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最後の交換日記

 僕は……僕は……。


 「……」


 何も考えることが出来ない……。


 「もう……」


 いや! まだ!


 考えると、僕はそんなことを考えてしまう。

 そして……切なくも、交換日記は光りだす。


 僕は……。


 「……」


 中身を見るのが怖かった。

 なんか……もう予感はできている。


 僕は……。

 僕は……。


 勇気を振り絞って……新しいページを見る。


 「……」



 ------

 これで最後になるかも…。


 大好きなユウスケへ☆

 ……うん、レベル99だよ……。


 今日はちょっと無理しちゃったから、明日、魔王の城に行くね。


 ユウスケ……祈っててね?

 私……頑張るから。


 もし、交換日記が消えても、私忘れないからね?

 ……でも、どちらかというと、約束守ってほしいな……。

 ……ユウスケが約束守れるかは、私次第だけど……。

 精いっぱい頑張るから……ね?


 もしかしたら、この日記が最後になるかもしれない……。

 その時は……笑顔でリノンが平和を取り戻したって、思ってね~☆


 ……大好きだよ……ユウスケ……。

 こんな私と、交換日記してくれて……。

 それにね……。

 ちょっと無理やりだったけど、告白させちゃったし……。

 ……ありがとう…。

 ------



 「……」


 読んで、涙が止まらない……。

 どうして?

 ねぇ、どうして?

 僕はこんなにも、リノンの事を……。


 「でも……」


 これは、リノンが覚悟を決めた返事だ。

 もうなくなるかもしれない……。

 でも……。


 僕は泣き崩れた。


 ・・・・・・


 朝起きて、机の上に目を落とす。

 もう、交換日記は……。


 「ある!?」


 予想外だった。

 まだ残っている。


 「もしかして……」


 まだ魔王を倒していないのか……。

 いや、それは無い。リノンはレベル99だから……。

 負けることは絶対に無いだろう。

 襲い掛かってきた魔王を追い払っているのだから……。


 幸い、今日は休み。

 僕は交換日記を手にする。

 今まで書かれたページも……昨日来たリノンの返事も……。


 「もしかしたら……」


 僕からの最後の挨拶……それで最後なのかもしれない。

 まだ魔王を倒す手前なのかもしれない。


 「僕にも……」


 この機会を逃したら、もう終わりかもしれない。

 僕は筆を執る。



 ------

 ……まだ日記残ってるよ……。


 大好きなリノンへ。

 交換日記……消えてないよ……?

 でも、この交換日記を読んでもらえるか……。

 そして、リノンのもとに届くかわからないけど……。


 それでも僕はこの交換日記に書くね。

 たとえ……返事がなかったとしても……。


 ……消えたら、別の交換日記買って、書き続けるよ……。

 ……届かないってわかってるけど……。

 僕は……忘れたくないから……。

 ……うん……届かないってわかってるけど……。


 ねぇ……リノン……。

 見れたら、返事書いて……。


 本当に、本当に、大好きだから……。

 リノンの顔…見たかったけど……。

 ……僕は、リノンに告白してよかったと思ってるよ?

 だから……。


 大好きだよ……リノン……。

 ------



 「……」


 これがリノンに伝わる最後の交換日記だろうか。

 いや、もう届かないかもしれない。


 「絶対に……」


 そう……絶対に。

 リノンの事は忘れない。

 たとえ……この交換日記が……返事が届かなくなったとしても……。僕はリノンのために書き続ける。


 僕は……最後の願いを託し、交換日記を閉じる。


 「たのむ!」


 願うような気持ちで……半ばあきらめた気持ちで……。

 僕はいつものように交換日記を閉じた。

 きっと……もう……。


 「!?」


 僕の予感は裏切られた。

 交換日記はあわく光り、リノンに返事が届いたことを知らせる。


 「……」


 一体……どうなっているんだろう?

 もしかして……僕の願いが届いた?


 でも、交換日記はいつ消えるか……明日には消えてしまうのか……。僕は不安だった。


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