勇者のレベルが10になりました。
バイトも、宿題も終わり、僕はベッドでくつろぐ。
そして、交換日記はほのかに光った。
僕は、そっと交換日記を開き、新しいページに目をやる。
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レベル10になったよ~☆
こんにちわ~☆
ディベート…なんか、強そうな魔法ですね。
そんなの両親に使って大丈夫なんですか?
エアコン……むぎゅう……。
確かに、私は成長しなきゃね。
経験値一杯稼がなくちゃ♪
今日はな~んと、レベル10になりました!!
魔法覚えたよ! ファイアーの魔法を覚えたの!
敵単体なんだけど、結構便利で覚えてから私、使いすぎちゃった……(´Д⊂ヽ
そうそう、村の入り口の人に話しかけると、毎回必ず「ここはマルクスの村じゃ」っていうの。
おじいちゃんボケっちゃった?
マジウケるんだけど~。
じゃあ、またね~☆
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内容はやっぱりカオスだ……。
エアコン武器はあきらめてくれたけど、今度はディベートに食いついてきた。
どうやらレベルが上がり、魔法が使えるようになったらしい。それに次の村にも……。
……おじいちゃんはきっと、モブキャラなんだろうなぁ……と、思いつつ、僕は微笑みながら、じっくりと読んだ。
読んでいるうちに眠気が襲い、僕はそのまま寝てしまった。
・・・・・・
次の日もバイト。
昨日の交換日記の内容を思い浮かべながら……。
「雄介、顔がたるんでるぞ!」
「は、はい! ごめんなさい」
店長に怒られる僕。
「……さては、彼女でもできたか?」
「ち、違います!!」
彼女……では、無いだろうなぁ……単純に放置ゲーにハマってる感じ。
僕はバイトと宿題を終わらせて、交換日記を開く。今度は、僕が書く番だ。
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ファイアーの魔法羨ましい~。
こんにちは。
ディベートは僕の武器なんです!
でも、これで両親を倒したりしないから、安心してね(笑)
リノンの成長は僕も期待してるから、頑張ってほしいなって思う。
けど、無理したりしないでね。
レベル10、おめでとう!!
ファイアーの魔法、羨ましいです。
いっそ、僕の魔法と交換しましょうか(笑)
魔法使い過ぎて、いざという時に使えなくなると、困るから大切につかってね。
村の入り口の人はボケてるんじゃなくて、そういうお仕事なんじゃないかな?
僕は結構大変な仕事だと思うよ?
じゃあ、また!
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交換日記の向こう側では、彼女はどのようなことを、しているんだろう?
本当、某RPGをやって、それにハマって書いてるだけかもしれない。
いや……もしかすると、ゲームで遊んでいるのは、僕の方かもしれない。RPGの女の子と、交換日記を交わす……これはそんなゲームなのかも。
僕は、次の交換日記が来るのを期待して、ベッドで横になった。
でも……彼女が言っていることが、本当ならば……一応この交換日記の仕組みも、わかる気がする。
けど、そんな非現実的な事、僕がいくらゲーマーだったとしても、信じられることではない。
「きっと、これは何かのゲームだ」
そう、自分に言い聞かして、僕は眠りについた。




