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追加の注文が終わると、林檎は輪廻のことを見た。
輪廻はその視線を感じて、窓から林檎に自分の視線を移した。
自分の顔を見る輪廻のことを見て、林檎はまたにやっと嬉しそうな顔で笑った。
「その制服、可愛いね。よく似合ってるよ」
林檎は言った。
「ありがとう」
コーヒーを飲みながら、にっこりと笑って輪廻は言う。
輪廻は白のワイシャツとその上に少し大きめの黒のセーターを着て、下は灰色のスカートと紺の靴下、黒のローファーといった、十六歳という自分の年相応の姿である高等学校の制服姿をしていた。
「林檎もその服、すごく似合ってるよ。まるで本物の林檎みたい」
と輪廻は言った。
「そうかな?」
自分の服を見ながら林檎は言う。
林檎は上下とも真っ赤なジャージを着ていた。その林檎の着ているジャージの上着にはフードがついていて、林檎はずっと、そのフードをかぶったまま、今もチョコレートケーキを美味しそうに口にしていた。
真っ黒な髪をツインテールの髪型にしている林檎は、輪廻を見て、ずっとにこにこと笑っている。
「いいな。高校生か。憧れるなー」
制服姿の輪廻を見て、林檎は言った。
「私も一度くらいは高校の制服が着たかったな」
「もしかして林檎、学校、行ってないの?」
林檎の言葉を聞いて、輪廻は言った。
「行ってないよ。私は学校は中学校まで」と林檎は言った。
「……どうして高校に進学しながったの?」
「うん。まあ、いろいろあって」
にっこりと笑って、明るい声で林檎は言った。
「そうなんだ」
輪廻は言った。
輪廻はそれから、なんとなく、また大きなテレビの画面に目を向けた。
同じように、林檎も後ろを振り返って、大きなテレビの画面を見つめた。
テレビの画面には今も月に向かう宇宙ロケットの映像が映し出されている。
それから、二人は少しだけ無言になった。