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私の恋愛執筆中!  作者: 湊 凛
7/9

変わる日常 4

私生活のバタバタにより更新が遅くなっています。

書き溜めなど全くないので申し訳ございません。

稚拙な文章を読んで頂いている方には重ねて感謝しております。

もっとイチャラブな展開にしたいと思っていますので今後も宜しくお願い致します。

 一条さんの返事はさっき迄とは違っていた。

 強面のお兄さんに声をかけられたサラリーマンの様な返事だった。

「新聞部作成の新聞は、必ず部長である私の承認が無いと発行してはいけないんですよ。知ってますよね?」

 一条さんの方向は一切見る事なく、手に持った新聞を見ながら朝霧先輩は話を続ける。

 決して怒っている語気では無い。しかしその声と雰囲気からは殺意にも似た怒りが感じられて、私はゴクリと喉を鳴らした。

 しかしそれは当然のことだと思う。誰かを傷つける記事なんて載せるべきじゃないのだから。朝霧さんが事前に見ていれば止めていたのだろう。

「知っています……しかしながら部長は常々、情報は鮮度が大事だと仰っていましたので私は……」

「違うだろ!」

 びくっ! 小柄な朝霧先輩が一条さんに向き直りながら大声で怒鳴る。

 一条さんは私と同じように背筋をビシッと伸ばし直す。

「鮮度は大事だよ、新聞は鮮魚と同じさ。新鮮であればある程に読んでくれる読者は喜ぶさ」

「はい」

 姿勢を保ったまま真剣に聞いている一条さんに、それ以上に朝霧さんは真剣にぶつかっていた。

 自然と演劇部部長(うちの部長)と内藤先輩も聞き入っている。

「でもそれは秩序を守った上での話。ルールもなく情報を届けるのは週刊誌の様な下衆のすることさ。いや、週刊誌だって最低限のルールは守っている。一条の夢はジャーナリストだろ、だったら品位は尚更高くしないといけない」

 俯く一条さんは少し気の毒な程だ。

 私は部長に脚本を駄目出しされた時、自分を否定されたようで悲しくて悔しかった時を思い出した。

 あの時は『沙耶はそれでも才能があるから頑張れ』って励ましてもらって嬉しかったのを覚えている。

「……はい、すいませんでした」

 うなだれて頷く一条さんは肩を落とす。

 気の毒だがこれで内藤先輩が暴れずに済んで……いや、ドアを蹴飛ばしているから暴れいるんだけど。ま、まぁ被害が最小限で良かった。この分ならホームルームにも間に合いそうだ。

「この記事に文句があって皆さんは来ていただいた、そうでしたよね?」

 私達を見ながら朝霧さんが確認する。

 最初のおどおどしていた朝霧さんとは人が違うかの様に堂々としている。二重人格と言うものなんだろうか。

 うちの部長が沈んだ場を明るくしようとしたのか呑気な声で、

「ま、部長の許可も無く掲載していたとういことだから、私達が来なくても撤去されてたみたいだけど。ドア壊した人は修理しないとな、彩ちゃん」

「わ、分かっているわ。少しカッとなっただけよ」

 うちの部長も内藤先輩も、朝霧さんの叱りつける姿を見て全て終わったとほっとしていた。

「無許可で掲示した事は事実ですが、この記事は掲示し直そうと思います」

「えっ!」

 朝霧さん以外の四人が一斉に声を上げる。なにかの聞き間違えだろうか、聞き直そうとする前に朝霧さんが続きを話す。

「記事の内容は事実しか書いていない。恋人に見えたのはあくまで記者の意見として書かれていますし、問題無いと思います」

「部長ぅ」

 一条さんは女神様と出会ったみたいな顔で朝霧さんをみつめているけど、対象的に、

「ちょっと! 何言ってるの!」

 内藤先輩はまたスイッチが入ってしまう。朝霧さんに詰め寄ると、

「事実かどうか以前に、こういう記事が校内に張り出されるってことになった時の当事者の気持ちを考えた事があるの?」

 ズキッと胸がまた痛む。

 内藤先輩の表情や言葉からは本当にこの新聞を掲載したくないという思いが伝わってくる。

「当事者の気持ち? 自業自得でしょう。恥ずかしいならはじめからしなければいいじゃないですか。公共の場で手を繋ぐなんて見て欲しいのかと思いますよ、普通は。」

 朝霧さんは内藤先輩を煽るかのように切って捨てる。

 カッと内藤先輩の顔色が変わるのをみて体が先に動いた。

「ま、待ってください」

 咄嗟に声を出して二人の間に割って入った。朝霧先輩が部室のドアのようになったら大事になってしまう。

 朝霧さんにしっかり伝えないと。

「内藤先輩は私が脚本を書く手伝いで、私なんかに恋人の様に接して下さっているだけなんです」

 内藤先輩を見ると私が割って入った事に、少し驚いている様な表情に見えた。

 もう一度朝霧さんに向かい、

「掲載されるのは構いませんが、その部分もしっかり書いて頂けないでしょうか。内藤先輩に迷惑をかけたくないんです。どうかお願いします!」

 目一杯、朝霧さんに頭を下げて、頼みこんだ。

 内藤先輩にだけは私の事で迷惑をかけたくない。それが今の私の本心だった。

「渚さん……」

 内藤先輩の声が聞こえる。頭を下げているから表情は分からないが、驚いている様な感じがする声だった。

 朝霧さんはなんと言うのだろうか。一瞬の空白の後、朝霧さんの声が聞こえる前に、私は後ろからぎゅっと抱きしめられた。

 突然の出来事に驚いて頭を上げると、内藤先輩が私を後ろから抱きしめていた。

「え? な、内藤先輩?」

 声が裏返ってしまうほどに私はパニックになっていた。

 朝霧さんも一条さんも何事かと目を丸くしている。うちの部長は、なんだか嬉しそうな顔をしている。

「渚さん、私は迷惑なんて思ってないのよ」

「え?」

 なんで? だって怒り心頭に部室のドアを蹴り飛ばしていたじゃないですか。

読んで頂いてありがとうございました。

もっと二人の幸せな姿が書けるように頑張りますので宜しくお願い致します。

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