二章 変わる日常2
更新が遅れて申し訳ございません。
私生活で少しバタバタしました。
見て頂いている方、いつも本当に有り難いです。
新聞部に入って行く先輩を目で追いかけながらも、私の心を雨雲が覆っていくのが分かった。
先輩は新聞が掲示された事が気に入らない、さっきの回し蹴りを見れば火を見るより明らかだった。
想定外では無かった、ただ思いの外ショックを受けた。
『いいのよ、本当に貴女と恋人同士だったら素敵でしょう』
そんな自分に都合の良い展開を心の何処かで期待していた。
新聞の内容が校内に広まるのを嫌う、それはつまり私が恋人と言う情報が迷惑だと言う事に他ならない。
胸がぎゅっと締め付けられる。
瞼を閉じて肺に空気を一杯に吸い込んで吐き出した。
ーー沙耶、しっかり。当然の反応でしょ。先輩とはまだ昨日仲良くなったばかりなんだからーー
「沙耶、私達も行くよ」
部長の声に我に返る。
右手で胸を押さえながら、部長に続いて新聞部の部室へ重い足を踏み入れた。
新聞部の部室はまるでテレビで見たプロレス会場の様だった。
真ん中が大きく凹んだドア、元々そこにあったと思われる折りたたみテーブルは衝撃でひっくり返っている。
部室は結構広く八畳位はあるだろうか、壁には校内新聞がところ狭しと貼り付けられている。
室内に居たのは新聞部部員と思われる生徒二名、長身の生徒と小柄な生徒で対象的な二人だった。
新聞部部室の中央では髪をポニーテールに結んだ背の高い女生徒が先輩と対峙した。
もう一人の生徒は部屋の隅であたふたしている。
身長は私と同じ位だろうか。ツーテールで結んだ髪が一層幼い印象を与えている。中学生、いや、一歩間違えれば小学生と間違われてもおかしくない。
口火を切ったのは長身の女生徒の方だった。
「ちょっと! なんてことするのよ!」
はっきりとした大きな声を上げ、鋭く侵入者を睨みつける。
室内にドアを蹴り飛ばして入ってきた先輩に怯む様子がまるで無い。
相当に気が強い人なんだろう。私なら早々に怖気づいているだろう。
同じ学年で見たことはないはず、となると三年生なのだろうか。
「それはこっちの台詞よ、一条さん」
先程の回し蹴りが脳裏に焼き付いているからか、落ち着いた話し方が噴火寸前の火山を連想させる。
内藤先輩は一条さんと呼ぶこの女性をご存知らしい。
「こんな記事を掲示するなんて。私が黙っていると思っていたのかしら」
「想定内に決まっているわ。ドアを蹴破って来るとは思いませんでしたが。これも記事にして掲示しますから」
肌がピリピリする。一触即発、といった空気が周囲に張り詰める。
黙って聞いててと頼まれた以上、口出ししないでおこうと思っていたが、このままでは先輩が武力行使しないとも限らない。
「……この案を出した部長が丸く収めるべきじゃないですかね……」
珍しく静かにしている部長に助けを求める。部長にとっては人を丸め込むのは呼吸をするようなものだからだ。
「止められ無くはないけど……まぁ見てよう。内藤彩は容姿だけで人気がある訳じゃないからね」
何故か部長は余裕の表情だ。蹴りで相手が吹き飛んだら停学は免れないと言うのに。
「あの、あの、お二人共ちょっと待って下さい」
おどおどしていたツーテールの女の子が二人の間に割って入る。
私にとっては渡りに船だ。年下に頼るのは本意ではないが、ここは上手く場を納めてもらいたい。
「えっと……その、内藤さん。一体何事ですか?部室のドアを蹴破って入ってくるなんて少しだけ異常……じゃないですか」
今にも消え入りそうな声で先輩に話しかける。
なんだろう、女生徒が小柄だからかイジメている様で罪悪感を感じてしまう。
今回は短いですが次回更新は早くできると思います。
次回もよろしくお願い致します。