、林檎と一緒にいるときに、自分が『孤独ではない』と感じたことがすごく不思議だった。

 輪廻は林檎と友達になりたいと思った。

 林檎と一緒にいれば、人生がすごく楽しくなるかもしれないと思った。

 そんなことを思ったことは初めてだった。

 夜の東京の街の中をこうして林檎と手をつないで、すごく綺麗な星を見ながら歩いているときに、そんなことを輪廻は考えていた。

 そう考えてから、ふふっと輪廻は一人で微笑んだ。

 その輪廻の微笑みを隣にいる林檎は不思議そうな顔をしながら、「どうかしたの?」と言って、それからじっと輪廻の顔を見つめた。

「なんでもない」

 林檎の顔を見ながらにっこりと笑って、輪廻は言った。


「素敵な夜だね」

 それから少し間をいてから、輪廻は空を見上げながら、にっこりと笑ってそう言った。

「本当だね」

 と同じように空を見ながら林檎は言った。

 二人の見上げる夜空には星と月があって、それから高いビルとビルの間の闇の中を、赤い光を点滅させる一機の飛行機が飛んでいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ