春の訪れ
学校……。
クラスメイト達は、もうすぐ来る春休みに胸を躍らせている。
季節は三月の半ば。
今頃、リノンの世界ではリノンが魔王を追いかけてるころだろうか?
それとも、もう追い詰めているのかも……。
「ふふふ……」
ちょっと、おかしく感じた。
これが僕の現実。
そして、魔王を追い詰めているリノンも、リノンにとっての現実。
仮に、僕とリノンが逆の立場だったら、どうなっていただろう?
「……まね出来ないな……」
やっぱり、笑いがこみ上げる。
「新田~。何がおかしいんだ?」
「すみません……」
僕は先生に注意される。そしてクラスメイト達はクスクスと笑う。
これが僕の日常。
……先生に注意されることなんて、ほとんどないけど……。いや、リノンと交換日記を始めてからは何回か注意されたかもしれない。
リノンの日常って、どんな感じなんだろう……。
レベル上げにいそしんでたあの頃や……って、最近もかぁ……。
僕は春の陽気に照らされながら、ぼっ~と、考えてします。
「頑張って、リノン……」
僕は小さく、そうつぶやいた。
・・・・・・
そして、今。
交換日記を開いて読んでいた。
リノンからの返事も、交換日記の光も……正常に届く。
魔王を倒していないので、当たり前と言えば、当たり前かもしれない。
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字、震えてたしなぁ~。
大好きなユウスケへ☆
ボコボコって失礼な……(--〆)
あっちがちょっかい出してきて、説得に応じなかったのがいけないのよ!
不可抗力です!
正当防衛なんです!
んっと……責任とってくれるなら、安心して魔王を追い詰めるわ~☆
武者修行ね……それは無いかも?
だって「旅に出ます」って字、震えてたもん。
……まぁ……飛空艇で追い回したら、そのうち魔王城に戻るかもね~☆
じゃあ、またね~☆
P.S.
魔王、北の山から南下。
情報をもとに捜索中。
可能であれば、魔王城へ追い込むことも検討。
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「……正当防衛」
リノンの世界との意外な共通点。
でもしかし、魔王は本気で怯えて逃げたっぽいな……。
倒さないと、リノンの世界に平和は訪れないし。
「……」
なんだか僕がリノンの事を信じ始めた頃の事を思い出す。
変なやり取りで……内容はカオスで……。それでいて、どことなく楽しい……。
そんな交換日記だった。
そして今も、そんなノリ。
魔王を追い詰めて倒すまでは……。
・・・・・・
リノンだって切ない気持ちを抱きながら、魔王を追い詰めているはず。
僕は前に書いていた雰囲気を思い出して、返事を綴る。
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魔王追い込み作戦??
大好きなリノンへ。
……はい、わかりました……。
もうそこはツッコミません……。
てか、リノンの世界に「正当防衛」なんて言葉あるの??
こっちだけだと思ってたんだけど……。
……魔王、すっかり怯えさせちゃったんだね……。
なんかさ…僕が見てると、どっちが悪者かわからなくなってきたよ……。
……いや、ちょっとした冗談だから、まに受けないで……。
とりあえず、派手に追いかけてたら、魔王城に戻る可能性も高いね。
意外と…リノンの飛空艇作戦って、理にかなってるのかも?
じゃあ、またね。
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きっと……魔王を倒したら、この交換日記は終わる。
残りどれくらいリノンと交換できるだろうか?
知ってか知らずか交換日記はあわく光り、リノンの元に届いたことを記す。




