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僕達のエンディング

 ……。

 僕はリノンの交換日記を読み終えた。


 「リノン……」


 僕も早く会いたい。

 でも…この呪文を唱えると、

 リノンの日常を奪ってしまう……。


 「いや、リノンはもう覚悟を決めてるんだ!」


 もしかしたら……何も起きないかもしれない……。


 でも……。


 「リノンを信じるって決めたじゃないか!!」


 ……。


 『悩んだ私が、バカだった』


 今の僕は、そのリノンだ……。

 リノンはもう、僕より先に進んでる。


 ……いや僕よりもっとだ……。

 だって……僕がリノンだったら……。

 僕の日常を捨てる覚悟って……。


 「……リノンは強いね……」


 僕は交換日記を床に置く。


 そして、次のページをめくる。


 「……」


 緊張してくる……。

 今度は……逢いたかったリノンに逢えるって……。


 「僕の姿みて、がっかりしないかな……」


 ……あのリノンだ……。

 どんな僕でも、同じに接してくれる……。

 信じるって、決めたばかりじゃないか。


 「リノン……いくよ……」


 声は届いてないと思うけど……。僕はリノンに声をかける。


 『浄化せし者の道に幸あれ』


 僕は、次のページにあった言葉を叫ぶ。


 本はあわく光り、そして強さを増していく。


 光の中に人影が浮かび上がってくる。


 小柄な女の子……。

 ワンピースで基調は白の端がピンクのあしらえ。

 髪の色は栗色。


 光が弱くなるにつれて、彼女は目を開ける。


 「……ユウスケ?」

 「……リノン?」


 しばしの沈黙……。


 「えへへ……夢よりかっこいいや……。」

 「うん、リノンもね……」


 また沈黙。


 リノンの目に涙が溜まる。


 「ユウスケ!!!!」


 リノンは僕に抱きついてくる。


 「ずっと会いたかったの……。とても、とても……。」

 「僕もだよ……。」


 リノンは声を立てて泣き出す。

 僕はそんなリノンの頭をゆっくり撫でる……。


 「いらっしゃい……」


 僕は優しく声をかけて……。

 暫く、抱き合ったままでいた。

 絶対に逢えないと思っていた僕……。僕もリノンように涙をこぼしていた。

 温かい……。ずっと……ずっと、この温もりが欲しかった……。


 ……お互いに……。

 僕達は交換日記を介して、心がつながっていたようだ。

 リノンもこんな泣くほど逢いたがってたなんて……。


 交換日記の内容が頭をよぎる。

 本当に……あの内容を書いていたリノンなのだろうか……。

 勇ましさなど全く感じない……。


 今は普通の女の子。

 こんなか細い体で、あんな無茶してたなんて……。


 僕はもう一度、リノンの頭を撫でる。

 リノンの涙は止まらない。

 僕の涙も……。



 ……そういえば……。

 この状況、どうやって両親に説明しよう……。


 「……ディベートの武器を使うか……。」


 僕はリノンを抱いたまま、つぶやく。


 「?」


 リノンは一旦泣き止むと、潤んだ目で微笑みを返してくれた。




----完----


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