チェイサー
多少疲れを感じながら。
僕はリノンの返事を待っていた。
……僕の涙……返してほしいって……そう思いながら。
ベッドで横になっていると、交換日記は光りだす。
僕は疲れた体を持ち上げて、机に座りページをめくる。
－－－－－－
私だって肩透かし食らったんだからね！！
大好きなユウスケへ☆
……実際のところ、私の方大変だったんだから……(－－〆)
魔王城に勢いよく飛び込んで、誰もいない玉座だったんだよ？？
ありえなくない？(－－〆)
そしてさ、手紙置いてあるからって、
見てみたら、「旅に出ます」だよ？
……もう、なんなのさ！！
私だってね、切ない気持ちとか、一杯抱えながら行ったのよ？
もうさ、頭来たから、飛空艇買い取って、今追いかけてるところなんだからね！
うん、責任はとってもらうから、覚悟しててね。
じゃあ、待っててね☆
ユウスケ☆
P.S.
北の山で魔王の目撃情報あり。
今、現地に到着。
－－－－－－
「リノン……」
切ない気持ち……リノンにも……。
きっと、僕みたいな気持ちで、魔王に挑もうとしたのだろう。
「強いなぁ……」
僕ならそんなことできない。
きっと……怖くて……交換日記が消えるのを恐れて……。
でも、こうして交換日記を続けられる。
安心半分、本当の最後がどうなるかの不安半分。
「P.S.……」
懐かしい……。リノンに告白した後に使われた言葉。
多分、魔王を追い詰めるまでこんな感じになるんだろう。
そう……魔王を倒すまでは……。
・・・・・・
今日は僕が筆を執る。
多分、こうして交換日記が出来るのも、残り僅かだろう。
きっとリノンはもう少しで……。
僕の気持ちが伝染しないように、いつもの調子で。
－－－－－－
魔王をあまり怯えさせないように……。
大好きなリノンへ。
……うん……お疲れ様……。
だってさ……一度ボコボコにしてたじゃない……。
あれで、怯えて逃げたんじゃ……。
……いい方向に考えよう……。
きっと、北の山だから武者修行に行ったんだよ。
そして、リノンへリベンジ考えてるんじゃない？
もしかしたら、強くなってるかもよ？
最終的には、魔王城で待ってるかもね？
……責任……とるから安心して……。
じゃあ、またね。
追伸
魔王をあまり怯えさせないように……。
また逃げられたら、大変だから……。
－－－－－－
「……責任って……」
まぁ、僕も同じ気持ちはあるけどね。
僕の気持ちはもう止まることを知らないから。
魔王が怯えて雲隠れしないことだけ祈りつつ……もう残りが少なくなるだろう交換日記を閉じた。
この優しい光りを見るのは、あと何回だろう……。
