ディベート空振り
僕はこの交換日記というゲームに、すっかりのめり込んでいた。
バイト先でも、一日中考えてしまう位に……。
「雄介? 雄介?」
「は、はい? 店長!」
「最近少し、変だぞ?」
「あ、ごめんなさい、ちょっとゲームの事で、夢中に……」
「ダメだぞ? バイト中はバイトに集中してくれなきゃ」
「はい……」
店長に怒られてしまった……。
でも、それくらい、僕はのめり込んでしまっていた。
事実……バイトも終わり、すぐに宿題の山を少し消化して、日記を気にしてしまう自分がいた。
今日も交換日記がほのかに光り、返信が来たことを示す。
僕はすかさず交換日記を手に取り、新しく書かれたページに目をやる。
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ディベートって武器、良いなぁ…。
こんにちわ~☆
あ、武器だったんですね。
それも強そうなんだけど、両親倒さないって本当?
ユウスケなら、倒しちゃいそうでちょっと心配……。
でも、私もその武器使ってみたいかも?
村の人はお仕事だったのね……。今度、「お疲れ様」って言っとくね。
そうそう、一つ問題発生!! プチデビル狩りしてるんだけど、返り血が酷くて困ってるの( ;∀;)
なんかいい方法ないかしら…。
魔法だと楽なんだけどね。
なんか武器変えようかな…。
もう少しナイフのままで、いたい気分なんだけど……。
次はレベル14で魔法を覚えるそうです。
ちょっと期待してます♪
またね~☆
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そこにはいつもと変わらず、可愛らしい女の子の文字があった。……本当に勇者で戦っているのか、疑いたくなるような文字。
……なんか、こちらの言葉を出すと、ことごとく武器か魔法にされるなぁ。
あまり、こっちの言葉を出さない方がいいのだろうか?
僕は、次に書くことを頭に思い浮かべながら、眠りについた。
・・・・・・
今日はオフの日。たまっていた宿題を片付ける。
もうすぐ夏休みも終わりだから、そろそろラストスパートをかけなくてはならない。残りは4分の1ぐらいだろうか。次の休みで終わらせたい。
「ただいま」
父さんが帰ってきた。
そういえば、エアコンの事……切り出さないと。交換日記でも、そう約束しているんだし…。僕のディベートの力で!!
僕は臨戦態勢で、父さんに臨む。
「父さん、エアコンの事だけど……」
「あぁ、それなら明日の休みにでも、見てくるよ」
「え?」
「雄介が熱中症って言ってただろ? あれ、よく考えたらそんな気もしてきてな」
「そう……ですか」
「ん? 要らなくなったのか?」
「い、いえ、とんでもないです! ありがとう!」
僕は、ディベートで戦う宣言したのに、あっけない幕切れだった……。
エアコン……嬉しいけど、父さんと討議して、打ち負かせてみたかったなぁ……。交換日記にはどう書こうかな。
そして、僕は日記を綴る。
そういえば、気になったこと。
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今は新しい村で暮らしてるの?
こんにちは。
ディベートは僕の武器だから、あげない!(笑)
両親は……まぁ、ある意味倒すことになるけどね…(汗)
でもでも、経験値やお金は手に入らないから、安心して?
エアコンが手に入るかもってだけだから。
……なんか、聞いていると敵を倒すのも大変なんだね…。
今は新しい村で暮らしてるの?
ナイフを買い込んで、投げナイフにしてみるのはどうかな?
……もしかしたら、お金マイナスになるかもしれないかぁ……。
いいアイデアだせなくてごめん……。
新しい魔法覚えたら、また教えてね。
では、また!
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……エアコンは買うこと確定なんだけどね……。
でも、モンスター倒すのって、結構大変なんだなぁ……返り血とか。
まぁ、僕の思い付きだけど、ナイフが投げれれば、返り血は浴びないだろうと、提案してみる。
なんだか、交換日記越しで、勇者が成長していく姿がみれるって、なんだかおもしろい。
僕は、もっと話を続けてみたいと思った。