僕に残されたもの
翌日。
僕は寝起きでぼーっとしていた。
机の上を見るのが怖い。
「交換日記……」
僕は天井を見上げながらつぶやく。
きっと……リノンの世界へ……。
そう思いながら、僕はゆっくりと起き上がり、学校の準備をする。
出来るだけ……出来るだけ机の上を見ないように……。
・・・・・・
通学路。
いつものように大樹と合流する。
「雄介! おはよう!」
「……おはよう」
僕は元気なく返事をする。
「雄介……お前、目が赤いぞ?」
「あ……うん。寝不足かもね」
「いや、違うだろ!?」
大樹が僕の目の前に出る。
「雄介……悩みがあるなら、俺に言えよ?」
心配そうに……かつ優しく大樹は僕に話しかける。
「うん……大丈夫」
「いや、その様子だと大丈夫じゃないだろ?」
心配の色を込めて、大樹は僕に言う。
「一人で悩むなよ? 俺たち幼馴染……親友だろ? 今は話せなくても、待っててやるからさ? だから、雄介も……」
……そう、僕にはまだ時間が必要かもしれない。
今の状況を受け入れる……そんな時間が……。
「もう少し……時間が欲しい……」
「わかったよ。時間が解決するかもだけど、無理するなよ? いつでも聞いてやるからさ」
「ありがとう……」
ほんの少し……ほんの少しだけ、救われた気がする。
そうして、僕は学校で一日を過ごした。
・・・・・・
家に帰り部屋に入る。
僕はまだ、正直机の上を見るのが怖かった。
もしかして……本当に消えてしまったのではないだろうかと……。
悩んでも仕方ない。僕は意を決して、机の上を見る。
机の上には……。
「……」
……。
……。
……。
まだ……残ってる。
と、すると……交換日記は普通のノートに変わったのだろうか?
僕はゆっくりと、交換日記を手にする。
「……」
今までの事……全部残ってる……。
最後のページ……それは僕の返事だった。
僕は最初のページから、読み砕いて交換日記を見入る。
ページが進むにつれ、僕の目には涙がたまっていく。
「リノン……」
本当に……本当に昨日のが最後なのだろうか?
書かれている最後の2ページを読む。
「……リノン」
僕の目から涙がこぼれる。
頬を伝い、そして床に……。
涙が止まらない。
視界が不明瞭。
また最初から。
最初は全く信じていなかった僕。
本当は……もっと大切な時間であったはずなのに……。もう一度、時間を巻き戻したい。
「リ……ノ……ン……」
僕は最後の……空白の……本当は……リノンの返事が来るはずの……。
「……」
もう、声も出ない。
僕は交換日記を抱きかかえながら、泣き崩れた。




