二章 変わる日常
更新遅くなり申し訳ございません。
以前に投稿した分を修正加筆致しました。
依然として下手な文章ですが、読んで頂けたら有り難いです。
ベッドボードのスマホから目覚ましが鳴っている。
ちなみに流れるメロディーは某総合ディスカウントストアの店内で流れている歌だ。友人に言わせると変わっているらしい。個性的と言ってほしいものだ。
朝は弱いほうだが、今朝は違う。くまさん柄のタオルケットを跳ね除け起き上がると、スヌーズが鳴るより早くスマホの目覚ましをオフへと切り替えた。
そのまま先輩から昨日受け取ったメッセージを開く。駄目だ、ニヤける顔を抑えられない。
もう一度ベッドに飛び込んで両足をバタバタさせる。
「内藤先輩〜〜」
朝から最高の気分だった。
このまま浮かれていては人間駄目になりそうだ。両手で頬をパンッと叩いて気を引き締める。
水色の遮光カーテンを両手で全開にする。
ナチュラル色のフローリング以外は白色で統一されいる部屋は、朝日を一斉に反射し室内は光で溢れかえった。
せっかく開けたが、遮光カーテンを半分だけ閉め暑さに備える。
今日も灼熱だな、これは。雨よりはいいのかな、うん、そういうことにしておこう。
ささっと制服に着替えて髪を梳かす。今日は簡単にお団子ヘアにしておこう。
ポニーテールからくるくる巻いてゴムで止めるだけっと。コツを掴んでからは簡単に出来て、可愛いからお気に入りだ。
クローゼットの横にある姿見で最終確認。鏡にはセーラー服を着た女の子が写っている。身長百四十三センチの少女に近づき対峙した。
大きく深呼吸して心で語りかける。
沙耶、少し浮かれすぎ。先輩は脚本の為に恋人を演じているだけだから。
胸が痛む。なんて顔をするの沙耶……。だがこれが事実なのだ。今が幸せであればあるほど、終わりの時は傷つくだろう。
もう一度深く深呼吸して頬を叩いた。パチンッと音が響き頬に痛みが走る。先程よりも数倍痛い。
けれど可能性は零じゃない。女の子同士も珍しくない、って言くれたし。部長の作ってくれたこのチャンス、もっと先輩と仲良くなってみせる!
頬を腫らした少女はさっきよりも笑顔が良く似合っている気がした。
学校について不思議な違和感に気付くまでに、さほど時間はかからなかった。
すれ違う生徒と頻繁に目が合うのだ。つまり私を見ている、ということだろう。
おかしい、朝セットしたお団子が取れかかって大変な事になっている……とういことはなさそうだ。右手で触ったお団子は、丸い形を保っている。
うーん、自意識過剰だったかな。二階に上がり二年C組のドアを開け、教室へ足を踏み入れた。
「おは……よ、う」
何?これ。クラスに居た十数名の生徒全員が私を見る。
一瞬の沈黙の後、
「渚さん!詳しく聞かせて!」
「私結構ショックなのよ」
「沙耶〜、何であんたなのよ!」
ま、待って。何で餌を見つけたピラニアみたいに、私に群がるの?状況が全く分からない。寄ってきた一人一人は喜怒哀楽がバラバラ。制服を引っ張ったり両手を掴んだりとにかくひどい惨状だ。
「ちょっと!誰かどうなってるのか説明して!」
至極真っ当な質問だと思う。だって全く分からないんだから。
すると私の目の前に黒色のタブレット端末をずいっと突きつけられた。画面には新聞の様な物が一面に表示されている。
「これ、さっき掲示板を写メってきたから見て!」
タブレットの持ち主である佐伯さんはとても楽しそうだ。
画像が小さかったので親指と人差し指でピンチアウトする。新聞部の校内新聞だった。
えーっと、見出しは『内藤 彩の恋人は二年生』
嫌な汗が背中を伝うも視線は記事を泳ぐ。記事の中央には笑顔で手を繋ぐ内藤先輩と私の写真が添えられていた。
「何……これ」
「いや、それをみんなが聞いてるんだけど」
記事の内容は私と先輩が恋人同士というような内容だった。当然、舞台のことには一切触れられていなかった。
本当に恋人同士ならまだ許せるが、事情も知らずに週刊誌やスポーツ紙の様な書き方をするなんて。舞台の為に協力してくれているだけなのに、こんな晒者になって……先輩!
周りの生徒を振り切って廊下に飛び出す。
「ちょっと、沙耶! どこ行くの!」
背中に佐伯さんの声がかかるがそのまま振り切る。とにかく新聞部へ行って説明しないと。一刻も早く掲載を辞めてもらわないと先輩に迷惑がかかってしまう。
全速力で部室棟に向かう。部室棟は校舎の裏側だ、階段を駆け下りて渡り廊下を越える。途中で教師ともすれ違うが気にしている場合では無い。呼び出し上等で走り去る。
新聞部まであと少しの所で視界に入ってきたのは、内藤先輩と部長の姿だった。内藤先輩は右手に用紙のような物を持っていた。急いで呼吸を整え声をかける。
「内藤先輩! と、部長。」
「あら、おはよう。渚さん」
「何で私はおまけみたいな言い草なんだ?」
ん?内藤先輩は思ったより落ち着いてる。部長はいつもどおりだ。
「あ、おはようございます。ここに居るってことは見られたんですよね?」
「ああ、これのことね」
内藤先輩が右手に持っていたのは例の新聞だった。無理矢理剥がしたのだろうか、新聞の端は破れている。
「カチンときてその場で剥がしてきたの」
破れた新聞をひらひらとさせながら『可笑しいでしょう』って感じにくすりと笑う。
「彩は怒ると手がつけられないから、慌てて私も付いてきたわけ」
先輩は静かに燃えるタイプなのか。何でも軽くいなす部長が慌てるなんて。先輩は否定も肯定もしなかった。
「渚さんも文句を言いに来たの?」
こんな状況でも先輩は少し笑っている。
「ええ、まあ。あんな週刊誌みたいに書かれるのは、不本意ですからね」
先輩の二重の瞳は綺麗だけれど、今日は鋭さが増しているように見えた。
「そうね、でも渚さんは少し喋らず見ていて。私が話をつけるから」
そう言って新聞部のドアを何回かノックする。
「……いいか沙耶、なにか起こる前に二人で必ず彩を止めるんだぞ。ああなったら後先顧みないからな」
部長は小声でそう呟く。私は無言でこくりと頷く。
「居留守……かしらね」
ドアノブを回す先輩だが、鍵がかかっているようだった。
「彩が文句を言いに来ることは想定してただろうしね」
「新聞は先輩が剥がしてくれたので、また出直しますか」
鍵をかけられたらどうしようもない。取りあえず教室へ戻ろう。
「居留守なんて無駄なのに」
え? 先輩、それってどういう意味ですか?
そう私が聞くより早く、内藤先輩の右足が空を切り裂いた。
回転の遠心力を存分に乗せた中段右後ろ回し蹴りは、新聞部のドアを直撃するとドアは室内に向かって吹っ飛んだ。
私と部長はあまりの出来事に、口を開けたまま呆然としてしまう。
先輩は流れた髪を右手でさっと整えスカートの裾を整える。その仕草からは優雅ささえ感じられた。
ドアが壊れる音に混じって女性の悲鳴が室内から聴こえる。多分新聞部員だろう。突然ドアが吹き飛んだのだ、気の毒にすら思えてしまう。
「やっぱり……居留守だったみたいね、さあ、行きましょ」
先輩の楽しそうな声で我に返る。内藤先輩は何事も無かったかのように新聞部に入っていった。
「……部長、私じゃ止めれないかもしれません……」
「……リーサルウェポンかよ、全く……」
部長と顔を見合わせたあと、急いで内藤先輩の後を追いかけた。
読んで頂きありがとうございました。
高校時代に脚本を書いたことがある自分としては当時の事を少し思い出しながら書けました。
あの頃から文章下手だったんですよね。
また続きを読んで頂ければ嬉しいです。
ありがとうございました。