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りんごの木  作者: 雨世界
1/31

1 月の重力

 りんごの木


 登場人物


 三枝輪廻さえぐさりんね 林檎を拾った少女

 

 二木林檎にきりんご 家出した少女


 プロローグ


 りんごは、木から落ちる。


 本編


 月の重力


 ……あなたはいったい、どこにいるの?


「輪廻って、リインカーネーションの輪廻?」と家出少女の林檎は言った。

「そうだよ」と輪廻は答える。

 それから輪廻は店内にある大きなテレビの画面を見つめる。

 テレビでは今月の末に月に向かう大型の宇宙ロケットのニュースのお話が、その真っ白な宇宙ロケットの映像とともに流れていた。

「なんだか、変わった名前だね」

 バナナの乗ったチョコレートパフェを食べながら、林檎は言う。

「うん。まあね」輪廻は言う。

 輪廻は、自分の名前が少し変わった名前であるということを、これまでの人生においての経験によって、輪廻自身もちゃんと自覚していた。

「林檎だって、どちらかというと変わった名前じゃない?」

「そうかな?」

 小さなスプーンを口にくわえながら林檎は言う。

 それから林檎は、輪廻を視線を追って、あまり興味もなさそうな視線で、同じようにテレビを見た。

「宇宙に行くんだ」

 林檎は言う。

「うん。そうらしいね」

 と、輪廻は言う。

「なんで宇宙になんて行こうとするんだろうね?」

「さあ。なんでだろう? 私にはわかんない」

 そう言って、輪廻は視線を林檎に戻した。

 林檎も同じように輪廻を見る。

「あのさ、輪廻」

「なに?」

 テーブルの上に肘をついて、頬づえをついたまま、輪廻は言う。

「デザート、お代わりしても、いい?」

 にやっと笑って林檎は言う。

「いいよ」

 同じように、にっこりと笑って輪廻は言う。

「あの、すみませーん」

 ちょうど近くに女性の店員さんがいたので、林檎はボタンを押さずに、そう声を出して店員さをテーブルまで呼んだ。

 それから林檎はチョコレートケーキを追加で注文する。

 林檎と女性の店員さんがそんなやり取りをしている間、輪廻はずっと窓の外にある夜の街の風景に目を向け続けていた。

 そこには輪廻の見慣れた、あの真っ暗な闇だけがあった。

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